人気ブログランキング | 話題のタグを見る

とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
by lawinfo
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
その他のジャンル
最新の記事
画像一覧

【児童相談所の責任】横浜地裁平成24年10月30日第6民事部判決

【児童相談所の責任を認めた横浜地裁判決】

・横浜地裁平成24年10月30日第6民事部判決(森義之部総括判事)
(事件番号:平成21年(ワ)第2425号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82735&hanreiKbn=04


【事案の概要】
①栄養・医療ネグレクトがあるなどと通告された両親が,横浜市北部児童相談所がした子供の一時保護決定及び再一時保護決定等が違法であるとして,被告独立行政法人国立成育医療研究センターに対しては債務不履行又は不法行為に基づき,被告横浜市に対しては国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,それぞれ,損害賠償と遅延損害金を請求し,
②横浜市中央児童相談所(現:西部児童相談所)の職員が誤ってアレルギー源の卵を含む竹輪を上記両親の子供に食べさせたため,アナフィラキシーショックにより子供が死亡したとして,両親が被告横浜市に対し,国賠法1条1項に基づく損害賠償と遅延損害金を請求した事案


【争点】
1 本件通告の違法性等
2 本件一時保護決定,本件再一時保護決定等の違法性
3 中央児相の職員の過失及び子供の死因
4 損害の存否及びその金額


【判決】
①は棄却 ②は一部認容


【雑感】
・児童相談所の責任を認める判決はあまりありません。児相に問題があっても,裁判所は行政の責任を認めたがらないので,なんだかんだ理由をつけて責任なしとするのが通例です。特に今回は虐待が疑われる親から子供を救った行政の責任を問うたという意味で,一層行政側を助けたくなる事案であったともいえます。

・ただ,記録を見たわけではないので詳しくはわかりませんが,横浜市が担保を条件とする仮執行免脱宣言を申し立てていることからすれば,少しは責任があるかもという態度で訴訟追行していた可能性があります。

・私が本件が「横浜地裁」の判決と知った瞬間,おそらく森部長の判決だろうなと予想しました。

・この森部長は【武富士役員責任追及訴訟】や過払金返還請求事件で和解契約が問題となった事案で【消費者契約法4条の取り消しを認めた】(おそらく地裁レベルの初めての判決)を書いた元最高裁調査官の裁判官です。この人が部長でなかったら(あるいは横浜地裁の他の部に事件が係属していれば)原告の請求は認められなかっただろうなというほど画期的な判決を連発している裁判官です。

・こういう柔軟な思考を持った人が裁判官の中でも上にあがっていけば,裁判官の事なかれ判決が少なくなると思いますが,裁判官の中で最も出世するエリートは「司法行政」を主に行っている裁判官です(裁判官の経歴の中でほとんどが司法行政という人もいて,ここまで来ると裁判官というよりは行政官といった方が適切かもしれません)。

・これまでは,こういう画期的な判決を書く地裁裁判官がいても,大概は東京高裁が最高裁の方ばかりを見て,地裁判決をつぶしてきました(特に,刑事事件で1審無罪,2審逆転有罪で冤罪事件が多数発生してきたことは記憶に新しいところだと思います:マイナリさんの事件等)。

・最近は司法内部でもいろいろ感覚が変化していることがあり,このような思い切った判決を書く森部長のような裁判官が裁判所の中で今後重要な地位を占めることを一弁護士として期待しています。


※上記の意見・判決などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断で情報の取捨選択をお願いします。

by lawinfo | 2012-11-21 23:52 | 行政訴訟
<< 【否認権】クラヴィス破産管財人... 【成年後見人と親族相盗例】最高... >>