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とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【選挙無効確認】最高裁平成26年11月26日大法廷判決

【参議院議員選挙無効確認】
・最高裁平成26年11月26日大法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成26年(行ツ)第78号,79号・選挙無効請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84648


【事案の概要】
・平成25年7月21日施行の参議院議員通常選挙について,岡山県選挙区の選挙人である被上告人らが,公職選挙法14条,別表第3の参議院議員の議員定数配分規定は憲法に違反し無効であるから,これに基づき施行された本件選挙の上記選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟


【原審】
・広島高裁岡山支部平成25年11月28日判決
(事件番号:広島高等裁判所岡山支部平成25年(行ケ)第1号)


【主文】
「原審各判決を破棄する。
 被上告人らの請求をいずれも棄却する。
 訴訟の総費用は被上告人らの負担とする。」



【大橋正春判事反対意見(27頁)】
「参議院選挙区選出議員の選挙区の定数是正について,国会は,平成16年大法廷判決後,平成17年7月に施行される参議院議員通常選挙までの間に較差を是正することは困難であるとして較差是正を見送り,従来の定数配分規定によって平成17年の通常選挙が施行された。同選挙後の検討の結果成立した平成18年改正においても,平成19年7月施行の参議院議員通常選挙に向けた当面の是正策として4増4減の措置が実施されただけであり,根本的解決は同選挙後の検討に先送りされた。平成18年改正による定数配分規定について平成21年大法廷判決は投票価値の不平等の是正については国会における不断の努力が望まれると指摘したが,国会は選挙制度の見直しを平成22年7月施行の参議院議員通常選挙後に先送りしただけでなく,同選挙に向けての当面の較差是正をも見送り,同選挙を対象とした平成24年大法廷判決で定数配分規定は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたと指摘されることになった。そして,同選挙前に目標とされた平成23年度中に参議院議員選挙の抜本的改革を内容とする公職選挙法の改正法案の提出は実現されず,平成24年11月16日に成立した平成24年改正法においても,平成25年7月施行の参議院議員通常選挙に向けた当面の是正措置として4選挙区で4増4減措置を定めたにすぎず,抜本的な改革は平成28年7月施行の参議院議員通常選挙まで再び先送りされた。こうした国会の改正作業について,私は平成24年大法廷判決の反対意見において,「平成18年改正の4増4減措置は,表向きは暫定的なものとされていたものの,その真意は,それを実質的に改革作業の終着駅とし,しかも,最大較差5倍を超えないための最小限の改革に止めるという意図によるものであったと評価せざるを得ない。」と述べたが,平成24年改正についても,国会が過去の検討結果を利用して審議を促進させようとの動きを見ることはできず,国会の真摯な努力については疑問を持たざるを得ない
 関係者の主観的意図は別として,国会の行動は,外形的には,定数配分規定の憲法適合性が問題になると当面の選挙を対象とした暫定的措置を採って抜本的改革は先送りし,次の選挙が近づき定数配分規定の憲法適合性が問題になるとまた暫定的措置を採るのみで抜本的改革を先送りするということを繰り返しているように見える。平成24年大法廷判決の判示するとおり参議院の定数配分の違憲状態を解消するためには選挙制度の仕組み自体の見直しが不可欠である以上,このような暫定的措置と抜本的改革の先送りを繰り返すだけでは,違憲状態が解消されるものではなく,制度の仕組み自体の見直しを内容とする改正の真摯な取組がされないまま期間が経過していくことは国会の裁量権の限界を超えるとの評価を免れないというべきである。
 上記の諸事情を考慮すれば,本件選挙までに憲法の要求する投票価値の平等の実現を図らなかったことは国会の裁量権の限界を超えたものといわなければならない(そもそも,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとされる状態を是正することは国会の憲法上の責務であり,裁量の問題とすることには違和感を覚える。当審は,最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁(以下「昭和51年大法廷判決」という。)以降,衆議院議員の選挙における投票価値の較差について,投票価値の平等の観点から憲法上問題があると判断した場合の次の判断事項として,「憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったといえるか否か」と判示して期間の問題であることを明示しているが,参議院議員選挙についてもこれと同様の問題の捉え方が適切であると考えられる。)。したがって,本件定数配分規定は,本件選挙当時において憲法に違反するものであったことになる。」


【雑感】
・結論は当然わかっていたことで,原審裁判官も当然に最高裁で逆転すると思いつつ無効判決を書いたと思われます。
・相変わらず,多数意見は特に読む必要もないので紹介しません。
・大橋反対意見は納得できることを書かれているので,紹介します。特に,なんでも立法裁量というのは違和感を覚えるとの指摘はまさにスバリ言い得ていると思います。

・ただ,大橋反対意見のうち,選挙の効力についての「全ての選挙区について選挙無効とするのではなく,一定の合理的基準(例えば較差が一定以上)に基づいて選択された一部の選挙区についてのみ選挙を無効とし,その他の選挙区については違法を宣言するにとどめることも可能であると考える。」という一部無効論は,現実的にはムリだろうと思います。
 結局この議論をしてしまうと,何倍なら無効といえるかで議論が止まることになり,時代が変わればまたその数値が変わりかねず,あまりに基準として不安定にすぎます。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。

by lawinfo | 2014-11-26 23:23 | 最高裁
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