とある弁護士のひとりごと

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【最高裁】平成29年3月10日判決

【法律審としての事実認定】
・最高裁平成29年3月10日第二小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成27年(あ)第63号・窃盗被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86587


【主文】
「原判決及び第1審判決を破棄する。
 被告人は無罪。」


【判例要旨】
「A及びBの各証言は高い信用性を有するとまではいえないのであって,そのような証拠に依拠して,Aが本件記帳台上に本件封筒を置き忘れた時点で本件封筒の中に現金6万6600円が在中していたとの事実を認定し,これを動かし難い前提として,被告人以外には現金を抜き取る機会のあった者がいなかったことを理由に被告人を有罪と判断した第1審判決及びこれを是認した原判決の判断は,被告人が本件封筒を窃取したとの認定を妨げる方向に強く働く客観的事情を無視あるいは不当に軽視した点において,論理則,経験則等に照らして不合理なものといわざるを得ない。被告人が本件公訴事実記載の窃盗に及んだと断定するには,なお合理的な疑いが残るというべきである。」


【小貫芳信反対意見】
「事実認定の事後審査の在り方は,「第1審において,直接主義・口頭主義の原則が採られ,争点に関する証人を直接調べ,その際の証言態度等も踏まえて供述の信用性が判断され,それらを総合して事実認定が行われることが予定されていることに鑑みると,控訴審における事実認定の審査は,第1審判決が行った証拠の信用性評価や証拠の総合判断が論理則,経験則等に照らして不合理といえるかという観点から行うべきもの」であり,「控訴審が第1審判決に事実誤認があるというためには,第1審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に示すことが必要である」とされている(最高裁平成23年(あ)第757号同24年2月13日第一小法廷判決・刑集66巻4号482頁,最高裁平成24年(あ)第797号同26年3月20日第一小法廷判決・刑集68巻3号499頁参照)。この理は,事実の取調べに制約があり,かつ,事後審で法律審である上告審には一層強く妥当するものと思われる。この観点から,多数意見をみると,第1審判決及びこれを是認した原判決の事実認定に対し,前述したとおり,それが論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に示したとは到底いえないと考える。」


【雑感】
・本件は最高裁における事実認定の在り方が問われている事件といってもいいと思います。最高裁の法律審としての性質を考えると,最高裁が自ら設定した高裁の事実認定の在り方に関する判例と適合するのか疑問もあります。この点で小貫反対意見は説得的な論述をしています。

・では,有罪とすべきであったかというとそんなことはありません。
あくまで,多数意見が行った詳細な検討は事実審で行われるべきことですが,多数意見もいっているとおり,高裁が有罪という結論ありきで事実認定をしているため,最高裁がこんな無理をするようになっているわけです。

・私はさんざん日本の刑事司法の癌は高裁だと言ってきていますが,高裁で証拠調べはほとんど行われず,事実上の1審制です。
 多数意見はこれを変えようとしているのかわかりませんが,この判決が出た後もおそらく高裁の審理姿勢は変わらないでしょう。そもそも,この事件も最高裁で主任裁判官(と担当調査官)が疑問視し,審議室事件にしたから破棄されたと考えられ,別の小法廷に入っていたら,同一小法廷であっても別の裁判官が主任裁判官だったらこの事件でこのような判断になっていたか疑問です。
 最高裁は刑事司法について,いろいろ下級審の意識を変えようという判断を数年前からしてきているので,高裁改革をまじめに取り組んでほしいものです。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。

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by lawinfo | 2017-03-13 23:41 | 刑事事件
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