とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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カテゴリ:消費者問題( 11 )


【認定司法書士の代理権】最高裁平成28年6月27日判決

【認定司法書士の代理権】
・最高裁平成28年6月27日第一小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成26年(受)第1813号・損害賠償請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85969


【判示事項】
「一般に,民事に関する紛争においては,訴訟の提起前などに裁判外の和解が行われる場合が少なくないことから,法3条1項7号は,同項6号イの上記趣旨に鑑み,簡裁民事訴訟手続の代理を認定司法書士に認めたことに付随するものとして,裁判外の和解についても認定司法書士が代理することを認めたものといえ,その趣旨からすると,代理することができる民事に関する紛争も,簡裁民事訴訟手続におけるのと同一の範囲内のものと解すべきである。また,複数の債権を対象とする債務整理の場合であっても,通常,債権ごとに争いの内容や解決の方法が異なるし,最終的には個別の債権の給付を求める訴訟手続が想定されるといえることなどに照らせば,裁判外の和解について認定司法書士が代理することができる範囲は,個別の債権ごとの価額を基準として定められるべきものといえる。
 このように,認定司法書士が裁判外の和解について代理することができる範囲は,認定司法書士が業務を行う時点において,委任者や,受任者である認定司法書士との関係だけでなく,和解の交渉の相手方など第三者との関係でも,客観的かつ明確な基準によって決められるべきであり,認定司法書士が債務整理を依頼された場合においても,裁判外の和解が成立した時点で初めて判明するような,債務者が弁済計画の変更によって受ける経済的利益の額や,債権者が必ずしも容易には認識できない,債務整理の対象となる債権総額等の基準によって決められるべきではない
 以上によれば,債務整理を依頼された認定司法書士は,当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が法3条1項7号に規定する額を超える場合には,その債権に係る裁判外の和解について代理することができないと解するのが相当である。」


【参照条文】
・司法書士法3条1項7号
「民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法 の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。 」


【雑感】
・最高裁が認定司法書士の代理権の範囲について,経済的利益説と総額説を否定し,個別債権説に立つことが確定しました。

・司法書士のHPで「経済的利益が140万円以内であれば司法書士の業務の範囲内」とうたっていれば,本日以降違法な記載をしているということになります。

・この最高裁について,まったく意味のわかっていないマスコミは,最高裁が日弁連の見解に立ったとかさかんに喧伝し,物事を深く考える力のない弁護士はそれを歓迎とか平気でコメントしています。
 しかし,最高裁が総額説も否定したことから,同一依頼者について,個別の債権額が140万円未満であれば,100社あっても代理権があるということになり,認定司法書士資格さえあれば,弁護士まがいのことが堂々とできるようになりました。

・なお,上記参照条文のように,140万円以上の債権をめぐる「相談(受任に至らなくとも)」を司法書士が受けることはもともと違法行為ですので,相談をする場合はご注意ください。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2016-06-27 23:59 | 消費者問題

【優良誤認表示】京都地裁平成27年1月21日判決

【優良誤認表示】
・京都地裁平成27年1月21日第2民事部判決・橋詰均裁判長
(事件番号:京都地方裁判所平成26年(ワ)第116号・クロレラチラシ配付差止等請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84833


【事案の概要】
・適格消費者団体である原告が,医薬品としての承認を受けていない被告商品について,医薬品的な効能効果がある旨を示す又は示唆する表示は,一般消費者に対し,あたかも国により厳格に審査され承認を受けて製造販売されている医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがあるから,不当景品類及び不当表示防止法10条1項1号所定の優良誤認表示にあたるとして,差し止めを求めるとともに,当該表示の「停止若しくは予防に必要な措置」として広告を1回配布することを求めた事案


【主文】
「1 被告は,別紙1の1に記載の媒体において,同1の2に記載の内容を表示してはならない。
2 被告は,第三者をして,別紙1の1に記載の媒体において,同1の2に記載の内容を表示させてはならない。
3 被告は,別紙2に記載のとおりの広告を,別紙3に記載の条件で1回配布せよ。
4 訴訟費用は,被告の負担とする。」



【判示事項】
「わが国では,薬事法が制定された昭和35年以降,医薬品は厳格に規制され,国による厳格な審査を経て承認を得なければ製造販売することはできず,承認を受けていない医薬品は医薬品的な効能効果を表示することが刑罰をもって禁止されてきたのであるから,①医薬品的な効能効果を表示する商品があれば,当該商品が当該効能効果を有することについて国の厳格な審査を経た医薬品であり,②通常の事業者であれば,承認を受けた医薬品でない商品について医薬品的な効能効果を表示して販売しないであろうという社会通念が形成されているというべきである。
 そうすると,医薬品としての承認がされていない商品について,医薬品的な効能効果が表示されている場合,当該表示は,一般消費者に対し,当該商品があたかも国により厳格に審査され承認を受けて製造販売されている医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがあるから,優良誤認表示にあたると認めるのが相当である。
 そこで,次に,研究会チラシの表示内容は,医薬品的な効能効果があると表示するものかを検討する。
4 研究会チラシのうち,細胞壁破砕クロレラ粒等を服用したことにより,「腰部脊柱管狭窄症(お尻からつま先までの痛み,痺れ)」「肺気腫」「自律神経失調症・高血圧」「腰痛・坐骨神経痛」「糖尿病」「パーキンソン」病・便秘」「間質性肺炎」「関節リウマチ・貧血」「前立腺がん」等の症状が改善したとの体験談を記載した部分については,人の疾病を治療又は予防する効能効果があることを暗示するものであり,一般の消費者に対し,細胞壁破砕クロレラ粒等が医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがあるから,医薬品的な効能効果があると表示するものである。
 また,それ以外の記載,すなわち「薬効のある食品であること」や「病気と闘う免疫力を整える」「神経衰弱・自律神経失調症改善作用」等の効用があることを記載した部分についても,人の疾病の治療又は予防を目的とする効能効果があることや,単なる栄養補給や健康維持を超え,身体の組織機能の意図的な増強増進を主たる目的とする効能効果があることを標榜するものであることは明らかであり,一般の消費者に対し,細胞壁破砕クロレラ粒等が医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがあるから,医薬品的な効能効果があると表示するものである
5  以上のとおり,研究会チラシによる前記第1の5に掲記認定の説明は,医薬品としての承認を受けていない細胞壁破砕クロレラ粒等の被告商品につき,医薬品的な効能効果があると表示するものであり,一般の消費者に対し,細胞壁破砕クロレラ粒等の被告商品があたかも国により厳格に審査され承認を受けて製造販売されている医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがある
 また,上記のような表示は,商品の宣伝広告として社会一般に許容される誇張の限度を大きく踏み越えるものである。
 したがって,研究会チラシの説明は,景表法10条1号所定の「商品…の内容について,実際のもの…よりも著しく優良であると誤認される表示」として優良誤認表示にあたる。


【雑感】
・この部の部長の名前はよく目にします。とある著名事件の1審判決を書いた裁判官であり,私も実際にこの裁判官の判決をもらったことがあります。
・ただ,全体的に他の裁判官が通常しないちょっと変わった判断をするなという印象があります(※ただし,結論は私と同じです。結論は)。本件の結論はいいと思いますが,今後この事件がどうなるか楽しみではあります。


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by lawinfo | 2015-02-05 23:33 | 消費者問題

【消費者問題】京都地裁平成25年5月23日判決

【子供による親のカード使用とカード会社の請求】
・京都地裁平成25年5月23日判決・判例時報2199号52頁
URL:http://www.kokusen.go.jp/hanrei/data/201501_1.html


【事案の概要】
・16歳の子供が父親のカードを無断で使い,キャバクラで約475万円を使用した。
その後,父親はキャバクラ以外での使用代金については支払ったが,キャバクラでの代金の支払いをしなかった。


【裁判所の判断】
・キャバクラでの475万円は暴利行為で,民法90条により無効
・信販会社はカード不正使用の不利益からカード会員を保護するため,信義則上,不正使用の可能性がうかがわれる場合、カード使用者本人か確認するための合理的な手段を取り、本人確認の状況が疑わしい場合、カード決済を暫定的に見合わせる程度の義務は負うべきである,等と判断し,カード会社から父親への請求約550万円のうち,約75万円のみ支払いを認め,約475万円については,請求が権利の濫用にあたるとして請求を認めなかった。


【雑感】
・子供のカードの不正利用の裁判例として,とても使いやすい事例。
ただし,この判断は最高級シャンパンのシャンパンタワーをするなど,短期間の異常な利用を未成年者がしたことによる点が大きいとも考えられ,その他の事案でどれだけ使えるかはわかりません。


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by lawinfo | 2015-01-22 23:02 | 消費者問題

【生活保護】千葉地裁平成25年11月27日判決

【生活保護費の返還と否認権行使】
・千葉地裁平成25年11月27日民事第1部判決・金子直史裁判長
(事件番号:千葉地方裁判所平成25年(ワ)第616号・否認権行使請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83975&hanreiKbn=04


【事案の概要】
・生活保護受給者が資産を処分するなどして金銭を得たことから,市に対し,生活保護法63条(※)に基づき金銭を返還した。その後に生活保護受給者について破産手続が開始され,破産管財人である原告が,破産法162条1項1号の否認権を行使して,被告市に対し,返還金の返還を求めた事案。


【※生活保護法63条】
「被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。」


【判示事項】
「本件事実関係の下では,被告の市長による本件保護開始決定に基づく保護費の給付を受けてきた破産者が,被告に対し,生活保護法63条に定める費用返還義務の履行としてした本件弁済は,破産法162条1項1号に該当し,その有害性及び不当性にも欠けるところがないから,その後に破産者について開始された破産手続の破産管財人である原告が,被告に対し,本件弁済についての否認権を行使する本件請求は,理由がある。」


【雑感】
・63条の返還に否認権行使を認めた極めて稀有な事案。破産管財人がここまでやることは少なく,破産裁判所も時間がかかることをよく認めたなぁと思います。
・最近,福祉事務所が63条または78条による返還請求を濫発して,金のないとわかっている保護者に返さないなら刑事告発するというケースが増えています。
・返してしまえば否認権行使の対象になりうることは知っておくべきでしょうね。


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by lawinfo | 2014-02-28 23:27 | 消費者問題

【消費者問題】京都地裁平成24年1月12日判決

【インターネット通信サービスの通信料金返還請求】
・京都地裁平成24年1月12日第4民事部判決・佐藤明裁判長
(事件番号:京都地方裁判所平成22年(ワ)第3533号・通信料金返還請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82027&hanreiKbn=04


【事案の概要】
・Xは電気通信事業者Yに対し,通信料金として合計約20万円を支払った。
 Xは,Yの1契約あたりの月間平均売上収入からみれば,一般消費者は1カ月1万円を超える通信料金が発生することは予測できないから,本件契約におけるパケット料金条項が消費者の予測できない極めて高額なパケット料を課金する不当な内容であるとして,本件パケット料金条項のうち,消費者が通常予測する額である1万円を超える部分については消費者契約法10条により無効であるとして,Yに対し不当利得返還の請求をした。
・また,Xは本件契約締結に際し,Yには携帯電話とパソコンを直接接続し使用する際の通信料金を具体的に説明する義務,または,通信料金高額化についての防止措置をとる義務があったにもかかわらずこれを怠ったとして,債務不履行による損害賠償を請求した。


【判示事項】
「本件パケット料金条項が,任意規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重するものであるとはいえず,消費者契約法10条前段が定める要件に該当しないというべきである。」
「被告は,本件契約上の義務として,原告がアクセスインターネットを利用するに先立ち,原告に対し,同サービスを利用することにより高額な料金が発生する可能性があることにつき,情報提供をする義務を負うと解するのが相当である。」
「一旦,利用者がアクセスインターネットの利用を開始し,通信料金が高額化した後の段階においては,利用者に生じる予測外の財産的負担の拡大の防止という観点から,情報提供の必要性の程度が高まるといえるのであり,この段階において被告に課される情報提供義務の有無については,別途検討する必要がある。」
「本件通信時において,原告のアクセスインターネットの利用により高額なパケット通信料金が発生しており,それが原告の誤解や,不注意に基づくものであることが被告においても容易に認識し得る場合においては,被告は,本件契約上の付随義務として,原告の予測外の通信料金の発生拡大を防止するため,上記パケット通信料金が発生した事実をメールその他の手段により原告に告知して注意喚起をする義務を負うと解するのが相当である。」


【雑感】
・近時,消費者契約法の適用を裁判所はことごとく否定しています。本当に消費者保護に役に立たない法律で,改正すべきだという声が出てきています。
・ただ,裁判所としてはなんとか消費者を保護しようと,説明義務違反を認めた点では評価できる判決です。
・しかし,結局このような消費者事件では,裁判所は過失相殺をし間を取る判決をするため,勝ったんだか負けたんだかよくわからない結論になりがちです。
しかも,本件の事案での消費者の過失は過失といえるか疑問で原告本人尋問の一部の供述を過度に強調しています。裁判所としては,通信事業者側に控訴しないようにする対策または控訴審を見越して高裁に破棄されないようにしたとしか思えません。


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by lawinfo | 2013-05-03 23:25 | 消費者問題

【消費者問題】名古屋高裁平成25年1月18日民事第3部判決

【旅行案内文書の誤記載と不法行為に基づく損害賠償請求】
・名古屋高裁平成25年1月18日民事第3部判決(長門栄吉裁判長)
(事件番号:名古屋高等裁判所平成24年(ネ)第929号・損害賠償等請求控訴事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83010&hanreiKbn=04


【事案の概要】
・旅行業者と海外旅行契約を締結した顧客が,旅行業者から送付された案内文書に,集合時間が「10月18日午前0時」であるのに,「10月18日24時00分」とする誤った記載があったため,搭乗予定の飛行機に搭乗できず,損害を被ったとして,旅行業者に対してした不法行為に基づく損害賠償請求が一部認容された事例


【裁判所の判断】
「まず,不法行為責任について検討する。
商品としてのツアーを企画し旅行契約を締結した旅行会社は,ツアーを催行する債務を負っており,ツアーを円滑に催行する前提として,顧客に対して集合から解散までのツアーの具体的日程を正確に周知させることが必要となる。そして,誤った,あるいは,あいまいな集合日時や集合場所を通知した場合には,顧客が正しい集合日時や集合場所に集合できなくなることは容易に予見できるから,旅行会社は,ツアーの実施前において,顧客に対し,正確な集合日時や集合場所を周知する注意義務(以下,この注意義務を「本件注意義務」という。)を負うと解すべきである
そして,旅行会社が顧客に配布する日程表は,顧客にとって上記各事項を正確に認識する重要な資料であるから,それに記載された集合日時等が,一義的でなく,顧客に誤った認識を与える可能性がある場合には,旅行会社は,本件注意義務に違反したものというべきである。
また,日程が掲載されたインターネットによってツアーの申込みをする場合であっても,顧客がその後に配布される日程表によって最終的に正確な集合日時等を認識するのが通常であるといえるから,上記申込みによる場合であっても,旅行会社が本件注意義務を負うことに変わりはないというべきである。」


【雑感】
・せっかく控訴審で1審を逆転させてまで消費者側を勝たせたのに,7割の過失相殺をして2万3701円程度しか認めないのはきついですね。
・裁判所は消費者事件に対しては,この「過失相殺」をかなり行い,勝訴判決なのかわからないということがよくあります。


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by lawinfo | 2013-02-27 23:48 | 消費者問題

【消費者問題】大阪地裁平成23年3月23日判決

【ドロップショッピング商法】
・大阪地裁平成23年3月23日判決
URL:http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201207_05.pdf


【事案の概要】
・個人であるXらは,インターネットのホームページやパンフレットに「とにかく簡単」「ウェブサイト制作、仕入れ、在庫管理、商品の配送をYがすべて代行するサービスを提供することで、オーナー様の手間を極限まで『ゼロ』に近づけました」などと表示していたYと契約をした。
 Xらは,Yが特定商品取引法55条2項(※)所定の書面(契約書面)を交付していなかったことからクーリング・オフ通知を出し,支払済みの契約金額(約110万円~220万円)の返還を求めた。
 これに対し,Yが特商法上の業務提供誘引販売には当たらないため同法の適用はないと主張した。


【※特定商品取引法55条2項】
「業務提供誘引販売業を行う者は、その業務提供誘引販売業に係る業務提供誘引販売取引についての契約(以下この章において「業務提供誘引販売契約」という。)を締結した場合において、その業務提供誘引販売契約の相手方がその業務提供誘引販売業に関して提供され、又はあつせんされる業務を事業所等によらないで行う個人であるときは、遅滞なく、主務省令で定めるところにより、次の事項についてその業務提供誘引販売契約の内容を明らかにする書面をその者に交付しなければならない。
一 商品(施設を利用し及び役務の提供を受ける権利を除く。)の種類及びその性能若しくは品質又は施設を利用し若しくは役務の提供を受ける権利若しくは役務の種類及びこれらの内容に関する事項
二 商品若しくは提供される役務を利用する業務の提供又はあつせんについての条件に関する事項
三 当該業務提供誘引販売取引に伴う特定負担に関する事項
四 当該業務提供誘引販売契約の解除に関する事項(第五十八条第一項から第三項までの規定に関する事項を含む。)
五 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項」


【争点及び裁判所の判断】
①業務提供誘引販売取引の「業務性」
「特商法51条が業務提供誘引販売取引における「業務」を「事業者が自ら提供を行い又はあっせんを行うもの」としている趣旨は,相手方が従事することとなる「業務」と「その業務について利用する商品・役務」が同一の事業者によって提供される関係にある場合には,相手方は確実に業務に従事することができ,結果確実に利益を収受できると期待することから,そうでないものと比較し,相手方に対する強い誘引力を有するため,これを規制対象として,相手方の利益保護や取引の適正化を図ろうとするところにある。
 このような同条項の趣旨に鑑みれば,ここにいう「業務」とは,従事することにより一定の利益が得られる仕事,作業であれば足りる。」

②販売利益の損益相殺の可否
「Xらは,Yが作成したウェブサイトを利用して,商品および販売価格をネットショップに掲載する,購入者からの入金を管理する等の業務に現実に従事しており,Xらがこれらの業務に従事した事実は,クーリング・オフに基づく解除により覆滅されるものではないから(Xらと購入者との間の商品の売買契約およびXらとYとの間の売買契約の効果も覆滅しない),Xらが取得した上記利益は,これらの業務に従事したことの対価として得た利益というべきであり,これらをXらの原状回復請求権の額から控除すべき理由はない。」


【雑感】
・ドロップショッピングは自分がオーナーに簡単になれることから,被害の多いものです。
しかし,実態としてほとんど利益がでないものです。
・この判決は,業務提供誘引販売取引について非常に意味のある判決といえます。
 ただし,このような判決が出る可能性が高いとまではいえないので,このようなドロップショッピングは控えるべきでしょう。


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by lawinfo | 2013-02-01 23:43 | 消費者問題

【消費者問題】仙台高裁平成22年4月22日判決

【携帯電話の発熱による低温熱傷に製造物責任法3条の責任を認めた事例】
・仙台高裁平成22年4月22日判決・判例時報2086号42頁
(事件番号:仙台高等裁判所平成19年(ネ)第337号)
URL:http://www.zenso.or.jp/files/jacas134.pdf

【事案の概要】
・ズボンのポケットに携帯電話を入れたまま,こたつで約2時間半過ごしたたXが,左大腿部に低温熱傷を負ったため,これはポケットに収納していた携帯電話の異常発熱によるものであるとして,当該携帯電話の製造業者に対し,製造物責任法3条または民法709条に基づく損害賠償を請求した事例


【第1審判決の概要】
・仙台地裁平成19年7月10日判決・判例時報1981号66頁
(事件番号:仙台地方裁判所平成17年(ワ)第693号)
 本件携帯電話および本件リチウムイオン電池が本件熱傷の原因であるとは認められない以上,本件携帯電話に本件熱傷事故を生じさせる設計上,製造上または警告上の欠陥があったとは認められず,本件携帯電話を製造,出荷したことについてYに過失があったとも認められないとしてXの請求を棄却した。
 これに対し,Xが控訴


【第2審判決の概要】
・携帯電話には設計上または製造上の欠陥があるとして,製造業者に製造物責任法3条の責任を認め,第1審判決を取り消して請求を認容
「Yは本件熱傷が本件携帯電話から発生したとする製品起因性および本件携帯電話の欠陥を否認する。しかし,製造物責任法の趣旨,本件で問題とされる製造物である携帯電話機の特性およびその通常予見される使用形態からすれば,製造物責任を追及するXとしては,欠陥の主張・立証として,本件携帯電話について通常の用法に従って使用していたにもかかわらず、身体・財産に被害を及ぼす異常が発生したことを主張・立証することで足りるというべきであり,それ以上に,具体的欠陥等を特定したうえで,欠陥を生じた原因,欠陥の科学的機序まで主張立証責任を負うものではない。すなわち,本件では,欠陥の個所,欠陥を生じた原因,その科学的メカニズムについてはいまだ解明されないものであっても,本件携帯電話が本件熱傷の発生源であり,本件携帯電話が通常予想される方法により使用されていた間に,本件熱傷が生じたことさえ,Xが立証すれば,携帯電話使用中に使用者に熱傷を負わせるような携帯電話機は,通信手段として通常有すべき安全性を欠いており,明らかに欠陥があるということができる」
 この控訴審判決に対し,Yが上告。


【最高裁】
・最高裁平成23年10月27日決定
 Yの上告棄却


【雑感】
・消費者側代理人の努力された結果の逆転判決。ただ,このような画期的判決の裏にはやはりセンスのすぐれた裁判官の影あり。この事件の控訴審の裁判長が「温度上昇についての実験は出来ないか」との釈明があったことから,実験をし,逆転判決への流れができたとのこと。優れた代理人・裁判官がいてはじめて画期的な判決がでるのだなぁと痛感しました。
・また,消費者事件としては重要な意味のある判決。ぜひ知っておくべき事件だと思います。
・このブログでは,消費者問題の重要判決も極力紹介していきたいです。


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by lawinfo | 2013-01-29 23:50 | 消費者問題

【消費者問題】京都地裁平成24年11月20日判決

【携帯中途解約違約金と消費者契約法】
・京都地裁平成24年11月20日判決
(事件番号:京都地方裁判所平成23年(ワ)第146号・ 解除料条項使用差止請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82900&hanreiKbn=04


【事案の概要】
・適格消費者団体である原告が,移動体通信事業等を目的とする事業者である被告に対し,被告の3G通信サービスに関する契約約款中の,契約期間中に料金種別を変更又は廃止する場合に顧客が解除料を支払う旨の条項が消費者契約法9条1号又は10条に反し無効であるとして,法12条3項に基づき,本件解除料条項を含む契約約款を用いた意思表示をすることの差止めを求めた事案


【主文】
「1 原告の請求を棄却する。
 2 訴訟費用は,原告の負担とする。」


【判示事項(抜粋)】
「本件当初解除料9975円は,本件契約が解除されることにより被告に生じる平均的損害を超えることはないため,本件当初解除料条項は法9条1号に反しない。」
「消費者は,本件契約を締結する際,本件当初解除料条項について充分に認識した上で契約を締結しているといえ,本件当初解除料条項について消費者と事業者の間に看過できないような知識,情報及び交渉力の差があるともいえない。」
「9975円という本件当初解除料は,平均的損害を下回るものであること,ホワイトプランNは解除料条項のない他のプランに比して基本使用料などの優遇を受けていることなどを考慮すれば,不当に高額とはいえないし,更新月及び翌月には無料で解約できる期間が設けられており,かかる期間は,2か月間と不当に短いものではない。」
「消費者が,本件当初解除料条項の存在を認識した上で,経済的合理性等を考慮して本件当初解除料条項付きプランを選択しているといえるのであり,解除料の金額や解除料がかからない期間を考慮しても,本件当初解除料条項は,信義則に反しているとはいえない。」
「このような事情からすれば,本件当初解除料条項は,信義則に反して消費者の利益を一方的に害する場合であるとはいえないから,法10条後段の要件を満たさない。」


【雑感】
・大変厳しい判決であるものの,今後の消費者問題を考えるうえで参考になる判決です。
大手企業が相手だと基本的に厳しい姿勢を示す裁判所に対して,どう我々が打ち勝っていくかの検討のため知っておくべき判決だと思います。


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by lawinfo | 2013-01-19 22:38 | 消費者問題

【NHK放送受信料】札幌高裁平成24年12月21日上告審判決

【NHK放送受信料と短期消滅時効】
・札幌高裁平成24年12月21日第2民事部上告審判決
(事件番号:札幌高等裁判所平成24年(ツ)第4号・放送受信料請求上告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82870&hanreiKbn=04


【事案の概要】
・放送受信契約に基づく未払受信料のうち平成17年11月以前の分は5年の短期消滅時効が完成したとして請求を棄却し,その余の請求を認容した原審の判断を相当として,双方の上告を棄却した。


【主文】
1 本件上告をいずれも棄却する。
2 上告人の上告費用は上告人の,被上告人の上告費用は被上告人の各負担とする。


【判示事項】
(上告人の主張に対し)
「民法169条は,「年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権」,すなわち,基本権たる定期金債権から発生する支分権であって,かつ,その支分権の発生に要する期間が1年以下であるものについては,期限のとおり弁済がなされなければ,債権者にとって支障を生ずることが通常であり,したがって,債権者が長くその請求を怠ること及び債務者が長くその弁済を怠ることが少なく,かつ,その額も通常多額ではないから,債務者が長くその受取証を保存することがまれであるため,5年の短期消滅時効を定めたものである。本件受信料債権は,本件受信契約という基本契約に基づく支分権であり,日本放送協会放送受信規約のとおり,月額が定められ,2か月毎に支払をなす金銭債権であるから,上記の趣旨に合致する債権であり,民法169条所定の「年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権」に該当することは明らかである(東京高等裁判所平成24年2月29日判決・判例時報2143号89頁参照)」

(被上告人の主張に対し)
「被上告人は,本件受信料債権が,①1年の短期消滅時効を定めた民法174条2号の「自己の労力の提供…を業とする者の…供給した物の代価に係る債権」に当たる旨,②2年の短期消滅時効を定めた民法173条1号の「生産者…が売却した…商品の代価に係る債権」ないし同条2号の「自己の技能を用い,注文を受けて,物を製作…することを業とする者の仕事に関する債権」に当たる旨主張する。しかしながら,放送の性質等に照らし,上告人を民法174条2号の「労力者」や民法173条1号の「生産者」と解することは困難である。また,上告人の業務の性質・内容(旧放送法7条[新放送法15条],旧放送法9条[新放送法20条]等参照)からして,上告人が民法173条2号の「自己の技能を用い,注文を受けて,物を製作」することを業とする者に当たると解することも困難である。したがって,本件受信料債権が民法174条2号ないし173条1号及び2号の債権に当たるとする被上告人の主張は採用できない。」


【雑感】
・この争点はアコムが過払利息は民法169条の定期給付債権に該当し,5年の短期消滅時効にかかるというおよそ認められない主張をして以来,他の事案でも適用があるかについて,私が非常に関心をもっている分野です。

・被上告人が5年以外の短期消滅時効の主張をしてくれたことから,他の短期消滅時効のことも判断してくれているので,短期消滅時効全体のことを総合的に考えることができます。

・NHK放送受信料についての高裁上告審判決なので,非常に重要な判決といえます。
同種事件は各地で提起されていることから,おそらくいずれ最高裁の判断が言い渡されると思われます。NHK放送受信料が5年の定期給付債権に該当するという判断が最近増えてきていることから,個人的には最高裁でこの判断が覆る可能性は低いと思います。



※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2012-12-27 23:50 | 消費者問題