とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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カテゴリ:労働事件( 11 )


【労災補償】最高裁平成28年7月8日判決

【私的な歓送迎会と労災補償】
・最高裁平成28年7月8日第二小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成26年(行ヒ)第494号・遺族補償給付等不支給処分取消請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86000


【参照条文】
・労働者災害補償保険法12条の8第2項が準用する労働基準法79条
「労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金の千日分の遺族補償を行わなければならない。」


【(破棄された)東京高裁平成26年9月10日判決要旨】
「本件歓送迎会は,中国人研修生との親睦を深めることを目的として,本件会社の従業員有志によって開催された私的な会合であり,Bがこれに中途から参加したことや本件歓送迎会に付随する送迎のためにBが任意に行った運転行為が事業主である本件会社の支配下にある状態でされたものとは認められないとして,本件事故によるBの死亡は,業務上の事由によるものとはいえない」


【最高裁判示事項】
「Bは,本件会社により,その事業活動に密接に関連するものである本件歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ,本件工場における自己の業務を一時中断してこれに途中参加することになり,本件歓送迎会の終了後に当該業務を再開するため本件車両を運転して本件工場に戻るに当たり,併せてE部長に代わり本件研修生らを本件アパートまで送っていた際に本件事故に遭ったものということができるから,本件歓送迎会が事業場外で開催され,アルコール飲料も供されたものであり,本件研修生らを本件アパートまで送ることがE部長らの明示的な指示を受けてされたものとはうかがわれないこと等を考慮しても,Bは,本件事故の際,なお本件会社の支配下にあったというべきである。また,本件事故によるBの死亡と上記の運転行為との間に相当因果関係の存在を肯定することができることも明らかである。
 以上によれば,本件事故によるBの死亡は,労働者災害補償保険法1条,12条の8第2項,労働基準法79条,80条所定の業務上の事由による災害に当たるというべきである。」


【雑感】
・労基署認めず→地裁認めず→高裁認めず→最高裁逆転。遺族の方々はよく心が折れずに頑張られたなぁ思います。

・本件では業務遂行性が争われたわけですが,私的行為では業務遂行性は認められないという考え方が強く,実際に労基署他は業務遂行性を否定しました。
本判決は歓送迎会が単なる私的な集まりではなく,その意味を深く掘り下げて探求して業務遂行性を判断しており,今後この業務遂行性の認められる範囲が拡大する契機になりそうです。


・本件上告代理人の名前で検索すると一番上位にひまわりサーチが出てきます。
その「所感」欄記載の言葉がまさにこの判決に至ったといえ,非常に感銘を受けたため,(勝手に)紹介します。
「故色川幸太郎弁護士(元最高裁判事)は,弁護士にとって特に必要な二つの資質(徳目)として,「他人の不幸に対する感応力」と「不正に対して憤る力」を挙げられたとのことです。私も,及ばずながら,この偉大な先達弁護士の顰みに倣いたいと思います。」
URL:http://www.bengoshikai.jp/search/detail.php?kai_code=20&id=22464

・その色川幸太郎弁護士が語ったスピーチの原文
URL:http://www.irokawa.gr.jp/law/archives/1049/


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by lawinfo | 2016-07-08 23:28 | 労働事件

【労働事件】最高裁平成27年6月8日判決

【打切補償と解雇制限の除外事由該当性】
・最高裁平成27年6月8日第二小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成25年(受)第2430号・地位確認等請求反訴事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85148


【争点】
労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付を受ける労働者が,療養開始後3年を経過しても疾病等が治らない場合には,使用者は,当該労働者につき,労働基準法81条の打切補償を支払って,同法19条1項ただし書の適用を受けることができるか。


【判示事項】
「労災保険法12条の8第1項1号の療養補償給付を受ける労働者が,療養開始後3年を経過しても疾病等が治らない場合には,労働基準法75条による療養補償を受ける労働者が上記の状況にある場合と同様に,使用者は,当該労働者につき,同法81条の規定による打切補償の支払をすることにより,解雇制限の除外事由を定める同法19条1項ただし書の適用を受けることができるものと解するのが相当である。」


【参照条文】
・労働基準法81条
「第七十五条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。 」
・労働基準法75条1項
「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。 」
・労働基準法19条1項
「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。 」


【雑感】
・形式主義の東京高裁と実質的観点から見た最高裁といういつもと逆のパターンです。
・解雇権濫用法理で決着をつけるために高裁に差し戻しており,この判決が今後の実務に与える影響は,結局のところ,このような事案は解雇権濫用法理で判断しなさいよということだけでしょうか。
・かなり長期間休んでいながら,十分な打切補償をがなされている点と肩こりから派生した病気であることから,労働災害の中ではそこまで重度とはいえない病気(頸肩腕症候群の程度による)であることを考慮すると,解雇も有効と判断されることになるかもしれません。

・この最高裁判決を正しく理解せず,労働災害があってもある程度金を払えば解雇できるんだという誤解が生じないように,この事案では,労働者に2年間の休職を認め,休職明けに平均賃金の1200日分である約1600万円も支払っている点に注意する必要があります。ここまでしっかり対応する企業は大企業であってもほとんどありませんから,あくまできちんと手続をとっている例外的な事案だと理解すべきでしょう。
企業はなんだかんだ理由をつけてもっと早期に辞めさせています(自主退職の名の下に…)。


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by lawinfo | 2015-06-08 23:10 | 労働事件

【損益相殺】最高裁平成27年3月4日大法廷判決

【遺族補償年金と損益相殺】
・最高裁平成27年3月4日大法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成24年(受)第1478号・損害賠償請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84909


【事案の概要】
・Aは,長時間の時間外労働や配置転換に伴う業務内容の変化等の業務に起因する心理的負荷の蓄積により,精神障害(鬱病及び解離性とん走)を発症し,病的な心理状態の下で,平成18年9月16日,死亡した。Aの相続人である上告人らが,Aを雇用していた被上告人に対し,不法行為又は債務不履行に基づき,損害賠償を求めた。
・上告人らは,労働者災害補償保険法に基づく葬祭料と遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定している。


【争点】
・遺族補償年金についてAの死亡による逸失利益の元本との間で損益相殺的な調整をした原審の判断は,遺族補償年金等がその支払時における損害金の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは,遅延損害金の支払債務にまず充当されるべきものであるとした最高裁平成16年(受)第525号同年12月20日第二小法廷判決・裁判集民事215号987頁に反するか。


【判示事項】
「不法行為による損害賠償債務は,不法行為の時に発生し,かつ,何らの催告を要することなく遅滞に陥るものと解されており(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照),被害者が不法行為によって死亡した場合において,不法行為の時から相当な時間が経過した後に得られたはずの利益を喪失したという損害についても,不法行為の時に発生したものとしてその額を算定する必要が生ずる。しかし,この算定は,事柄の性質上,不確実,不確定な要素に関する蓋然性に基づく将来予測や擬制の下に行わざるを得ないもので,中間利息の控除等も含め,法的安定性を維持しつつ公平かつ迅速な損害賠償額の算定の仕組みを確保するという観点からの要請等をも考慮した上で行うことが相当であるといえるものである。
 遺族補償年金は,労働者の死亡による遺族の被扶養利益の喪失の塡補を目的とする保険給付であり,その目的に従い,法令に基づき,定められた額が定められた時期に定期的に支給されるものとされているが(労災保険法9条3項,16条の3第1項参照),これは,遺族の被扶養利益の喪失が現実化する都度ないし現実化するのに対応して,その支給を行うことを制度上予定しているものと解されるのであって,制度の趣旨に沿った支給がされる限り,その支給分については当該遺族に被扶養利益の喪失が生じなかったとみることが相当である。そして,上記の支給に係る損害が被害者の逸失利益等の消極損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有することは,上記のとおりである。
 上述した損害の算定の在り方と上記のような遺族補償年金の給付の意義等に照らせば,不法行為により死亡した被害者の相続人が遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定することにより,上記相続人が喪失した被扶養利益が塡補されたこととなる場合には,その限度で,被害者の逸失利益等の消極損害は現実にはないものと評価できる
 以上によれば,被害者が不法行為によって死亡した場合において,その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,その塡補の対象となる損害は不法行為の時に塡補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが公平の見地からみて相当であるというべきである(前掲最高裁平成22年9月13日第一小法廷判決等参照)。
 上記2の事実関係によれば,本件において上告人らが支給を受け,又は支給を受けることが確定していた遺族補償年金は,その制度の予定するところに従って支給され,又は支給されることが確定したものということができ,その他上記特段の事情もうかがわれないから,その塡補の対象となる損害は不法行為の時に塡補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが相当である。
(3) 以上説示するところに従い,所論引用の当裁判所第二小法廷平成16年12月20日判決は,上記判断と抵触する限度において,これを変更すべきである。」


【参考判例(最高裁平成16年12月20日第二小法廷判決)】
「被上告人らの損害賠償債務は,本件事故の日に発生し,かつ,何らの催告を要することなく,遅滞に陥ったものである(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照)。本件自賠責保険金等によっててん補される損害についても,本件事故時から本件自賠責保険金等の支
払日までの間の遅延損害金が既に発生していたのであるから,本件自賠責保険金等が支払時における損害金の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは,遅延損害金の支払債務にまず充当されるべきものであることは明らかである(民法491条1項参照)」
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62604


【雑感】
・久しぶりの大法廷による判例変更。変更された方の上記最高裁判決は,民法491条からあっさり遅延損害金から充当されることは明らかであると言い切っていますが,それが約10年後に変更されることになりました。
・矛盾する2つの最高裁判決をどちらに統一するかが争点でしたが,元本から充当するということで実務は確定したといえます。
・遅延損害金から充当せず元金から充当することで,金額としてはかなり減ることになります。


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by lawinfo | 2015-03-04 23:21 | 労働事件

【セクハラ懲戒処分】最高裁平成27年2月26日判決

【セクハラによる懲戒処分の妥当性】
・最高裁平成27年2月26日第一小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成26年(受)第1310号・懲戒処分無効確認等請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84883


【事案の概要】
・大阪市港区の第三セクターの水族館が複数の女性従業員に対してセクハラ等をしたことを男性従業員に対し,出勤停止処分にするとともに,下位の等級に降格処分にした。これに対し,男性従業員は,上記各出勤停止処分は懲戒事由の事実を欠き又は懲戒権を濫用したものとして無効であり,上記各降格もまた無効であるなどと主張して,上記各出勤停止処分の無効確認や上記各降格前の等級を有する地位にあることの確認等を求めた事案。
・1審大阪地裁は男性従業員の主張を認めなかったが,二審大阪高裁は男性従業員の主張を認め,各出勤停止処分の無効確認請求や各降格前の等級を有する地位にあることの確認請求等を認容した。これに対し,水族館が上告。


【主文】
「原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
 前項の部分につき,被上告人らの控訴を棄却する。
 控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする。」


【判示事項】
「(2) 原審は,被上告人らが従業員Aから明白な拒否の姿勢を示されておらず,本件各行為のような言動も同人から許されていると誤信していたなどとして,これらを被上告人らに有利な事情としてしんしゃくするが,職場におけるセクハラ行為については,被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも,職場の人間関係の悪化等を懸念して,加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられることや,上記(1)のような本件各行為の内容等に照らせば,仮に上記のような事情があったとしても,そのことをもって被上告人らに有利にしんしゃくすることは相当ではないというべきである。
 また,原審は,被上告人らが懲戒を受ける前にセクハラに対する懲戒に関する上告人の具体的な方針を認識する機会がなく,事前に上告人から警告や注意等を受けていなかったなどとして,これらも被上告人らに有利な事情としてしんしゃくするが,上告人の管理職である被上告人らにおいて,セクハラの防止やこれに対する懲戒等に関する上記(1)のような上告人の方針や取組を当然に認識すべきであったといえることに加え,従業員Aらが上告人に対して被害の申告に及ぶまで1年余にわたり被上告人らが本件各行為を継続していたことや,本件各行為の多くが第三者のいない状況で行われており,従業員Aらから被害の申告を受ける前の時点において,上告人が被上告人らのセクハラ行為及びこれによる従業員Aらの被害の事実を具体的に認識して警告や注意等を行い得る機会があったとはうかがわれないことからすれば,被上告人らが懲戒を受ける前の経緯について被上告人らに有利にしんしゃくし得る事情があるとはいえない。
(3) 以上によれば,被上告人らが過去に懲戒処分を受けたことがなく,被上告人らが受けた各出勤停止処分がその結果として相応の給与上の不利益を伴うものであったことなどを考慮したとしても,被上告人X1を出勤停止30日, 被上告人X2を出勤停止10日とした各出勤停止処分が本件各行為を懲戒事由とする懲戒処分として重きに失し,社会通念上相当性を欠くということはできない。
 したがって,上告人が被上告人らに対してした本件各行為を懲戒事由とする各出勤停止処分は,客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合に当たるとはいえないから,上告人において懲戒権を濫用したものとはいえず,有効なものというべきである。」


【雑感】
・結論としては懲戒相当の事案でしょう。さすがに,2審は最近のトレンドであった使用者側の指導の有無を重視しすぎていると思われます。労働側としては,使用者側の落ち度を主張しにくくなるとの懸念があるかもしれませんが,この事案としては上司のセクハラがひどすぎるので,他の事案への波及効果はそれほどないと考えられます。


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by lawinfo | 2015-02-27 23:34 | 労働事件

【労働】パートタイム労働法改正

【パートタイム労働法改正】
・平成26年4月23日,パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の一部を改正する法律が公布されました。


【内容】
・①職務内容が正社員と同一,②人材活用の仕組み(人事異動等の有無や範囲)が正社員と同一であれば,有期労働契約を締結しているパートタイム労働者も正社員と差別的取扱いが禁止されます。
URL:http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11904000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Tanjikanzaitakuroudouka/0000044194.pdf


【雑感】
・今回の改正とは異なりますが,同一価値労働同一賃金の原則からすれば,①のみを要件とすれば足りると思います。
・私個人の感想ですが,正社員は価値があり,パートやアルバイトより上だという日本人の発想はまったく理解できません。


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by lawinfo | 2014-04-28 23:00 | 労働事件

【労働事件】最高裁平成26年3月24日判決

【うつ病罹患と過失相殺】
・最高裁平成26年3月24日第二小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成23(受)第1259号・ 解雇無効確認等請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84051&hanreiKbn=02


【事案の概要】
・上告人労働者が,鬱病に罹患して休職し休職期間満了後に被上告人会社から解雇されたが,上記鬱病(以下「本件鬱病」という。)は過重な業務に起因するものであって上記解雇は違法,無効であるとして,被上告人
に対し,安全配慮義務違反等による債務不履行又は不法行為に基づく休業損害や慰
謝料等の損害賠償を求める事案。
・原審東京高裁平成23年2月23日判決(東京高等裁判所平成20年(ネ)第2954号)は,安全配慮義務違反等を理由とする損害賠償責任を負うとした上で,過失相殺に関する民法418条又は722条2項の規定の適用ないし類推適用により損害額の2割を減額するとともに,休業損害に係る損害賠償請求につき,その認容すべき額が選択的併合の関係にある未払賃金請求の認容すべき額を下回るからこれを棄却すべきものであるとした。


【判示事項】
「被上告人が安全配慮義務違反等に基づく損害賠償として上告人に対し賠償すべき額を定めるに当たっては,上告人が上記の情報を被上告人に申告しなかったことをもって,民法418条又は722条2項の規定による過失相殺をすることはできないというべきである。」


【雑感】
・メンタルヘルスが騒がれている中での最高裁の重要な判断。
ただ,常にうつ病を考慮できないといっているわけではないので,そこは事例判断と理解したうえで実際の事案を分析して判断していくことになるでしょう。


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by lawinfo | 2014-03-25 23:07 | 労働事件

【一部無罪判決】横浜地裁平成25年11月22日判決

【窃盗無罪判決】
・横浜地裁平成25年11月22日第6刑事部判決・景山太郎裁判長
(事件番号:横浜地方裁判所平成24年(わ)第350号・器物損壊,傷害,窃盗被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83819&hanreiKbn=04


【窃盗罪に関する公訴事実】
「被告人は,平成24年2月5日午後10時55分頃から同日午後11時20分頃までの間に,本件駐車場において,Cが同所に置いていた同人所有又は管理の現金約1万8800円及び財布等33点在中のエコバッグ1個(時価合計約1万2050円相当)を持ち去り窃取した」


【検察官の求刑】
・懲役2年


【主文】
「被告人を罰金50万円に処する。
未決勾留日数のうち,その1日を金5000円に換算してその罰金額に満つるまでの分を,その刑に算入する。
本件公訴事実中窃盗の点については,被告人は無罪。」


【窃盗罪無罪の理由】
「被告人は,本件バッグを持ち去る前に,本件駐車場で,CがBを迎えに来させたことなどに腹を立て,これまでCとの交際に多額の金を使った,それを返せ,本件バッグも被告人の金で買った物だろうなどと言い,Cがこれに応じて,被告人に対し,本件バッグを持っていってもいい旨言ったことが認められる(この事実について検察官も争っていない。そして,Cも公判廷で同旨の供述をしている。Cの公判供述は,本件バッグは自分で買ったものであったから,そう言い返したが,被告人から被告人の金で買ったんでしょうなどと言われ,それで気が済むならと思い,その場を収めるため,持っていけばと言ったという旨のものである。Cの捜査段階の供述調書(警察官調書,検察官調書)には,このような事実について記載されていないようであるが,そのことについて,Cは,当初の警察の取調べで,持っていってもいいと言ったかもしれないことを取調官に話したが,取調官から,それでは窃盗にならないなどと言われ,2月8日付けで被害届を出すことになって,供述調書にはそのことが記載されなかったが,公判廷で証言する前に,検察官から記憶に基づいて本当のことを述べるよう言われて,この事実を述べた旨の供述もしている。これらによれば,Cの上記供述は十分に信用できる。)。
 物の占有者が占有移転について承諾している場合には,窃盗罪は成立しない。」



【雑感】
・被害者の証言を慎重に検討する姿勢は評価すべきだと思います。裁判官は迷ったら有罪としようとする人が多いので。
・この横浜地裁第6刑事部は,平成25年10月31日(事件番号:横浜地方裁判所平成24年(わ)第1049号・傷害被告事件)でも無罪判決を出しており,部としてきちんと公訴事実が認定できるか厳格に判断している気がします。本来はこうあるべきですが…。
・私としては,無罪判決を受けた検察官の名前は公表すべきだと思っています。以前は最高裁のHPでも名前が出ていたのですが,最近は最高裁も検察官の名前を消しています。
・検察官は「公益の代表者」(検察庁法4条)なのですから,無罪判決を受けた事件は名前が公表されてしかるべきです。最高裁が判決書への名前の記載をやめたのは,検察庁とのなれ合いでしょうか。
・特にこの事件は,身柄拘束を「1年8か月」受けており,判決で罰金刑で終わったことを考えるとこの身柄拘束の是非が問われるべき事案です。結果論にすぎないというのは乱暴すぎるでしょう。まあ,保釈の請求がされていれば,保釈を許可しなかった裁判所の対応(否認しているから罪証隠滅のおそれありということでしょうが…)こそ問題ありともいえます。


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by lawinfo | 2014-01-06 23:12 | 労働事件

【遺族補償年金等不支給決定取消】大阪地裁平成25年11月25日判決

【遺族補償年金等不支給決定と夫のみに設けられた年齢要件】
・大阪地裁平成25年11月25日第5民事部判決・中垣内健治裁判長
(事件番号:大阪地方裁判所平成23年(行ウ)第178号・遺族補償年金等不支給決定処分取消請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83814&hanreiKbn=04


【事案の概要】
・公務による精神障害のため自殺した地方公務員だった者の夫が,処分行政庁がした遺族補償年金等の不支給決定の取消しを求めた事案


【争点】
・地方公務員災害補償法32条1項ただし書1号が,遺族補償年金の受給要件として,配偶者のうち夫についてのみ「60歳以上」(同法附則7条の2第2項により,当分の間「55歳以上」)との要件を付加していることは,憲法14条1項に違反するか。


【主文】
1 地方公務員災害補償基金大阪府支部長が,原告に対し,平成23年1月5日付けでした遺族補償年金,遺族特別支給金,遺族特別援護金及び遺族特別給付金の不支給決定をいずれも取り消す。
2 訴訟費用は被告及び参加行政庁の負担とする。


【判示事項】
「遺族補償年金制度につき具体的にどのような立法措置を講じるかの選択決定は,上記制度の性格を踏まえた立法府の合理的な裁量に委ねられており,本件区別が立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても,そのような区別をすることに合理的な根拠が認められない場合には,当該区別は,合理的な理由のない差別として,憲法14条1項に違反するものと解するのが相当である。」
「地公災法の立法当時,遺族補償年金の受給権者の範囲を画するに当たって採用された本件区別は,女性が男性と同様に就業することが相当困難であるため一般的な家庭モデルが専業主婦世帯であった立法当時には,一定の合理性を有していたといえるものの,女性の社会進出が進み,男性と比べれば依然不利な状況にあるとはいうものの,相応の就業の機会を得ることができるようになった結果,専業主婦世帯の数と共働き世帯の数が逆転し,共働き世帯が一般的な家庭モデルとなっている今日においては,配偶者の性別において受給権の有無を分けるような差別的取扱いはもはや立法目的との間に合理的関連性を有しないというべきであり,原告のその余の主張について判断するまでもなく,遺族補償年金の第一順位の受給権者である配偶者のうち,夫についてのみ60歳以上(当分の間55歳以上)との本件年齢要件を定める地公災法32条1項ただし書及び同法附則7条の2第2項の規定は,憲法14条1項に違反する不合理な差別的取扱いとして違憲・無効であるといわざるを得ない。」


【雑感】
・本判決は時代の変化から法律の合理性を詳細に検討しており,その中でも「児童扶養手当法4条」との対比を重視しているように見えます(39頁)。これは判決書が指摘しているとおり,原告が主張していたことであり,この原告代理人弁護士の構成がよかったからこの違憲判決が出たということができると思います。お見事というほかありません。
・東京地裁の成年被後見人の選挙権制限の違憲判決(東京地裁平成25年3月14日判決・定塚誠裁判長)に続いて,地裁でも違憲判決が出るようになったなぁと感じます。
・東京地裁の方はすぐに立法の改正へと動き出しましたが,この件はどうなるか今後の展開に期待です。


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by lawinfo | 2013-12-13 23:06 | 労働事件

【労働事件】最高裁平成25年6月6日判決

【解雇無効と年次有給休暇の算定】
・最高裁平成25年6月6日第一小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成23年(受)第2183号・年次有給休暇請求権存在確認等請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83306&hanreiKbn=02


【事案の概要】
・前訴で解雇無効判決が確定した。その後,労働者は復職して有給休暇を申請した。無効期間中に労働者は出勤しなかったため,会社は有給休暇の算定に含めず,有給休暇とは認めなかった。解雇期間中は有給休暇の算定の基礎となる出勤日数に含まれるか。なお,原審は本件係争期間中の労働日を全労働日に含めた上でその全部を出勤日として取り扱った。


【主文】
・上告棄却


【判示事項】
「法39条1項及び2項における前年度の全労働日に係る出勤率が8割以上であることという年次有給休暇権の成立要件は,法の制定時の状況等を踏まえ,労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から除外する趣旨で定められたものと解される。このような同条1項及び2項の規定の趣旨に照らすと,前年度の総暦日の中で,就業規則や労働協約等に定められた休日以外の不就労日のうち,労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえないものは,不可抗力や使用者側に起因する経営,管理上の障害による休業日等のように当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものは別として,上記出勤率の算定に当たっては,出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものと解するのが相当である。
無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は,労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日であり,このような日は使用者の責めに帰すべき事由による不就労日であっても当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものとはいえないから,法39条1項及び2項における出勤率の算定に当たっては,出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものというべきである。」


【雑感】
・結論は当然だと思います。
 使用者側があえて上告したのは,会社からどうしても納得できないから上告してくれとでも頼まれたからなんだろうと思います。会社の気持ちはわかりますが,法律論としては通らないでしょう。


※上記の判決・意見などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2013-06-06 23:40 | 労働事件

【労働】短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大

【短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大】

・公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律が,平成24年8月10日に成立し,同月22日に交付されました(平成24年法律第62号)。


・非常に重要な改正のある法律で,主要な改正点は以下のとおりです。
①老齢基礎年金の受給資格期間を25年から10年に大幅に短縮。
②基礎年金国庫負担1/2の恒久化される「特定年度」を平成26年度とされた。
③短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大(※平成28年10月施行)
④厚生年金、健康保険等の産休期間中の保険料免除
⑤遺族基礎年金の父子家庭への支給開始(「子のある妻」から「子のある配偶者」へ変更)


・詳しくは下記厚生労働省のHPを参照してください。
URL:http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/topics/2012/dl/0829_01_01.pdf


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2012-11-29 23:35 | 労働事件