とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【否認権】クラヴィス破産管財人からプロミスへの否認権行使問題①

【クラヴィス破産管財人からプロミスへの否認権行使問題】

・平成24年7月5日,株式会社クラヴィス(旧商号:リッチ株式会社・株式会社ぷらっと・株式会社クオークローン・株式会社シンコウ・東和商事株式会社)が大阪地方裁判所より破産手続開始決定を受け,破産管財人が選任されました。
(事件番号:大阪地方裁判所平成24年(フ)第3650号)

 その後の平成24年8月29日(大阪)・9月5日(東京)の破産管財人による債権者集会の資料がアップされています。この資料には非常に重要なことが書かれています。
URL:http://www.clavis-kanzai.jp/guildsiryo/20120906.pdf

・この債権者集会資料によると,切替・債権譲渡事案における過払金返還債務について,クラヴィスはプロミスに対し,業務提携契約に基づき,平成20年1月から平成24年5月までの間に多額の求償金を支払ったようです。また,平成21年4月に当時のプロミス(現:SMBCコンシューマーファイナンス株式会社)が当時のネオラインキャピタル株式会社(現:クロスシード株式会社)に対し,クラヴィスの株式を譲渡しましたが,その際にクラヴィスがプロミスに対して負っていた求償金支払債務について,ネオラインが連帯保証していたため,ネオラインが保証債務に基づきプロミスに支払いをした後で,クラヴィスがネオラインに対し,平成21年6月から平成23年3月までの間に多額の求償金を支払ったようです。
 顧客に対する過払金返還債務の負担に加えて,この両社への支払いが資金繰りを圧迫することになったとの記載があります。

・そして,管財人としては,まず,クロスシードに対し,平成24年8月28日,否認権(※)を行使して,3億円の返還(明示的一部請求)および債権譲渡登記の否認の登記手続を求めて大阪地方裁判所に訴訟を提起したそうです(事件番号:大阪地方裁判所平成24年(ワ)第9262号)
・クロスシードについては訴訟を提起したものの,この債権者集会時点では,SMBCコンシューマーファイナンスとは返還の交渉を行っているのみのようです。


【※否認権(破産法160条)】
 
・次に掲げる行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一  破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
二  破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立て(以下この節において「支払の停止等」という。)があった後にした破産債権者を害する行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。


【雑感】
・このクラヴィスをめぐるプロミスとネオラインの厚いベールに覆われていた一連の経緯がクラヴィスの破産手続で明らかになったとは意味のあることだと思います。

・このクラヴィスはもともとプロミスの完全子会社でプロミスの事業再編の一環として閉鎖することを目的として,プロミスへの顧客の切替のため,切替手続や債権譲渡をすることになった会社です。
 つまり,プロミスとしては当然に支払不能であったことを承知していたわけで,それにもかかわらず,平成24年5月まで優先的に資金を回収していたことになります。
・顧客の過払い請求に対しては数パーセントしか支払わなかったクラヴィスですが,この2社にだけは求償金支払債務を支払っていたことは非常に許しがたい行為といえます(2社ともクラヴィスの経営権を手に入れていた会社で,実質的には一体の企業だったといえます)。
・そのため,破産管財人は否認権の行使に際し妥協することなく,この2社から回収できる限りのお金を回収し,過払い債権者に配当すべきでしょう。

・いずれにしても,このクラヴィスの破産手続の動向は強い関心をもって,注視していく必要があります。


※上記の意見・内容などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2012-09-28 23:09 | 時事ネタ

【過払い論点】クラヴィス→プロミス債権譲渡事案①

【プロミス債権譲渡事案】

・このブログで何度もとり上げた「プロミスの債権譲渡事案」についてです。

・最高裁平成24年6月29日判決にはどうしても納得できず,事案の違いを主張して争っています。

・最高裁平成24年2月3日上告受理決定及び弁論指定決定,最高裁第二小法廷は,平成24年2月3日,債権譲渡事案(平成23年(受)第1941号)において,借主側が敗訴した高裁判決に対し,借主側が上告受理申立てをした件で,同年3月30日に弁論を開く決定をしました。その後,同事件でプロミスは上告人の請求を認諾するとの答弁書を提出し,同日の弁論は認諾の効果を認め,終結しました。
・次に,最高裁第二小法廷は,平成24年6月29日債権譲渡事案でプロミス勝訴の判決を言い渡しました(平成24年(受)第539号)。
したがって,最高裁は同一小法廷で2つの最高裁の判断が存在します。

・最高裁第二小法廷2つの判断の整合性
この点,最高裁第二小法廷が1941号事件から数か月後に判断を変えたとする考えもありえますが,最高裁は調査官室で同一事案をきちんと調査して事案を分析しながら判決を言い渡すのが通例ですから,このようなわずかな期間で判断を変えたという評価は現実的ではなく,法的安定性を著しく害するといえます。
とすれば,1941号事件と539号事件は事案が異なるというべきであり,539号事件では借主が弁済以外何ら行為を行っていないことは最高裁の判決文から明らかであるから,弁済以外の行為を行っている事案については1941号事件同様,受益の意思表示を行ったと最高裁が認定する可能性は十分あると考えてきました。

・以上のように考え,SMBCコンシューマーファイナンス株式会社とプロミス債権譲渡最高裁判決後も争ってきました。
 その中で,この債権譲渡事案について,SMBCの代理人からいくつかの点について回答があったのでご紹介します。
 1941号事件では,債権譲渡後基本契約を締結した事実はない(つまり,「申込書(店頭用)」は提出されていない)。539号事件では,債権譲渡後基本契約が締結された(つまり,プロミスに申込書が提出されている。ただし,この事実が法廷に顕出されたかどうかは不明。判決文を見る限り顕出されていないように見える)。
こうなると,私がこれまで述べていた債権譲渡後の申込書を受益の意思表示とみる説は成り立たなくなります。

・では,結局上記2つの事件をどう整合的に説明するかが問題となります。
①そもそも,1941号事件では弁論を開いただけで判決になればプロミス勝訴だった。

②よくよく見てみると,1941号事件の弁論指定決定をした最高裁判事と539号事件の判決を書いた最高裁判事は一人だけ異なっています。
この間に退官したのが検察官出身の古田佑紀裁判官,その後平成24年4月11日に新しく入ったのが同じく検察官出身の小貫芳信裁判官。
 この最高裁判事の構成の変更により多数決が異なり,結論が異なったとすれば合理的に説明できます。
ただ,いくらなんでもこの短期間に結論が180度変わるのは法的安定性を著しく害するとしかいえません(最高裁としては,1941号事件は判決ではないから,法的安定性を害することはないというんでしょうけど)。


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by lawinfo | 2012-09-24 22:48 | 過払い訴訟論点

【最高裁】貸金業者による最高裁弁論指定後の認諾対応

【貸金業者による最高裁弁論指定後の認諾対応】

・9月18日付【当ブログ】で貸金業者の最高裁での逆転敗訴が予想される弁論指定行為後,貸金業者認諾する情勢になっていることを紹介しました。

・消費者側の対応については記載したとおりしかないと考えられますが,最高裁判所としてこのような認諾行為に対して何らかの策を講じてほしいところです。

 最高裁としても弁論を開くということは判断を積極的に示したいからであり(当事者のためではなく,同種事件を最高裁に上告して最高裁の手間を増やしてほしくないという最高裁側の事情で),最高裁としても貸金業者の「上告つぶし」を防ぐ手段を日本最高の頭脳集団として真剣に考えてほしいところです。

・まったく対応策がないかというといくつかの方法が考えられます。

①まず,最高裁の弁論で貸金業者の認諾を何らかの理由で無効だという方法で実際に消費者系の先生たちはこのような主張をされている方もいます。
私としても,先生方の無念いかばかりか…という気持ちではありますが,最高裁として,認諾の無効を認めることはないでしょう(このような主張をされている先生も不当性をアピールされているだけでしょう)。


②次に,現実的な方策として上告理由のない弁論期日指定というやり方が考えられます。
民事訴訟法319条は「上告裁判所は、上告状、上告理由書、答弁書その他の書類により、上告を理由がないと認めるときは、口頭弁論を経ないで、判決で、上告を棄却すことができる。 」と規定しており,最高裁で高裁判決を逆転させる場合は,最高裁は弁論期日を指定します。
しかし,この条文は上告を理由がないと認めるときは…上告を棄却することが「できる」と規定しているだけで,弁論を開いてはいけないとは規定していません。
そのため,貸金業者側が高裁で敗訴し,貸金業者側が上告受理申立てまたは上告した後,最高裁が弁論期日を指定し,弁論を経たうえで上告棄却判決を言い渡すというものです。
この方法によれば,貸金業者としては最高裁は貸金業者が敗訴した高裁判決を見直すだろうと予測し,最高裁で認諾することはないと考えられるため,貸金業者にとっては予想外の敗訴判決が言い渡されることになります。


③その他の方法として,複数論点で貸金業者が上告受理申立てをした場合に,理由があるものと理由がないものがあっても,両方受理したうえで,理由があるものについては弁論を開いて逆転させ,理由のないものについては貸金業者の実質的な敗訴となる判決内容にする方法です。
民事訴訟法318条3項は「第一項の場合において、最高裁判所は、上告受理の申立ての理由中に重要でないと認めるものがあるときは、これを排除することができる。」と規定しており,最高裁の実務は複数論点で重要でない方の論点はこの規定により排除するのが通例です。

しかし,この条項もあくまで「排除することができる」としているだけで排除しなければならないとは規定していません。
そのため,このように判断することも不可能とはいえません。


④以上述べたやり方は法律上そうできなくはないというもので,最高裁としてはこのようなイレギュラーなやり方はあまり積極的にやりたがらないと思われます。
そこで,現実的な方法としてはCFJ不動産担保切替事案のように確かに上告された事件に限っては貸金業者に有利ではあるが、その他の大部分の貸金業者にとっては逆に不利になるという事案で,判決を下すという流れになるのではないかと(勝手に)予想しています。
法廷意見】 【補足意見


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by lawinfo | 2012-09-21 22:36 | 最高裁

【貸金業者の対応】イオンクレジットサービスの今後

【イオンクレジットサービスとイオン銀行の経営統合】

・イオンクレジットサービス株式会社と株式会社イオン銀行が経営統合することを両社の取締役会で決定したそうです。
 手続きは,まず,①株式交換により,イオン銀行がイオンクレジットの完全子会社となり(2013年1月1日予定),その後,2013年4月1日,イオンクレジットサービスがイオン銀行に対し,クレジットカード事業に関する権利義務を承継する会社分割を行うなどして,持株会社化するようです。
URL:http://www.aeoncredit.co.jp/aeon/corp/news/data/news120912_2.pdf

・もともと過払金の支払いのよかったイオンクレジットサービスが銀行と経営統合することで資金力が一層増すと考えられるので,消費者側としてはいいニュースといえると思います。
 ただ,イオン銀行に引き継がれる権利義務のうち,「当事者が別途合意した権利義務を除きます。」として一部除外されていることが大変気がかりで,これが過払金返還債務を指す可能性もあるため,今後の発表を注視する必要がありそうです。

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by lawinfo | 2012-09-19 22:46 | 貸金業者の対応

【過払い論点】最高裁平成18年1月13日判決以降のみなし弁済規定の成否最高裁初判断②

【最高裁平成18年1月13日判決以降のみなし弁済規定の成否】

・平成18年以降に取引が開始された事案における「みなし弁済の成否」についての最高裁
の弁論が平成24年9月28日に開かれるということについては,7月27日付当ブログで紹
介させて頂きました。

 しかし,旧シティズ(現アイフル)は上告人(借主)の請求を認諾する旨の平成24年9月1
4日付答弁書を最高裁に提出したとのことです。
 これでアイフルが最高裁の弁論で被上告人の答弁書を陳述すれば,最高裁の本争点に
ついての判断が示されないことになります。同種事案についても同様の判断を今後し続け
るものと思われます。

・このことで思い起こされるのが「プロミスの債権譲渡事案」です。
 ただ,いろいろ調べてみるとこの貸金業者による弁論期日指定後の認諾の歴史は,ずっ
と前からあったようです。
 私が見つけた限りでは,三洋信販のみなし弁済が問題となった事案で,平成17年10月
17日に認諾(三洋信販の貸金返還請求反訴事件については放棄)しているようです。
(事件番号:最高裁判所平成17年(オ)第412号,平成17年(受)第471号)

・今後とも貸金業者に不利な判断が予想される最高裁案件は認諾され続けることが予想され
ます。これに対して消費者側としては,最高裁の弁論指定決定を積極的に公表して下級審に
事実上の影響を与えるしかないですかね。

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by lawinfo | 2012-09-18 22:39 | 最高裁

【貸金業者の対応】貸金業者ベルーナの動き①

【株式会社ベルーナの会社分割】

・いまさらですが,過払金支払いのよかった株式会社ベルーナが会社分割をし,子会社の株式会社サンステージに金融サービス事業を移すようです。
URL:http://www.belluna.co.jp/ir/pdf/J/20120827+kaisyabunkatsuJ.pdf

・ベルーナの意図はわかりませんが,これが不良部門を切り離すためだとすると,今後ベルーナの支払いは悪くなるかもしれませんね。

・今後の動向に注意していきたいです。

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by lawinfo | 2012-09-14 22:58 | 貸金業者の対応

最高裁平成18年判決以降の弁済は非債弁済②

【CFJ合同会社新主張:非債弁済】

・非債弁済の主張について消費者側勝訴の判決がちらほら見られるようになってきました。
判決の理由づけは債務が存在しないことを借主が認識していなかった,または,認識していたとみられる証拠はないというものがほとんどで判決書の行数も数行程度で裁判所もほとんど相手にしていません。その意味で,7月23日付当ブログで予想したとおりです。

・ただ,CFJとしては非債弁済を立証するために本人尋問の申請をやっているという話もちらほら聞きます。しかし,CFJの支配人に聞いたところ,今のところ裁判所が人証申請を認めたものはないとのことでした。
 そこで,CFJが仮に人証申請をしてきたとしても,借主の陳述書を作成したうえで借主側としては「人証の必要性はない」と意見を言っておけば十分でしょう。まあ,裁判所に人証が認められたところで借主が崩れる可能性はほとんどないので,別に人証をしてもいいのですが…。

・結局,CFJもどの程度本気でこの主張をしているのかもわからない主張で,おそらく悪意の主張が最高裁平成23年12月1日判決(※)以降どの業者も本気でしなくなったことから,代わりに何か争っておこうという程度のものだと思います。
 逆にいうと,この論点で勝っても価値がないので勝訴判決の紹介はしないこととします。


【※最高裁平成23年12月1日判決】
・最高裁平成23年12月1日第一小法廷判決・集民第238号189頁
(事件番号:最高裁判所平成23年(受)第307号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81798&hanreiKbn=02
「リボルビング方式の貸付けについて,貸金業者が17条書面として交付する書面に確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載をしない場合は,平成17年判決の言渡し日以前であっても,当該貸金業者が制限超過部分の受領につき貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有することに平成19年判決の判示する特段の事情があるということはできず,当該貸金業者は,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。」

※この判決が言い渡されるまでは,ほとんどすべての貸金業者が悪意の受益者性を争っていました。貸金業者は悪意の受益者性を否定するため,大量のATM利用明細等を証拠として提出していました。この証拠を小出しにすることで,裁判所が結審するのを妨害し,過払金の返還を先延ばしする手段となっていました。


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by lawinfo | 2012-09-13 22:06 | 過払い訴訟論点

【最高裁】CFJ不動産担保切替事案最高裁初判断④

【CFJ不動産担保・無担保一連性最高裁初判断】

・9月11日付の【当ブログ】で本判決の法廷意見を紹介しましたが,この最高裁判決で意味があるのは田原睦夫判事の補足意見なので,今回はこの補足意見を検討します。


【田原睦夫補足意見】
「1 当初のリボ契約の後に締結された担保権付契約が,同様にリボ契約である場合には,両契約間の基本的な相違は,担保権設定の有無の点だけであるから,両契約に基づく各取引を事実上1個の連続した貸付取引と評価することができるか否かは,法廷意見の引用する当審の判例に従って判断することに何ら問題はない。

2 問題となるのは,担保権付契約が,本件のように1回に確定金額を貸し付け,その返済方法は,約定の返済日に約定の金額を分割弁済する旨の契約である場合である。
かかる担保権付契約は,法廷意見が指摘するとおりリボ契約とは契約形態や契約条件が大きく異なるのであり,殊に契約により貸付けがなされた後に,継続的に新規の貸付けとその弁済が繰り返されることが予定されていないという点において,同契約関係をもって継続的取引とは解し得ないのであって,かかる取引とリボ契約に基づく継続的取引とを事実上1個の連続した貸付取引と評価することは相当でないというべきである。

3 もっとも,法廷意見にて指摘するとおり,従前のリボ契約が解消され,リボルビング方式によらない担保権付契約が締結された場合に,当該担保権付契約が締結されるに至る経緯やその契約内容,その後の取引の実情によっては両取引が事実上1個の連続した貸付取引と評価される場合があり得る。例えば,担保権付契約による融資は確定金額による1回の融資ではあるが,一定額以上の元本の返済がなされれば,約定の返済日や返済金額に変更を加えることなく一定の限度額までの追加貸付けが予定されているような場合には,担保権付契約それ自体が継続的取引契約の要素を含んでいるところから,継続的取引契約たるリボ契約に係る取引と上記担保権付契約に係る取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価できる余地がある。
また,貸主の合併等の理由により,同一貸主との間に複数のリボ契約やその他の金銭消費貸借契約を締結している場合や,同一貸主に対して夫婦や親子等経済的に一体の関係にある者が複数のリボ契約やその他の金銭消費貸借契約を締結している場合に,専らそれらの取引を一本化する趣旨で本件と同様の担保権付契約が締結されるなど,同一貸主に対する従来の自らの債務又は経済的に一体の関係にある者の債務を返済するために同契約を締結したと評価されるときには,従前のリボ契約に係る取引と上記担保権付契約に係る取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価できる余地がある。」


【評釈】
・まず,この判決で無担保リボルビング取引と不動産担保証書貸付取引の一連性が認められない理由は「契約形態や契約条件において大きく異なっている」ことが重視されており,結局は形式面に着目し,当事者の認識が不動産担保取引は無担保取引の延長線上で行われているという実質をまったく考慮に入れていない点は,まさに「概念法学」に終始しているといえるでしょう。

・その反面,無担保リボルビング取引と不動産担保リボルビング取引の一連性については,通常の無担保リボと無担保リボと同様の判断基準で事実上1個の連続した貸付取引と評価できるか否かで判断すれば足りることが最高裁でも確認されたといえ,この点では今後一連性が認められやすくなったといえます。

・そして,肝心の無担保リボルビング取引と不動産担保証書貸付取引の一連性は原則として認められず,「第1の契約に基づく取引が解消され第2の契約が締結されるに至る経緯,その後の取引の実情等の事情に照らし,当事者が第1の契約及び第2の契約に基づく各取引が事実上1個の連続した貸付取引であることを前提に取引をしていると認められる特段の事情」がある場合のみ例外的に一連性が認められるようになり,従来のように「同日付切替」を強調しても一連性は認められなくなりました。

・ただ,この特段の事情に当たる場合を補足意見で具体性をもたせて例示した点は,今後の下級審判決に一定の指針を与えるという意味で評価されるべきだと思います。

・最後に,この最高裁判決自体は借主側が敗訴した判決ですが,CFJの一部の例外的取引とアコム・アイフルにおける無担保リボと不動産担保リボは認められやすくなったともいえるので,借主側にとっては有利な部分もある判決だったともいえるでしょう。

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by lawinfo | 2012-09-12 22:15 | 最高裁

【最高裁】CFJ不動産担保切替事案最高裁初判断③

【CFJ不動産担保・無担保一連性最高裁初判断】

・最高裁の判断が出ましたね。まずは紹介だけです。

・最高裁平成24年9月11日第三小法廷判決(借主側敗訴)
(事件番号:最高裁判所平成24年(受)第122号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82533&hanreiKbn=02

【主文】原判決を破棄する。
    本件を東京高等裁判所に差し戻す。

【法廷意見】
「一般的には,無担保のリボルビング方式の金銭消費貸借に係る基本契約(以下「第1の契約」という。)は,融資限度額の範囲内で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることが予定されているのに対し,不動産に担保権を設定した上で締結される確定金額に係る金銭消費貸借契約(以下「第2の契約」という。)は,当該確定金額を貸し付け,これに対応して約定の返済日に約定の金額を分割弁済するものであるなど,第1の契約と第2の契約とは,弁済の在り方を含む契約形態や契約条件において大きく異なっている。したがって,上記(1)イの場合において,第2の契約に基づく借入金の一部が第1の契約に基づく約定残債務の弁済に充てられ,借主にはその残額のみが現実に交付されたこと,第1の契約に基づく取引は長期にわたって継続しており,第2の契約が締結された時点では当事者間に他に債務を生じさせる契約がないことなどの事情が認められるときであっても,第1の契約に基づく取引が解消され第2の契約が締結されるに至る経緯,その後の取引の実情等の事情に照らし,当事者が第1の契約及び第2の契約に基づく各取引が事実上1個の連続した貸付取引であることを前提に取引をしていると認められる特段の事情がない限り,第1の契約に基づく取引と第2の契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価して,第1の契約に基づく取引により発生した過払金を第2の契約に基づく借入金債務に充当する旨の合意が存在すると解することは相当でない。

【雑感】
・いずれ詳細な分析はしますが,今回は雑感だけです。
 この最高裁判決は田原睦夫裁判官の補足意見が非常に重要といえます。次回,この補足意見についてとりあげます

・無担保リボルビング取引と不動産担保証書貸付取引の一連性が認められる場合があることを最高裁が明示的に承認した判決といえます(例示された場合に該当する事案はそれほど多くはないと思いますが…)。
 また,無担保リボルビング取引と不動産担保リボルビング取引の一連性はかなり認められやすくなったといえます。不動産担保取引が証書貸付しかないCFJはともかく,不動産担保のほとんどがリボルビング取引のアコムやアイフルの取引は一連性が認められることになるでしょう。
ただし,アイフルも少ないながら証書貸付の不動産担保取引があるようです。

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by lawinfo | 2012-09-11 22:56 | 最高裁

【最高裁判決】前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合の証拠能力

【前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合の証拠能力】

・最高裁平成24年9月7日第二小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成23年(あ)第670号・住居侵入,窃盗,現住建造物等放火被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82529&hanreiKbn=02


【事案の概要】
・被告人が平成21年9月の東京都葛飾区の住宅への住居侵入,窃盗及び現住建造物放火事件(以下それぞれ「本件住居侵入」「本件窃盗」「本件放火」という。)と北海道釧路市内の住居侵入及び窃盗事件(以下「釧路事件」という。)を犯したとして起訴された事件です。
 被告人は,本件住居侵入及び本件窃盗並びに釧路事件については争わない旨述べましたが,本件放火については,何者かが上記B荘C号室に侵入して放火したことは争わないものの,被告人が行ったものではないと公訴事実を否認しました。
 被告人には,平成3年4月から平成4年5月まで15件の窃盗と平成4年3月から同年6月まで11件の現住建造物等放火(以下「前刑放火」という。)を犯したとして,平成6年4月13日に懲役8月及び懲役15年に処せられた同種前科があります。


【本事案の争点】
 本事案の争点は,本件放火事件における被告人と犯人の同一性です。
 1審は捜査段階で作成された前刑放火に関する被告人の供述調書謄本15通等の証拠申請を情状の立証として採用したが,本件放火の事実の事実を立証するための証拠としては却下した。そして,本件住居侵入及び本件窃盗並びに釧路事件についてのみ有罪とし,本件放火については無罪としました。


【原審判示事項(概略)】
・東京高裁平成23年3月29日判決
(事件番号:東京高等裁判所平成22年(う)第1714号)
「前刑放火11件の動機は,いずれも窃盗を試みて欲するような金品が得られなかったことに対する腹立ちを解消することにあり,上記11件のうち10件は,いずれも侵入した居室内において,また残り1件は,侵入しようとした住居に向けて放火したものであり,うち7件は,犯行現場付近にあったストーブ内の灯油を撒布したものである。被告人には,このような放火に至る契機,手段,方法において上記のような特徴的な行動傾向が固着化していたものと認められる。被告人は,本件放火と接着した時間帯に放火場所である居室に侵入して窃盗を行ったことを認めているところ,その窃取した金品が被告人を満足させるものではなかったと思料され,前刑放火と同様の犯行に至る契機があると認められる上,犯行の手段方法も共通しており,いずれも特徴的な類似性があると認められ,被告人が本件放火犯の人であることを証明する証拠として関連性がある。したがって,本件前科証拠のうち,これらの点に関するもの,すなわち前刑判決書謄本並びに上記前科の捜査段階で作成された被告人の供述調書謄本15通及び本件の捜査段階で作成された前刑放火の動機等に関する被告人の供述調書1通のうち本件放火と特徴的な類似性のある犯行に至る契機,犯行の手段方法に関する部分はいずれも関連性が認められ,証拠として採用すべきであったものというべきであり」
 検察官が控訴したところ,2審は検察官の主張を認め1審判決を破棄し,事件を東京地方裁判所に差し戻しました。これに対し,被告人側が上告しました。


【最高裁判決判示事項】
「前科証拠は,単に証拠としての価値があるかどうか,言い換えれば自然的関連性があるかどうかのみによって証拠能力の有無が決せられるものではなく,前科証拠によって証明しようとする事実について,実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに初めて証拠とすることが許されると解するべきである。
本件のように,前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合についていうならば,前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって,初めて証拠として採用できるものというべきである。」


【評釈】
・原審の判断はひどいですね。17年前の前科を漫然と証拠として使用し,結局前科者はまた犯行を犯すものだという偏見にあふれていて,被告人と犯人の同一性というもっとも基本的な事項の立証なんて前科に関する供述調書でいいといっているようなものです。
この考えを前提にすると,捜査で証拠が集まらない場合は前科に関する立証のみ行えばいいという考えになりかねず,無罪推定の原則(刑事訴訟法336条)はおろか証拠裁判主義(刑事訴訟法317条)の否定になりかねません。

・このひどい原審判決を破棄した最高裁は英断だという評価があるかもしれません。しかし,私はまったく逆の評価をしています。
 我々法律家が最高裁判所司法研修所で刑事裁判の起案をしていたころは,刑事裁判教官(=現職刑事裁判官)から,被告人と犯人の同一性の認定には絶対に前科は使用してはならず,前科で被告人と犯人の同一性を認定すると刑事裁判は落第だとされてきました。
 もちろん,修習生への教育的要素があったものと思われますが,結局冤罪は捜査機関の偏見と勝手な思い込みによって生み出されてきたものですから,それを完全に除去するためには前科での立証など認めるべきではないのはいうまでもありません。
 今回の最高裁判決はこの原則を修正し,一定程度の要件を満たせば前科証拠の立証を認める判決になっているようにしか思えません。
 今後捜査機関としてはこの要件に該当するとして,本件に関する捜査を十分にせず,前科に関する取調べを一生懸命するようになることが危惧されます。

・罪体(被告人の主観的認識や特殊な手口など)について同種前科での立証を例外的に認めてきたかつての最高裁判決(※)にも問題がありましたが,被告人と犯人との同一性にも前科に関する証拠を使用することを認めたことによって,今後さらなる冤罪が起こらないか不安です。
 したがって,今回の最高裁判決はかなり危険な判決だったといえます。


【※罪体についてのかつての最高裁判決】
・最高裁昭和41年11月22日第三小法廷判決・刑集第20巻9号1035頁
(事件番号:最高裁判所昭和41年(あ)第1409号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=50785&hanreiKbn=02
「犯罪の客観的要素が他の証拠によつて認められる本件事案の下において、被告人の詐欺の故意の如き犯罪の主観的要素を、被告人の同種前科の内容によつて認定した原判決に所論の違法は認められない」


※上記の意見・判決などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2012-09-10 21:11 | 刑事事件