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とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【消費者問題】仙台高裁平成22年4月22日判決

【携帯電話の発熱による低温熱傷に製造物責任法3条の責任を認めた事例】
・仙台高裁平成22年4月22日判決・判例時報2086号42頁
(事件番号:仙台高等裁判所平成19年(ネ)第337号)
URL:http://www.zenso.or.jp/files/jacas134.pdf

【事案の概要】
・ズボンのポケットに携帯電話を入れたまま,こたつで約2時間半過ごしたたXが,左大腿部に低温熱傷を負ったため,これはポケットに収納していた携帯電話の異常発熱によるものであるとして,当該携帯電話の製造業者に対し,製造物責任法3条または民法709条に基づく損害賠償を請求した事例


【第1審判決の概要】
・仙台地裁平成19年7月10日判決・判例時報1981号66頁
(事件番号:仙台地方裁判所平成17年(ワ)第693号)
 本件携帯電話および本件リチウムイオン電池が本件熱傷の原因であるとは認められない以上,本件携帯電話に本件熱傷事故を生じさせる設計上,製造上または警告上の欠陥があったとは認められず,本件携帯電話を製造,出荷したことについてYに過失があったとも認められないとしてXの請求を棄却した。
 これに対し,Xが控訴


【第2審判決の概要】
・携帯電話には設計上または製造上の欠陥があるとして,製造業者に製造物責任法3条の責任を認め,第1審判決を取り消して請求を認容
「Yは本件熱傷が本件携帯電話から発生したとする製品起因性および本件携帯電話の欠陥を否認する。しかし,製造物責任法の趣旨,本件で問題とされる製造物である携帯電話機の特性およびその通常予見される使用形態からすれば,製造物責任を追及するXとしては,欠陥の主張・立証として,本件携帯電話について通常の用法に従って使用していたにもかかわらず、身体・財産に被害を及ぼす異常が発生したことを主張・立証することで足りるというべきであり,それ以上に,具体的欠陥等を特定したうえで,欠陥を生じた原因,欠陥の科学的機序まで主張立証責任を負うものではない。すなわち,本件では,欠陥の個所,欠陥を生じた原因,その科学的メカニズムについてはいまだ解明されないものであっても,本件携帯電話が本件熱傷の発生源であり,本件携帯電話が通常予想される方法により使用されていた間に,本件熱傷が生じたことさえ,Xが立証すれば,携帯電話使用中に使用者に熱傷を負わせるような携帯電話機は,通信手段として通常有すべき安全性を欠いており,明らかに欠陥があるということができる」
 この控訴審判決に対し,Yが上告。


【最高裁】
・最高裁平成23年10月27日決定
 Yの上告棄却


【雑感】
・消費者側代理人の努力された結果の逆転判決。ただ,このような画期的判決の裏にはやはりセンスのすぐれた裁判官の影あり。この事件の控訴審の裁判長が「温度上昇についての実験は出来ないか」との釈明があったことから,実験をし,逆転判決への流れができたとのこと。優れた代理人・裁判官がいてはじめて画期的な判決がでるのだなぁと痛感しました。
・また,消費者事件としては重要な意味のある判決。ぜひ知っておくべき事件だと思います。
・このブログでは,消費者問題の重要判決も極力紹介していきたいです。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。

by lawinfo | 2013-01-29 23:50 | 消費者問題
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