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とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【成年後見】宮崎地裁平成26年10月15日判決

【成年後見と裁判所の責任】
・宮崎地裁平成26年10月15日民事第2部判決・末吉幹和裁判長
(事件番号:宮崎地方裁判所平成25年(ワ)第327号・国家賠償等請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84599


【主文】
「1 被告は,原告に対し,2511万3494円及びうち499万9900円に対する平成21年9月24日から,うち913万7665円に対する平成21年11月9日から,うち599万2440円に対する平成21年12月9日から,うち498万3489円に対する平成22年1月25日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。ただし,被告が2600万円の担保を供するときは,その仮執行を免れることができる。」


【判示事項】
「⑵ 家事審判官の行為の違法性
ア 上記認定事実アのとおり,原告について未成年後見人の選任が申し立てられたのは,原告の実母で単独親権者であったBが突然本件交通事故によって死亡し,原告に多額の保険金が支払われることが予想されたため,原告の後見人を選任して,本件交通事故の示談交渉手続などを進め,今後支払われる保険金を受領することにあったから,原告の未成年後見人は,本件交通事故を原因として原告が取得するであろう多額の保険金を適正に管理することが重要な職務となっていた。そして,このことから,家庭裁判所が未成年後見人に対する監督を行う上で一番重要な点は,原告が受領する保険金の出入を監督する点にあり,家事審判官は,Cが宮崎家庭裁判所都城支部に未成年者後見人選任の申立てをした平成19年2月当初から,このことを認識していたと認められる。
 また,原告の未成年後見人に選任されたCが宮崎家庭裁判所に提出する財産目録や収支状況報告書の記載,その裏付けとなる預貯金通帳の記載には特に注意して確認する必要があったといえる
イ 上記認定事実オのとおり,宮崎家庭裁判所書記官は,平成20年3月25日,G弁護士から,保険金請求の進捗状況について,自賠責保険(○○株式会社)を先にもらえるよう準備している最中であり,自賠責保険で不足する分の××株式会社に対する任意保険分は,その後になり,訴訟で解決していくことになる予定である旨の説明を受けていたから,家事審判官は,同日の時点で,原告が自賠責保険金と任意保険金の支払を受けることを認識していたと認められる。
 そして,上記認定事実コのとおり,平成21年9月11日,Cは,本件財産目録(平成21年6月末日を基準とする。)や本件収支状況報告書(平成21年1月から同年6月末日までの期間を対象とする。)を提出し,保険金の入金の事実及びその入金先を申告し,その裏付け資料も併せて提出しているところ,上記のとおり,Cに対する後見監督においては,保険金の出入に注視することが重要であることから,本件自賠責保険金の入金について,Cに確認する必要があったといわざるを得ない
(中略)
家事審判官は,平成20年7月1日から同年12月末日までの収支について,Cに通帳の写しの提出を求めたり,Cに報告させるなどの措置を取らず,また,G弁護士に保険金請求の進捗状況について照会するなどの方法で,本件自賠責保険金の支払の有無及びその額につき把握する措置を取っていないから,更なる被害を防止する措置を怠ったといわざるを得ない。
したがって,上記家事審判官の対応は,家事審判官に与えられた権限が逸脱されて著しく合理性を欠くと認められ,国家賠償法1条1項が適用される違法な行為といわざるを得ない(以下,上記家事審判官の対応を「本件違法行為」という。)。」


【雑感】
・これは弁護士が見ても驚く判決です。成年後見について,裁判所は十分な監督をしていないにもかかわらず,国(家裁)に対する国家賠償請求を認めないものがほぼすべてで,これは極めて稀な事件といえます。専門職後見人の責任にはすぐにするのに,裁判所の責任は全然認めず,その不均衡がよく指摘されていました。
 ただ,本判決は国が控訴するとひっくりかえる可能性もあり,今後同様の判断が続くとは思えません。
・何より驚いたのは,国の責任を認めた判決を最高裁がHP上で紹介したことです。最高裁が何も考えていないのか,中立公正な機関ぶりを発揮したのか,真意は謎です。
まあ,単純に珍しい判決だったから紹介しただけでしょうけど。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。

by lawinfo | 2014-11-04 23:27 | 成年後見
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