とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【最高裁】CFJ不動産担保切替事案最高裁初判断②

【CFJ不動産担保切替事案最高裁初判断②】

・以前,【7月26日付当ブログ】で紹介させていただいたとおり,本日7月31日午後1時30分より最高裁で無担保取引の下で発生していた過払金がその後の不動産担保取引の貸付金に充当されるかという無担保・不動産担保一連性ついての弁論が開かれました。


【判決期日】
・判決期日は平成24年9月11日午前10時30分に指定されました。


【判決予想】
・残念な結果が予想される本判決ですが,判決がどのようなものになるか楽しみではあります。

・まず,最高裁が弁論を開いた今回の事案はいずれもCFJの事件です。CFJの不動産担保取引はいずれも証書貸付の形式なので,今回の判断は無担保リボと不動産担保証書貸付の事案についての判断です。
 その意味では無担保リボと不動産担保リボの形式が多いアイフルやアコムの事案に直接適用される判断が出されるかは不明です。

・希望的観測としては,最高裁は性質の違う取引は原則として一連性を認めず,「特段の事情」がない限り分断だと判断し,その「特段の事情」の有無を判断をさせるため原審に差し戻すということは考えられなくはありません。それで原審の「特段の事情」の判断次第では一連性も認められる可能性はあります。
 しかし,最高裁もこの点はわかっているはずなので,おそらくこのような判断はせず,無担保リボと不動産担保リボにも適用がある判断を示すと考えられます。
・一番怖いのはこの判決の書き方次第で,証書貸付と証書貸付,証書貸付とリボ,事業者ローンと無担保取引のような性質の違うものすべてにまで射程が及ぶ判決が出る可能性があることです。
 こうなると取引の長いもので契約の性質が少しでも変わると,以前の取引の下で生じた過払金はすべて消滅時効にかかるということも起こりえるので,今回言い渡される最高裁判決で消費者側の負けは負けとしても,判決の書き方に注目したいところです。


・最高裁判決の内容と分析は【こちら


※上記の意見・判決などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2012-07-31 22:50 | 最高裁

【過払い論点】貸付停止(中止)措置と最高裁平成21年1月22日判決にいう「特段の事情」の存否

【貸付停止(中止)措置と消滅時効】
・アコム・プロミス(現:SMBC)・シンキ・しんわなどが,本主張を行っています。

・消滅時効について判示した最高裁平成21年判決(※)が「過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。」と判示したため,貸金業者は貸付停止措置をとったことが最高裁平成21年判決にいう「特段の事情」に該当すると主張するものです。
・この主張が認められると消滅時効の起算点が最終取引日ではなく,貸付停止措置をとったときから時効が進行するため,過払請求をしたときから10年分しか過払請求ができないことになり,取引の長い依頼者の案件だと大きな差がでることになります。


【※最高裁平成21年判決】
・最高裁平成21年1月22日第一小法廷判決・民集第63巻1号247頁
(事件番号:最高裁判所平成20年(受)第468号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=37212&hanreiKbn=02


【本争点をめぐる高裁レベルの裁判例】
・本争点について判断を示した高裁レベルの裁判例を紹介します。
地裁判決はたくさんありますが,あまり価値があるとは思えないので省略します。


(消費者側敗訴判決)
・大阪高裁平成23年7月5日第8民事部判決【アコム】
(事件番号:大阪高等裁判所平成23年(ネ)第569号,第1026号)

・東京高裁平成23年9月15日第2民事部判決【プロミス】
(事件番号:東京高等裁判所平成23年(ネ)第317号)
…なお,この判決は平成23年9月16日付で更正決定がなされており,控訴人と被控訴人の取り違えが多数あるという大変お粗末な判決です。

・福岡高裁平成24年6月21日第5民事部判決【しんわ】
(事件番号:福岡高等裁判所平成24年(ネ)第207号)


(消費者側敗訴判決の主な理由)
・当初は借入れと返済を繰り返していたがその後長期間返済のみしていること,返済をした際受領したATMのご利用明細書のご利用可能額欄には「0千円」と記載されていたことから借主も貸付停止措置がとられたことを認識しており,最高裁平成21年判決にいう特段の事情がある。
・基本契約書に「限度額にかかわらず、貸主の都合により限度額の減額もしくは「貸出を中止されることがあることを承認します。」等の文言があることから,借主は,取引継続中であっても新たな与信・貸出が中止されることをあらかじめ承認していたこと


(消費者側勝訴判決)
・東京高裁平成23年6月20日第22民事部判決(加藤新太郎裁判長)【プロミス】
(事件番号:東京高等裁判所平成23年(ネ)第2166号)
・重要な事実認定として「控訴人は貸付対象として65歳もしくは69歳までという年齢条件を掲げているとするが,昭和2年6月22日生まれの被控訴人は平成6年6月2日当時67歳の直前であるにもかかわらず,新たな借入がされていること,関係証拠によれば,控訴人は70歳以上の者に対しても新たな貸付けをしていることが認められる(甲2ないし7)。
・以上によれば,平成6年6月2日の借入を最後に新たな借入を行わないとの合意がされたことを認めるに足りる証拠はなく,また被控訴人の年齢から今後の貸付がされないことが明らかであるとは言えず,控訴人と被控訴人との取引について上記特段の事情があると認めることは困難というほかない。」と判示し,老齢による再貸付の期待なしというもっともらしい理由の貸金業者の主張を著名な裁判官が否定しています。

・仙台高裁平成24年3月14日第3民事部判決【アコム】
(事件番号:仙台高等裁判所平成23年(ネ)第456号)
事実認定の問題として,本件取引を被控訴人の審査部に移管した上で,貸倒損失として計上する旨の処理をしたことをもって,平成21年最高裁判決の特段の事情はないとしている。審査部送りという事態があってもそれは貸金業者の内部的処理にすぎないことを重視したものと思われます。

・福岡高裁平成24年4月20日第4民事部判決【しんわ】
(事件番号:福岡高等裁判所平成24年(ネ)第99号)
「継続的金銭消費貸借取引において発生した過払金返還請求権の消滅時効については,特段の事情がない限り,当該取引の終了時点から進行するとされ,本件においては,特段の事情が認められるためには,本件措置が採られたというだけでなく,それを被控訴人が認識したことにより法律上の障害がなくなって消滅時効が進行すると解される(東京高裁平成23年(ネ)第317号事件の判決)」が,本件では,被控訴人が本件措置を認識したことを認めるに足りる証拠はない。かえって,被控訴人は,本件措置が採られた平成11年8月当時も,滞りなく返済を続けており,本件措置が採られた旨の通知を受けたことやそれ以降に新たな借入申込みをしていないから借入れを拒絶したこともない旨述べていることからすると,被控訴人は本件措置のことを知らずに本件取引を継続させているものと認められるから,上記特段の事情は認められない。」

・東京高裁平成24年5月31日第7民事部判決【アコム】
(事件番号:東京高等裁判所平成23年(ネ)第7173号)
「被控訴人(=アコム)は,新基本契約には,返済期日,返済金額が明記され,信用情報照会に同意する旨も定めされているのであるから,控訴人(=借主)は,延滞や他社からの借入れの増大が自らの信用状態の悪化に直結することを十分認識していたと主張するが,控訴人の上記期待が合理的根拠を欠くことの立証は,そのような抽象的な認識可能性を主張・立証するのでは足りないというべきである。」
・本来立証の程度については裁判所の裁量(自由心証)というべきものですが,この市村部長は他の論点でも貸金業者の立証の程度についてはかなり厳しめな態度をとっておられます。立証の問題としては本判決を引用し,貸付停止措置についての借主側の認識としては抽象的な認識可能性では足りず,明確な認識が必要としておけばよいでしょう。

・福岡高裁平成24年5月31日第3民事部判決【しんわ】
(事件番号:福岡高等裁判所平成24年(ネ)第70号)
事実認定の問題として,「継続的金銭消費貸借取引においては,借主の信用状態が回復すれば与信が再開されることも考えられるのであり,与信額が0とされても,期限の利益を喪失させて残金の一括請求や基本契約の解除をしない場合は,従前の約定に従った返済も期待できるのであり,今後,当該借主に対して新たな貸付けを一切行わないことが決定されたとまで認めることはできない。」
また,「被控訴人(=しんわ)は,控訴人(=借主)がATMにより返済をした際に交付した利用明細書に「ご利用可能額 0千円」と記載されている旨主張するが,同利用明細書のうちには,「与信枠に対するご要望はお気軽に窓口へ」と記載されているものがある(乙20,21)ことからも,この利用明細書の交付により新たな貸付けをしない旨告知されたと認めることはできない。」と判示している。
・貸金業者からATMの利用明細書に限度額が0と記載されているから借主は貸付停止措置を認識していたとする主張に対する明確な反論といえます。しんわのATM利用明細書には上記の文言が記載されているものもあり,これによれば相談すれば与信枠の回復ということもありうる文言となっていることから,利用明細書をもって貸付停止措置の認識とはいえないという判断になっています。すごく説得的な理由といえます。

・福岡高裁平成24年7月18日第2民事部判決【しんわ】
(事件番号:福岡高等裁判所平成24年(ネ)第396号)
※私が書面作成に関与した判決
・重要な判示部分「本件基本契約の上記条項は,一旦限度額の減額や貸出しの中止があった場合であっても,控訴人の都合によって,再度,限度額の増額や貸出の再開がされることも想定されていると解される(控訴人も一般論としては争わない。)」
「貸付停止措置がされた平成12年2月ころ,客観的には,当面,被控訴人に対する新たな貸付けの見込みは乏しく,被控訴人もそのことを認識していたといえるが,過払金充当合意を含む本件基本契約上,被控訴人に対する新たな貸付けの余地が否定されるものではなく,また,被控訴人が,控訴人に対する返済を継続していれば,借入残高が減額後の借入限度額を下回ったり,再度与信枠が与えられるなどして,新たな借入れが可能になるとの認識を有していたことも否定できない。」
・この判決の重要な点は①しんわは一般論として貸付停止措置後の再貸付の可能性を認めていること,なにより②いったん借主が貸付停止措置についての認識を認定されてしまっても,まじめに支払いを続けていれば再貸付の期待を持っていたとしてもおかしくないため,最高裁平成21年判決の特段の事情が認められなかった点です。


【評価】
・以上のとおり高裁レベルの判決もかなり割れており,最高裁の判断が待たれるところです。おそらく裁判官は,貸金業者がいったん貸付停止措置をとったら,現実に再貸付を行うことはないだろうと考えていると思われます。
・しかし,私が扱った事案ではいわゆる家族介入事案(子供が隠れて借金していたことを親が知り,親が店舗に直接赴いて子供の債務を全額完済させ,「もう子供にお金を今後貸すな」と言った事案)でも,半年後にC社が子供に貸し付けていたことがありました。
この事案を見てもわかるように,いったん貸付停止措置をとったとしても契約者の資産状態が良くなれば貸金業者としては売上を上げるためにお金を貸すことは普通にあるのです。こういう現実を裁判官にはぜひ知ってもらうために,貸付停止措置後に実際に再貸付をした事例を裁判所に証拠として出す方がよいでしょう。


【特段の事情の基準】
・高裁レベルの裁判例が出そろってきたこともあり,上記で挙げた最高裁平成21年判決にいう「特段の事情」に該当する場合についてそろそろ明確な基準がほしいところです。
上記に挙げた福岡高裁平成24年5月31日第3民事部判決が「期限の利益を喪失させて残金の一括請求や基本契約の解除をしない場合」でもない限り,貸付停止措置がなされたと認められないと認定していることから,この判決が一番参考になると思われます。
・要は「再貸付の期待が完全になくなった場合」がこの「特段の事情」がある場合だと考えられるため,貸金業者が①破産等の法的整理手続に入るとの通知を受けた場合,②基本契約の解除・残金の一括請求をするなど貸金業者自らが二度と貸付けをしない意思表示をした場合など再貸付の可能性が今後一切なくなった場合でもない限り,最高裁平成21年判決にいう「特段の事情」がない解すべきであるというのが妥当だと考えられます。
・最高裁は高裁レベルの判断を収集・分析している時期だと思われますので,最高裁もこれくらい厳しい判断を来年くらいに示してほしいと思います。


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by lawinfo | 2012-07-29 22:10 | 過払い訴訟論点

【最高裁】最高裁平成18年1月13日判決以降のみなし弁済規定の成否最高裁初判断①

【最高裁平成18年1月13日判決以降のみなし弁済規定の成否①】

・最高裁平成18年1月13日判決以降のみなし弁済規定の成立を認め借主側が敗訴していた件(貸金業者:旧シティズ=現アイフル)で,借主側が上告したところ,最高裁判所第二小法廷は平成24年9月28日午後1時30分に弁論を開く決定をしました。

・最高裁の事件番号:平成23(受)第764号
 
・原審判決:控訴棄却
 福岡高裁宮崎支部平成22年11月29日判決
(事件番号:福岡高等裁判所宮崎支部平成22年(ネ)第165号)

・第1審判決:請求棄却
 宮崎地裁平成22年7月7日民事第1部判決
(事件番号:宮崎地方裁判所平成21年(ワ)第16号)


【事案】
・平成18年5月1日にシティズから100万円借り入れ,その後,平成19年12月17日まで取引を続けた。
利息及び遅延利率はともに年29.2%であり,期限の利益喪失特約があった。
 借主が7回目の弁済(平成18年12月分)を遅滞したが,平成19年8月までシティズが借主に一括請求したことはなかった。


【雑感】
・さすがは宮崎県弁護士会のM先生。M先生が上告受理申立てをされていたことは知っていたので気になっていたのですが,消費者側にとってよい結果になりそうでよかったです。
・最高裁平成18年判決以降,貸金業者は任意性をはじめとする書面要件でかなりしっかり書面を改訂してきていることから,この論点は非常に難しい論点でした。
・近時過払訴訟について最高裁は弁論期日から1か月度判決期日を指定することが多いので,10月下旬付近に本争点についての最高裁の初判断が言い渡されると思われます。
(プロミスが債権譲渡事案で「認諾」しましたが,アイフルは絶対に認諾しないようにお願いしたいところです。これでアイフルまで認諾してしまうと,本当に貸金業者は今後不利益な判決が出る可能性のある事件をすべて認諾し,上告つぶしをすることが通例となりかねません。この点を注視していきたいと思います)。


【雑談】
・最高裁は近時省エネのためか,過払い訴訟の同一の論点の事件を同一の小法廷に集めるようになりました(平成22年くらいからでしょうか?)。
 そのため,悪意の受益者の論点は第一小法廷,プロミス切替案件は第二小法廷,管轄をめぐる問題は第二小法廷,本平成18年判決以降のみなし弁済の成否は第二小法廷に集められています(本件事件は当初第三小法廷に係属していたものを第二小法廷に係属替えしているほどです)。
 そのため,かつてあった第一,第二,第三小法廷の判決が次々に言い渡され,「実質的には大法廷判決!」というようなことは,過払訴訟については今後もなさそうです。
・本論点でも今後第二小法廷から(シティズ=現アイフルが認諾しない限り),次々判決が言い渡されるはずです。

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by lawinfo | 2012-07-27 22:18 | 最高裁

【最高裁】CFJ不動産担保切替事案最高裁初判断①

【CFJ不動産担保切替事案最高裁初判断①】

・以前,7月18日付当ブログで紹介させていただいたとおり,7月31日午後1時30分から最高裁第三小法廷で本件についての弁論が2事件同時に開かれます。

・最高裁がどのような判断を下すかはわかりませんが,2つの事件の中で事件番号が古く,この争点についての先例となる東京高裁平成22年9月28日第4民事部判決(事件番号:東京高等裁判所平成22年(ネ)第977号)の事案を検討してみたいと思います。

【東京高裁平成22年9月28日判決の事案】

(無担保取引)
・契約日:昭和63年3月ころ
・リボルビング方式
・利率:当初年36%→その後年28.60%
・遅延損害金率:年39.98%
・借入限度額:100万円

(不動産担保取引)
・契約日:平成10年6月16日
・証書貸付で,定額11万0100円の120回払い
・根抵当権設定
・利率:当初年18.50%
・遅延損害金率:年29.20%
・極度額:900万円

(切替)
・不動産担保の貸付金600万円から平成10年6月16日時点の無担保取引の約定残高86万3123円を控除した513万6877円を借主に交付

(その他要素)
・契約はいずれもアイク札幌支店
・アイク社員から,無担保取引よりも利率が有利であるから不動産担保に一本化するよう
 勧誘を受けて不動産担保を開始
・審査として,給与明細書・源泉徴収票・先順位残高証明書を徴求
・契約番号・会員番号とも同じ

(高裁判決の一連認定理由)
「本件における無担保取引及び不動産担保取引は,同一当事者間における無担保取引の残債務部分についての借換え及び借増しとして,事実上,1個の連続した貸付取引であると評価することができるのであるから,アイク及び被控訴人間には無担保取引から生じた過払金を不動産担保取引に基づく新たな借入金債務の弁済に充当する旨の合意が存在するものと解するのが相当である。」


【雑感】
・以上のように無担保取引と不動産担保取引ですから,当然に契約の性質は違います。しかし,①同日の切替事案であること,②無担保の約定残高を控除した差額を現実に借主に交付しているにすぎないこと,③何より,当事者の合理的意思解釈としては無担保取引と不動産担保取引は形式的には別取引であるものの,実質的にはまったく別の取引を新しく始めたという認識はなく,継続的取引をしているにすぎないという実態があります。

・この点を無視して最高裁が契約の性質が異なるからという形式的理由だけで,両取引に充当合意を認めないとすると概念法学に終始しているといわざるを得ません。
 判決が言い渡されるまでは,そんなことはない…と信じたいものです。


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by lawinfo | 2012-07-26 23:49 | 最高裁

【過払い論点】過払い訴訟における任意和解(債務承認弁済契約)の争い方①

【過払い訴訟における任意和解の争い方】
・引き直し計算をすると債務がなくなり過払金が発生している場合,貸金業者は借主と約定残高を一部カットまたは将来利息ゼロで任意和解(債務承認弁済契約)することがあります。
貸金業者の狙いは和解をすることにより,何も知らない借主に有利な条件を提示することにより,今後過払金の返還請求をさせないようにするためにあると考えられます。


【清算条項なしの任意和解】
・和解書に「本和解書に定めるほか,何らの債権債務がないことを相互に確認する」との文言(以下「清算条項」といいます)がなければ,当事者はこの和解によりすべてを清算する意思はなかったと考えることができるため,清算条項なしの任意和解によって過払金返還請求を妨げられることはあまりないと考えられます。


【清算条項ありの任意和解】
・他方,貸金業者の狙いが借主からの過払金の返還請求を妨げることにある以上,貸金業者は通常清算条項のある和解書にサインするように迫ってくるはずです。
清算条項は和解する際に通常入れられる文言で,これによって今後お互いに請求したり,請求されたりせずすべてを終わらせようという意味で使われるため,通常清算条項があれば過払金返還請求も妨げられることが多いと考えられます。
しかし,これでは法律の素人であり貸金業者から利息カット等という甘言にのせられてしまった借主が,過払金返還請求ができなくなるという重大な不利益が生じてしまいます。

・そこで,法律家としてはなんとか法律構成をしてこれを救済する道がないか考えるわけですが,まずは錯誤無効(民法95条)の主張が考えられます。


【主張の骨子】
・まず,判例上,和解契約の前提事項ないし基礎となる事項について争わなかった点に要素の錯誤がある場合は錯誤の主張ができます(大判大正6年9月18日民録23輯1342頁)。

・通常,貸金業者が任意和解をする場合は,借主に取引履歴のすべてを開示することはなく,引き直し計算の結果過払金が生じているなどということを説明することはまずありません。
借主としては債務が存在せず,過払金が発生していることを知っていれば約定残高での和解または清算条項付きの債権債務なしの和解(ゼロ和解)をするわけがありませんので,和解契約の前提事項に要素の錯誤があるといえます。
そして,引き直し計算をすれば過払いになっているにもかかわらず,約定残高の利息カットで和解した場合は「本来債務が存在しないのに債務がある和解」をしているため,実際の債務額(債務なし)と和解金額の乖離が一層大きければ大きいほどこの事実を知っていれば和解するはずはなかったといいやすくなるため,錯誤無効が認められやすい方向に働くことになると思います。

・次に,錯誤無効の主張を消費者側がすると,貸金業者から過払金が発生していれば約定残高で和解しなかったというのは,動機の錯誤であり相手方に表示していない以上認められない(※)と反論されます。しかし,動機の表示は黙示的でも足りるとされており(※),本事案でも黙示的に表示されていたと認定する裁判例もあります。


【※動機の錯誤の最高裁判例】
・最高裁昭和45年5月29日第二小法廷判決・集民第99号273頁
(事件番号:最高裁判所昭和44年(オ)第829号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=70380&hanreiKbn=02
「一般に、錯誤が意思表示の要素に関するものであるというためには、その錯誤が動機の錯誤である場合には動機が明示されて意思表示の内容をなしていること及びその動機の錯誤がなかつたならば通常当該意思表示をしなかつたであろうと認められる程度の重要性が認められることを要するものと解すべきであり」
・最高裁平成元年9月14日第一小法廷判決・集民第157号555頁
(事件番号:最高裁判所昭和63年(オ)第385号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=62387&hanreiKbn=02
「右動機が黙示的に表示されているときであっても、これが法律行為の内容となることを妨げるものではない。」

・最後に,重過失のある表意者は自ら無効を主張することはできませんが(民法95条ただし書),圧倒的な情報力及び交渉力の差のある貸金業者と借主の間で,借主に重過失があったと認定される場合はほとんどないと考えられます。


【私見】
・このような事案で錯誤無効を認めた裁判例も少ないながら存在します。
確かに,弁護士や司法書士が関与して任意和解した場合や裁判所が関与した特定調停をした場合などに比べれば,錯誤無効も認めやすい事案とはいえます。
しかし,裁判所はいったん当事者間で生じた契約の効力を否定する判決をなかなか書きたがりません。かなりの気合いの入れた書面と本人尋問くらいしないとなかなか裁判所が認めてくれないのではないでしょうか。
この争点についてもっと有利に運べるように,もう一つくらい法律構成があった方がいいように思います。
そこで,いずれ錯誤無効以外の法律構成についても考えてみたいと思います。


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by lawinfo | 2012-07-25 22:38 | 過払い訴訟論点

【過払い論点】最高裁平成18年判決以降の弁済は非債弁済①

【CFJ合同会社新主張】
・CFJは最近になって,最高裁平成18年1月13日判決(※)以降の借主の弁済は,すべて非債弁済(民法705条)であるから,平成18年判決以降の取引に過払金は発生しないという主張をし始めました。


【※平成18年判決のおさらい】
・最高裁平成18年1月13日第二小法廷判決・民集第60巻1号1頁
(事件番号:最高裁判所平成16年(受)第1518号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52404&hanreiKbn=02
・貸金業法施行規則15条2項は貸金業法の委任の範囲を超え,違法無効である。
・利息制限法所定の制限を超える金銭消費貸借取引において,期限の利益喪失特約がある場合は,債務者において,債務者において約定の元本と共に上記制限を超える約定利息を支払わない限り期限の利益を喪失するとの誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り,制限超過部分の支払は,貸金業法43条1項の任意性がない(みなし弁済規定の適用がない)。

・この平成18年判決により,みなし弁済規定の適用の余地はほとんどなくなりました。この判決後,過払請求訴訟が全国で多発し,裁判所の新受件数の約3分の1程度が過払い訴訟というくらいにまでなった歴史的な判決といえます。


【本主張の根拠】
・平成18年判決の言渡しにより,みなし弁済が成立する可能性がなくなったことは,NHKや新聞社が大々的に報道したため,平成18年1月14日には,制限超過利息を支払う義務がないことや,みなし弁済の成立可能性がほぼ存在しないことが公知の事実となった。また,過払金返還請求方法の解説本が多数出版され,インターネットでも過払金の説明サイトができ,借主は過払金返還請求ができることが知りうる状況となった。
・さらに,最高裁昭和35年4月14日第一小法廷判決・民集第14巻5号849頁や最高裁昭和35年5月6日第二小法廷判決・民集第14巻7号1127頁などから,最高裁は原則として法律・判例等の不知は認めず,特段の事情のみによって民法705条の適用の可否を判断している。
すなわち,法の不知は害するというものである。



【私見】
・法の不知は害す…久しぶりに聞きましたね。刑法の違法性の認識の議論以来ですね。
まあ,CFJも本気でこの主張をしているとは思えませんが,借主はみなし弁済の適用が事実上なくなったことも,債務の不存在も認識していなかったと言っておけばよいでしょう。

・そもそも,法律はともかく,判例を知っていることを国民に要求することはムリであるうえ,債務がないことを知らなかったからこそ,借主は平成18年判決後も支払いを続けていたわけでこの主張は通らないでしょう。
実際に債務者から話を伺うと,この平成24年7月の時点ですら「過払いという言葉を初めて知った」とか,引き直し計算をしてみると過払いが出ているのにもかかわらず,「(約定)債務があるのに,支払わなくても大丈夫ですか?」と債務整理の際に依頼者から聞かれます。
それにもかかわらず,借主がみなし弁済規定の成立可能性がなくなったことや債務の不存在を知っていたなんてよっぽどの方でもない限り,ありえないでしょう。

・というわけで,本主張は変な裁判官が認めてくれればいいなぁという程度の取るに足らない主張だと思われます。
ただ,この「変な裁判官が変な判決を出してくれればいいなぁ主張」は,最近どの貸金業者もするようになってきました。これは東京高裁第●民事部の影響でしょうか(この部はあらゆる論点で貸金業者に有利な判決を書く部です。貸金業者は普通は和解で解決したいといいますが,この部だけは判決でいいですという部があります。みなさんも気をつけましょう)。



※上記の意見・判決などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2012-07-23 22:16 | 過払い訴訟論点

【過払い論点】プロミス切替事案形式的処理の対応

【プロミス切替事案形式的処理の対応】
・クラヴィスからプロミスに切替がなされた切替事案について,クラヴィスの下で生じた過払金返還債務がプロミスに承継されるかについては,最高裁平成23年9月30日判決(※)により決着が付きました。


【※プロミス切替事案最高裁判決】
・最高裁平成23年9月30日第二小法廷判決・集民第237号655頁
(事件番号:最高裁判所平成23年(受)第516号)。
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81656&hanreiKbn=02

・その後,プロミス(現:SMBCコンシューマーファイナンス株式会社)は,上記最高裁判決が切替手続は「形式的処理」にすぎないと判示したため,その切替にかかるプロミスの振込とプロミスから借りた扱いになった金額(つまり借入れと同額の弁済の金額)は引き直し計算に入れるべきではないと主張しています。

・この主張の実益は切替時点でクラヴィスの下で過払いになっていると,借入れと同額の弁済金額を引き直し計算に入れてしまうと,充当の問題で過払金が1000円程度増えてしまう(その2回分の取引をなくせば過払金が少し減ることになる)ことにあります。

ただ,これは切替時点で過払いが出ている場合で過払いになっていない場合は金額はまったく変わりません。

・プロミスの代理人によると,プロミスが三井住友銀行の傘下に入った後,プロミスの担当者が銀行の担当者に代わると,この点をしつこく指摘されるようになったため主張しているとのことでした(代理人事務所によって主張してくるところとしてこないところがあり,統一感がないのが困りものですが…)。さすがは銀行の担当者はすごく細かいですね。


【本主張の妥当性】
・実際の資金の移動はあるため,引き直し計算書から除外する必要があるのかは疑問がありますが,最高裁が「形式的処理」を重視したからこそクラヴィス分も含めて一連計算を認めていて減縮してもそんなに金額は変わらないので,私はプロミスから指摘があれば減縮することにしています。


【弁論主義違反?】
・ここまではさして実益のある議論ではないのですが,少し法律論的に疑問のある判決をもらったので,ご紹介します。
上記で述べましたが,プロミスの代理人事務所によって,この形式的処理だから減縮すべきだとの主張をするところとしないところがあります。
私は主張がされたら減縮する方針で事件に対応してきたため,本主張をされなかった事案で減縮をしなかったところ,東京地裁の判決で突然この点について負け判決をもらいました。

私としては,これは弁論主義(※)違反ではないのかと当初は憤りました。

・しかし,よくよく考えてみると,弁論主義の対象は「事実」であって,原告の主張として,切替手続は「形式的処理」だから一連だとの主張はしていたため,弁論主義違反ではないと思いいたりました。弁論主義は当事者の一方が主張していればいいのです。
ただ,少なくとも被告が明示的に争ってもいない点を裁判所が一方的に釈明もせず(争点化せずに)判断する必要はないのではないかとは思います。

・大した問題ではないのですが.実際に学んだ学問上の法律問題が実務上も問題となりうることを示したかったもので,学問上の勉強はムダなものではありません。実務についているとふと原則論から争点について考えることがよくあります。


【※弁論主義】
・民事訴訟法では裁判の基礎となる訴訟資料の収集提出はあくまで当事者の権限かつ責任とされ,裁判所が積極的に事実と証拠を収集する職権探知主義はとられていません。

・弁論主義には学問上,以下の3つのテーゼがあるとされ,今回の件は第1テーゼに反するのではないかが問題となりえます。
第1テーゼ:当事者の主張しない事実を判決の基礎としてはならない。
第2テーゼ:当事者に争いのない事実はそのまま判決の基礎としなければならない。
第3テーゼ:事実認定の基礎となる証拠は,当事者が申し出たものに限られる(職権証拠調べの禁止)


※上記の意見・判決などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2012-07-21 22:07 | 過払い訴訟論点

【過払い論点】過払金元金と過払利息の充当方法

【争点がなくなりつつある貸金業者の流行りの主張】
・近時,アコム・プロミス・アプラス・オリコなどは,過払利息は過払金元本とは違い,後に発生した借入金債務に充当することはできないとの主張をするようになってきました。
 この考えによると,過払利息は過払金元本と別に計算され,充当されなくなる結果,過払利息発生から個別に時効が進行し,過払請求時点から遡って10年分しか過払利息は請求できないことになります(時効の起算点が最終取引日ではなくなる)。


【業者の根拠】
・最高裁平成19年6月7日第一小法廷判決・民集第61巻4号1537頁の過払金充当合意の定義
(事件番号:最高裁判所平成18年(受)第1887号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=34782&hanreiKbn=02
・上記判決は過払金充当合意を「各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,上記過払金を,弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより,弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意含んでいるものと解するのが相当である」と判示しており,この「過払金」には,過払金元本はともかく過払利息は含まない。

・大阪高裁平成22年7月23日判決
・過払金発生後の新たな貸付けは,過払金債務の弁済として行われるものではないから,民法491条は適用されず,したがって,同条を根拠として貸付金に過払利息,過払金元本の順に充当するということもできない。
・過払金のみならず過払利息をも新たな借入金債務に充当することは,実質重利になり,また,当事者の意思の推定も困難であるから,許されない。

・付随論点:過払利息の消滅時効の期間
・過払利息は過払金元金という基本権に基づき,過払金発生から一定期日が経過したことにより具体的に発生する権利(支分権たる利息債権)であり,民法169条により5年の短期消滅時効にかかるか。


【高裁レベルの借主側勝訴の判決】
・東京高裁平成24年4月26日第7民事部判決(裁判長:市村陽典裁判官)
(事件番号:東京高裁裁判所平成23年(受)第8109号)
「制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生し,かつ,同項の適用が認められないときは,過払金元本のみならず,過払利息もその後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解するのが合理的であり,両者の意思を合理的に解釈すれば,債務者である顧客のために利益が多い過払利息,過払金元本の順に新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解するのが相当である。」
「過払利息債権が民法169条に規定する定期給付債権に該当するということはできないから,この点においても,被控訴人(=アコム:著者注)の主張に理由がないことは明らかである。」

・大阪高裁平成24年4月25日第6民事部判決【貸金業者:プロミス】
(事件番号:大阪高等裁判所平成23年(ネ)第3634号)
「過払金返還債務の元金と元金に対する法定利息がある場合において,当事者間に特段の充当合意がないときは,過払金返還債務の元金のみならず,元金に対する法定利息についても,その後発生する貸付金債務に充当して全体を一括精算することが当事者の合理的意思に合致するものと解するのが相当であるから,控訴人(=プロミス:著者注)の主張を採用することはできない。」

・名古屋高裁平成24年5月25日民事第1部判決【貸金業者:オリコ】
(事件番号:名古屋高等裁判所平成24年(ネ)第151号)
「貸金業者が,営業として行う金銭消費貸借取引において借主から悪意で受領した過払金については,それに対する利息(過払利息)についても,後になす貸付けに対する弁済に充当されるものとすることが,当事者の合理的意思に適うと解するのが相当である。
 また,借受金の弁済に当たり,過払金元本と過払利息のいずれを先に充当するかという問題は,債権者及び債務者の利害が,弁済金を費用,利息,元本のいずれに充当するかの問題と類似するものであるから,民法491条の趣旨に照らして,過払金元本よりも過払利息が先に充当されると解するのが相当である。」


【私見】
・最高裁平成15年7月18日第二小法廷判決・民集57巻7号895頁
(事件番号:最高裁判所平成13年(受)第1032号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52323&hanreiKbn=02
「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けとその返済が繰り
返される金銭消費貸借取引においては,借主は,借入れ総額の減少を望み,複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常と考えられることから,弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果当該借入金債務が完
済され,これに対する弁済の指定が無意味となる場合には,特段の事情のない限り,弁済当時存在する他の借入金債務に対する弁済を指定したものと推認することができる。」
・本判決の趣旨からすれば,当事者の合理的意思解釈からは,過払金元本と過払利息は別個として扱えば複数の権利関係が発生するため,そのような事態が生じることは望まないため,過払利息も新たな貸付金に充当されるというべきでしょう。

・実質的に重利を認めることになるとする大阪高裁の判決はかなりひどいといわざるを得ないでしょう。この点,福岡高裁宮崎支部平成23年2月28日判決(事件番号:福岡高等裁判所平成22年(ネ)第244号)は,「過払金の利息を過払金の元本に先立って借入金債務に充当することは,利息を元本に組み入れた上これについて新たな利息の発生を認めるものではないから,かかる充当の順序によると重利を認める結果になるとの控訴人の指摘も理由がない」としており,妥当な判断だと思います。

・また,私も何件か判決を頂いた東京高裁第7民事部の市村部長の判決は簡素ながらすごく納得できる判断をされており,市村部長の判決は心強い判決です。なにより,利率の付け方の判例(※)からわかるように,最高裁は過払金元本と過払利息の別立計算という面倒な考えを採用するとは到底おもえません。
そのため,この点で譲歩する必要はまったくなく,仮に敗訴すれば控訴・上告してこの論点に決着がついてほしいものです。貸金業者側は上告されて最高裁の判断が示されることを怖れていると思われるので,貸金業者が高裁で敗訴しても上告はしないと思われます(何でも上告してくるC社は除く)。



【※利率の判例】
・最高裁平成22年4月20日第三小法廷判決・民集64巻3号921頁
(事件番号:最高裁判所平成21年(受)第955号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=80121&hanreiKbn=02

※上記の意見・判決などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2012-07-20 21:32 | 過払い訴訟論点

利息制限法所定の範囲内への利率変更に伴う取引の分断(充当合意の否認)

【争点がなくなりつつある業者の最新の主張】
・つい最近,オリエントコーポレーションから新しい主張をされました。
それは「利率の変更に伴う取引の分断」で,中断期間がなくても利息制限法所定の利率を超える利率による貸付けまでの取引と,利息制限法所定の利率の範囲内の取引とで中断期間がなくても,取引が分断され過払金について別個に計算されるべきというものです。


【論拠】
・この主張の根拠は,貸付けの利率という金銭消費貸借契約のうえで最も重要な契約要素を異にしていて,貸金業者は貸金業法の改正に伴い,貸付利率を下げたにもかかわらず,従前より取引を継続している債務者から債務の弁済を受けることにより,かえって自らの過払金が増大していくという結果を招かざるを得ないこととなり,結論が不当ということのようです。


【私見】
・まあ,オリコも本気とは思えない主張ですが,一応主張しているんだろうなという程度の主張です。
反論としては,①そもそも利率の変更は「契約内容」の変更ではなく,「契約条件の一部」の変更であり,契約としては同一の基本契約に基づく一つの取引であり,中断期間もない(完済していない)以上別個に過払金を計算する理由とはならない。
②仮に,利率の変更に伴い一応契約書を巻き直したとしても,それは形式的に契約書を作成したにすぎず,従前の基本契約の延長線上でなされたもので,最高裁平成20年1月18日第二小法廷判決が挙げる要素からしても,利率の変更前後の取引は事実上1個の連続した貸付取引であると簡単に反論しておけば足りるでしょう。


・この貸付け利率が利息制限法の範囲内になってからの取引については,近時,貸金業者から,悪意の受益者性を否定する新たな主張がなされています。

・こちらの方が重要だと思いますので,いずれ検討したいと思います。


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by lawinfo | 2012-07-19 21:37 | 過払い訴訟論点

【最高裁】無担保・不動産担保一連性の最高裁初判断

・CFJ合同会社が不動産担保切替事案で高裁で敗訴し,上告受理申立てをした件で,平成24年6月8日,最高裁判所第三小法廷は以下の2事件について弁論を開く決定をしました。

・東京高裁平成22年9月28日第4民事部判決
(事件番号:東京高等裁判所平成22年(ネ)第977号)
 借主側代理人はクレサラ界の大御所東弁のN大先生
・広島高裁岡山支部平成24年1月19日判決
弁論期日は,平成24年7月31日午後1時30分です。


・今回問題となるのは,無担保取引と不動産担保取引の過払金を一連計算ができるか否かについてです。
両取引は形式的には契約形態が異なるものの,同日切替(または数日後の切替)でなされることが多く,契約の性質という形式的問題を重視するのは,当事者の合理的意思に反すると考えられます。
・しかし,借主側が控訴審で勝訴した件について,最高裁が弁論を開くということは最高裁が原審の判断を見直す可能性が極めて高いということです(※)。
そのため,8月終わりか9月には,最高裁は貸金業者側に有利な判断を言い渡すと予想されます。


【※民事訴訟法319条】
「上告裁判所は、上告状、上告理由書、答弁書その他の書類により、上告を理由がないと認めるときは、口頭弁論を経ないで、判決で、上告を棄却することができる。」

・この319条の反対解釈により,上告に理由があると判断したときは最高裁判所は弁論を開き,当事者の意見を聞く必要があります。ただ,最高裁が上告を棄却する場合でも,弁論を開く場合がごくごく稀にあります。

・そもそも最高裁は下級審とは異なり,書面審理が中心であるため,最高裁が口頭弁論を開くことはほとんどありません(民事事件に限っていうと,上告または上告受理申立ては年間約3500件程度なされていますが,最高裁が弁論を開くのは40件~60件程度で,確率としては1%から2%という非常に狭き門です。そのため,上告人代理人となり,弁論が開かれることは弁護士にとって「一生に一度のこと」と言われます…実際には何度も勝ち弁論をやっている先生はいるのですが)。

なお,刑事事件の死刑判決が予想される事案では,事件の性質上原審判決を維持する場合でも,最高裁は弁論を開くのが慣例です(人の命を奪う判決を書く死刑判決はそれくらい重要なものだということでしょう)。


※上記の意見・判決などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2012-07-18 00:08 | 最高裁