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【裁判員裁判における前科と死刑判断】
・最高裁平成27年2月3日第二小法廷決定 (事件番号:最高裁判所平成25年(あ)第1127号・ 住居侵入,強盗殺人被告事件) URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84840 【決定要旨】 「死刑が究極の刑罰であり,その適用は慎重に行われなければならないという観点及び公平性の確保の観点からすると,同様の観点で慎重な検討を行った結果である裁判例の集積から死刑の選択上考慮されるべき要素及び各要素に与えられた重みの程度・根拠を検討しておくこと,また,評議に際しては,その検討結果を裁判体の共通認識とし,それを出発点として議論することが不可欠である。このことは,裁判官のみで構成される合議体によって行われる裁判であろうと,裁判員の参加する合議体によって行われる裁判であろうと,変わるものではない。 そして,評議の中では,前記のような裁判例の集積から見いだされる考慮要素として,犯行の罪質,動機,計画性,態様殊に殺害の手段方法の執よう性・残虐性,結果の重大性殊に殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等が取り上げられることとなろうが,結論を出すに当たっては,各要素に与えられた重みの程度・根拠を踏まえて,総合的な評価を行い,死刑を選択することが真にやむを得ないと認められるかどうかについて,前記の慎重に行われなければならないという観点及び公平性の確保の観点をも踏まえて議論を深める必要がある。 その上で,死刑の科刑が是認されるためには,死刑の選択をやむを得ないと認めた裁判体の判断の具体的,説得的な根拠が示される必要があり,控訴審は,第1審のこのような判断が合理的なものといえるか否かを審査すべきである。」 【千葉勝美判事補足意見】 「本件に即して言えば,例えば,短絡的な理由で2名の殺害に至って服役したにもかかわらず,再び短絡的な理由で1名の殺害に及んだという点から,ひとくくりにして「生命軽視の傾向あり」と評価することも理解できないではない。しかし,前科と今回の犯行との関連等の吟味が不十分なままこの点を死刑選択の重要な考慮要素として過度に強調するとすれば,死刑の選択の場面では疑問がある。仮に,前科と今回の犯行との関連が薄いにもかかわらず,生命軽視の傾向という被告人の危険性ばかりを強調する文脈で前科を死刑の選択に傾く重要な要素とするとすれば,犯罪行為それ自体に対する評価を中心に据えて死刑の是非を検討すべき場面において,行為者としての被告人の人格的な側面を過度に評価するものといわざるを得ず,これもまた疑問である。そもそも,本件前科は,夫婦間の感情的な対立や子供の将来を悲観しての犯行であり,そのきっかけ等をみても,本件犯行が強盗殺人という自己の利欲目的のものである点やその経緯との関連が薄く,非難の程度,生命侵害の危険性の程度の点でも,死刑選択の際の重要な要素として強調するには限界があるといわざるを得ないのである。」 【雑感】 ・第1審裁判員裁判が死刑を選択した後,第2審裁判官裁判で死刑判決を破棄した2件の東京高裁判決(東京高裁平成23年(う)第1947号・同平成23年(う)第773号)の上告審決定の1つ。 ・本件では裁判員裁判性が強調されていますが,職業裁判官の場合でも,前科があればその関連性をあまり考慮せずに,前科があるから今回もまた同じ理由で再犯したと,反省なしとみる傾向があることは疑いの余地はありません。 ・本件は死刑事案だからより慎重にということですが,その他の場合でも前科の取り扱いでより関連性が要求されるようになったともいえ,下級審裁判官はこの点をしっかり考えて,「謎の量刑感覚」で判断することなくきちんとやってもらいたいものです。 ※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
by lawinfo
| 2015-02-06 23:13
| 最高裁
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