とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【NHK放送受信料】札幌高裁平成24年12月21日上告審判決

【NHK放送受信料と短期消滅時効】
・札幌高裁平成24年12月21日第2民事部上告審判決
(事件番号:札幌高等裁判所平成24年(ツ)第4号・放送受信料請求上告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82870&hanreiKbn=04


【事案の概要】
・放送受信契約に基づく未払受信料のうち平成17年11月以前の分は5年の短期消滅時効が完成したとして請求を棄却し,その余の請求を認容した原審の判断を相当として,双方の上告を棄却した。


【主文】
1 本件上告をいずれも棄却する。
2 上告人の上告費用は上告人の,被上告人の上告費用は被上告人の各負担とする。


【判示事項】
(上告人の主張に対し)
「民法169条は,「年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権」,すなわち,基本権たる定期金債権から発生する支分権であって,かつ,その支分権の発生に要する期間が1年以下であるものについては,期限のとおり弁済がなされなければ,債権者にとって支障を生ずることが通常であり,したがって,債権者が長くその請求を怠ること及び債務者が長くその弁済を怠ることが少なく,かつ,その額も通常多額ではないから,債務者が長くその受取証を保存することがまれであるため,5年の短期消滅時効を定めたものである。本件受信料債権は,本件受信契約という基本契約に基づく支分権であり,日本放送協会放送受信規約のとおり,月額が定められ,2か月毎に支払をなす金銭債権であるから,上記の趣旨に合致する債権であり,民法169条所定の「年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権」に該当することは明らかである(東京高等裁判所平成24年2月29日判決・判例時報2143号89頁参照)」

(被上告人の主張に対し)
「被上告人は,本件受信料債権が,①1年の短期消滅時効を定めた民法174条2号の「自己の労力の提供…を業とする者の…供給した物の代価に係る債権」に当たる旨,②2年の短期消滅時効を定めた民法173条1号の「生産者…が売却した…商品の代価に係る債権」ないし同条2号の「自己の技能を用い,注文を受けて,物を製作…することを業とする者の仕事に関する債権」に当たる旨主張する。しかしながら,放送の性質等に照らし,上告人を民法174条2号の「労力者」や民法173条1号の「生産者」と解することは困難である。また,上告人の業務の性質・内容(旧放送法7条[新放送法15条],旧放送法9条[新放送法20条]等参照)からして,上告人が民法173条2号の「自己の技能を用い,注文を受けて,物を製作」することを業とする者に当たると解することも困難である。したがって,本件受信料債権が民法174条2号ないし173条1号及び2号の債権に当たるとする被上告人の主張は採用できない。」


【雑感】
・この争点はアコムが過払利息は民法169条の定期給付債権に該当し,5年の短期消滅時効にかかるというおよそ認められない主張をして以来,他の事案でも適用があるかについて,私が非常に関心をもっている分野です。

・被上告人が5年以外の短期消滅時効の主張をしてくれたことから,他の短期消滅時効のことも判断してくれているので,短期消滅時効全体のことを総合的に考えることができます。

・NHK放送受信料についての高裁上告審判決なので,非常に重要な判決といえます。
同種事件は各地で提起されていることから,おそらくいずれ最高裁の判断が言い渡されると思われます。NHK放送受信料が5年の定期給付債権に該当するという判断が最近増えてきていることから,個人的には最高裁でこの判断が覆る可能性は低いと思います。



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by lawinfo | 2012-12-27 23:50 | 消費者問題

【刑の免除判決】横浜地裁平成24年11月30日第5刑事部判決

【非常に珍しい刑の免除判決】
・横浜地裁平成24年11月30日第5刑事部判決
(事件番号:横浜地方裁判所平成24年(わ)第387号等・強盗致傷,強盗被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82857&hanreiKbn=04


【公訴事実】
「被告人は,実母であるA(犯行当時70歳)から,長年にわたり,乱暴な言動をするなどして多額の金を無心し,総額数億円の金をもらっていたところ,同人から更に金を脅し取ろうと考え,

第1 平成23年9月30日午後4時頃,同人を横浜市a区b町c番地dハイツBe号の被告人方に呼び出し,居間において,前記Aに対し,テーブルを叩きながら,「金できたのか。」「ぶっ殺してやる。」「頭かち割ってやる。」などと怒鳴るように言い,同人から色よい返事が得られないと知るや,台所から包丁を持ち出し,これを見て逃げ出した同人を捕まえ,その首の後ろをつかんで部屋の奥まで連れて行って頭を押さえつけるなどした上,「農協へ電話しろ。」などと言って強く金の工面を求め,同人がC農業協同組合D支店に電話して貯金の引出を求めたものの,営業時間外であるとして断られるなどしたことから,同日午後6時過ぎ頃,同人を車に乗せて同区f町g番地所在の同農協D支店まで妻Eを伴い連れて行き,前記Aが同支店でも同様の理由により貯金の引出ができずに終わると,同人を再び車に乗せて前記被告人方付近まで連れ帰り,その際,車中でも,前記Aに対し,「金出せばいいんだよ。」と言うなどして引き続き金の要求をし,同人をして,これに応じなければ自己の身体等にいかなる危害を加えられるかもしれないと困惑畏怖させ,同日午後7時31分頃,同区b町h番地の同人方と同じ敷地内にある同人の娘であり被告人の妹であるF方において,同行してきた前記Eに前記A所有に係る現金70万円を交付させ,もって,これを脅し取り,

第2 同年10月23日午後8時頃,前記Aを前記被告人方に呼び出し,居間において,前記Aに対し,テーブルを叩きながら,「金用意できたか。」「どうせ乳ガンだから,早かれ遅かれ死ぬんだから,ぶっ殺してやる。」「頭かち割ってやる。」などと怒鳴るように言い,その際,同席していた同人の息子であり被告人の弟であるGの頭にライター用オイルをかけ,「焼き殺してやる。」と前記Aに聞こえるように怒鳴るなどして,強く金を要求し,翌24日午前10時頃まで同所にいた同人をして,これに応じなければ自己や前記Gらの身体等にいかなる危害を加えられるかもしれないと困惑畏怖させ,同日午後3時頃,前記被告人方において,前記Aが前記農協D支店で前記G及び前記F名義の定期貯金等を解約するなどして用立てた前記A所有に係る同支店振出の自己宛小切手(額面4000万円)1枚を交付させ,もって,これを脅し取った
ものである。」


【求刑】
・懲役10年


【主文】
・被告人に対し判示各罪につきその刑をいずれも免除する。


【判決理由】
・「ぶっ殺してやる。」「頭かち割ってやる。」などという言葉は,Aが被告人の実母であり,これまでも同様な言葉で金の無心をされていたことから,脅迫の程度が強いとはいえない。
・Aに対し包丁を突きつけたわけでもなく,刺すぞなどと言ってことさら示したわけでもなく,Aが包丁を見たのはほんの一瞬であるということを考えると,脅迫の程度としては,それほど強いものとはいえない。
・被告人に言われて無心にAがつきあったのは,むしろ被告人のためにAは行動した。
 以上のような事実などから,暴行・脅迫の程度が反抗抑圧の程度ではなく,恐喝罪にとどまる。


【注目の判決理由:傷害罪の認定】
「第1の事件で被告人がAにした暴行は前示のとおりであるところ,これによりAが公訴事実記載の傷害を負ったかについて検討すると,確かに,Aは,被告人から暴行を受けた後,首の後ろが痛かった,腰もひねって痛かったなどと証言し,翌日の午後,医師の診察を受け,全治約1週間を要する頸部打撲,臀部打撲との診断を得ていることが認められる。しかし,Aの証言によっても,腰をひねったことはあるが,臀部を打撲した形跡は一切うかがわれないこと,医師の診断も,Aの訴え等を基にしたものに過ぎず,首や臀部に赤みや腫れがあったなどの所見はまったくないこと,暴行の態様をみても,頸部に打撲を生じるほどの外力が加わったとまでいえるのか疑う余地があることなどに照らすと,この点を積極に解するには疑問が残る。したがって,傷害の事実は認定しないこととした。」


【刑の免除】
「(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも刑法249条1項に該当するところ,被告人とAとは判示のとおり直系血族の関係にあるから,同法251条,244条1項により被告人に対し判示各罪につきいずれもその刑を免除することとする。」


【雑感】
・珍しい判決,変わった事件ですね。総額数億円を渡させる被害者。
 強盗致傷,強盗で起訴→恐喝罪が成立⇒親族相盗例により免除。

・特に,この事件は医師の診断書が提出されているにもかかわらず,傷害を認めていない点です。
実務では,被害者のいうがままに医師が診断書を作成し,裁判官が疑問をもつことなく傷害の結果が認定されることが通例です。
 そのため,刑事事件では2・3日の怪我でも1週間の加療を要するとの診断書が作成され,少しでもけがをすれば,内容を問わず,傷害結果も帰責されてしまいます。

・本件では免除されたことはもちろん珍しいですが,証拠として診断書が提出されながら裁判所が傷害結果を認定しなかったということの方が珍しい判決だと思います。

・どうでもいいことですが,この事件の部総括判事である毛利晴光裁判官は元司法研修所の刑事裁判教官です。最近,刑裁教官もけっこう思い切った判決をよく書くようになってきていますね。


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by lawinfo | 2012-12-26 23:43 | 刑事事件

【更生会社TFK(旧:武富士)】継続中訴訟情報

【武富士その後】更生会社TFK(旧:武富士)継続中訴訟情報

・以前更生会社TFKの訴訟情報を管財人が更新してくれるといいなと言っていたところ,ようやくこの情報が更新されていました。
URL:http://www.tfk-corp.jp/pdf/121220.pdf

・4つの訴訟案件の中で,私が興味のあるのは2の「配当金返還請求訴訟」と3の「旧役員等に対する損害賠償請求等訴訟」です。
 2については,平成24年12月に東京地裁で結審し,平成25年3月28日に判決が言い渡されるようです。
 3については,すでに7回期日が開かれているものの,まだ主張・立証段階のようで時間がかかりそうです。この旧役員責任追及訴訟は,先日,東京高裁で画期的な横浜地裁の判決が逆転敗訴したこともあり,一番興味のある事件です。

・これらの4つの訴訟案件は,少なくとも3年はかかるとのことですが,おそらく,最高裁まで行く案件なので,3年以上はかかるのではないでしょうか(いずれも管財人が高裁で敗訴し,上告不受理の場合は早いでしょうが)。

・この件で今後も続報があれば紹介していく予定です。


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by lawinfo | 2012-12-22 23:50 | 貸金業者の対応

【賄賂該当性】最高裁平成24年10月15日第一小法廷判決

【時価相当額の売却代金の賄賂該当性】
・最高裁平成24年10月15日第一小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成21年(あ)第1985号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82640&hanreiKbn=02


【事案の概要】
・被告人A(以下「被告人A」という。)は,福島県知事として,同県の事務を管理し執行する地位にあり,同県が発注する建設工事に関して,一般競争入札の入札参加資格要件の決定,競争入札の実施,請負契約の締結等の権限を有しており,被告人B(以下「被告人B」という。)は,被告人Aの実弟であり,縫製品の製造,加工,販売等を業とするC株式会社の代表取締役として同社を経営していたものである。福島県は,同県東部の木戸川の総合開発の一環として行う木戸ダム本体建設工事(以下「木戸ダム工事」という。)について,一般競争入札を経て,平成12年10月16日,D株式会社ほか2社の共同企業体に発注した。被告人両名は,共謀の上,Dが木戸ダム工事を受注したとき被告人Aから有利便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼の趣旨で,D副会長のEが下請業者であるF株式会社取締役副社長のGに指示をした結果,Fが買取りに応じるものであることを知りながら,被告人Bが,Gに対し,FにおいてCの所有する福島県郡山市の16筆の土地合計約1万1101㎡を8億7372万円余で買い取るように求め,Fが前記土地を同価額で買い取ることを承諾させた。その結果,平成14年8月28日,Fから,その売買代金として,福島県郡山市の株式会社H銀行本店のC名義の当座預金口座に8億7372万円余が振込送金された。このように,被告人Bは,被告人Aとの前記共謀に基づき,前記土地売却による換金の利益の供与を受けて,同県知事の職務に関し,賄賂を収受した。


【争点】
・本件土地の売買は,時価と売買代金額との間に差のない通常の不動産取引である本件土地売買の売却代金が賄賂には当たるか。


【最高裁判所の判断】
「被告人Aは福島県知事であって,同県が発注する建設工事に関して上記の権限を有していたものであり,その実弟である被告人Bが代表取締役を務めるCにおいて,本件土地を早期に売却し,売買代金を会社再建の費用等に充てる必要性があったにもかかわらず,思うようにこれを売却できずにいる状況の中で,被告人両名が共謀の上,同県が発注した木戸ダム工事受注の謝礼の趣旨の下に,Fに本件土地を買い取ってもらい代金の支払を受けたというのであって,このような事実関係の下においては,本件土地の売買代金が時価相当額であったとしても,本件土地の売買による換金の利益は,被告人Aの職務についての対価性を有するものとして賄賂に当たると解するのが相当である。」


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by lawinfo | 2012-12-20 23:15 | 最高裁

【貸金業者の対応】オリエントコーポレーションの対応

【オリエントコーポレーションの対応】
・近時,オリコは過払訴訟でやたらと支払時期の先延ばしをお願いしてきます。
 かつてのアイフルのように,書面を小出しにしてでも先延ばしにするように言われているらしく,今までは一度で出てきたものがわざと時間をおいて出てくるようになってきています。

・特に,今日の期日で言われたのは,争点はいずれ撤回してもいいから支払日は先延ばししてほしいとまで言われました。私はそちらは支払日までの利息をいつも付けてくれるから依頼者がいいといえばいいですよと回答しておきました。

・先延ばし戦術はアイフルの得意技でしたが,アイフルと違うのは先に延ばしたうえで支払日までの利息を払うと自ら言ってくる点ですね。
 オリコは特段業績が悪そうではないので,資金繰りの問題だと思われます。


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by lawinfo | 2012-12-19 23:08 | 貸金業者の対応

【根保証契約】最高裁平成24年12月14日判決

【根保証契約・最高裁判決】
・最高裁平成24年12月14日第二小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成23年(受)1833号・貸金請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82820&hanreiKbn=02


【事案の概要】
・根保証契約の主たる債務の範囲に含まれる債務に係る債権(以下「被保証債権」という。)を当該根保証契約に定める元本確定期日前に譲り受けた被上告人が,保証人である上告人に対し,保証債務の履行を求めた事案


【上告受理申立て理由・概要】
・被保証債権の譲渡が根保証契約に定める元本確定期日前にされた場合には,当該被保証債権の譲受人が保証人に対し,保証債務の履行を求めることはできないと解すべきである。


【判決要旨】
「根保証契約の被保証債権を譲り受けた者は,その譲渡が元本確定期日前にされた場合であっても,当該根保証契約の当事者間に別段の合意がない限り,保証人に対し,保証債務の履行を求めることができる」


【須藤正彦裁判官の補足意見】
「もとより,根保証契約については,契約自由の原則上,別段の合意により保証債権に随伴性を生じさせないようにすることも自由であり,したがって,例えば,根保証契約において,主たる債務の範囲に含まれる債務のうち,元本確定期日の時点で主債務者が当初の債権者に対して負う債務のみについて保証人が責めを負う旨の定めを置いておけば,その定めは,法廷意見における「譲受人の請求を妨げる別段の合意」と解されて,そのとおりの効力が認められるというべきである。」


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by lawinfo | 2012-12-14 23:54 | 最高裁

【過払い論点】制限利率以下の取引における悪意の受益者性①

【プロミス新主張:制限利率以下の取引における悪意の受益者性①】

・プロミス(現:SMBCコンシューマーファイナンス株式会社)は,最高裁平成23年12月1日判決以降,悪意の受益者性についてATM明細書をすべて提出しないようになり,あまり本気で争わなくなってきています。

・ただ,最近では,最高裁平成18年1月13日判決以降,約定利率が制限利率を下回っている取引(たとえば,制限利率が0.18の場合,約定利率が0.178の場合など)について,新しい主張をするようになってきています(とある埼玉のプロミスの代理人事務所が始めた主張です)。
 この場合,取引当初は制限利率以上なので,最高裁平成19年7月13日判決により,約定利率が制限利率となる以前の取引については悪意の推定が及ぶことになります。
しかし,約定利率が制限利率以下となった部分については,制限超過利息を前提とした最高裁平成19年判決の射程が及ばないため,悪意の受益者性については,消費者側が主張立証責任を負うことになります。この点が最大の問題意識です。

・この主張はかつてのように,大量にATM明細書等を証拠で提出する必要がなくお手軽な主張のため,今後この主張をする業者が増えていく可能性があります。

・下記裁判例のように,①約定利率が制限利率以下になった時点ですでに継続的過払い状態であった事案は,最高裁平成23年12月1日判決の理屈で容易に勝つことができます。問題は,②約定利率が制限利率以下になった時点で継続的過払い状態でなかった事案でも悪意の受益者であるといえるかです。


【裁判例】
①東京高裁平成24年9月25日第7民事部判決(市村陽典部総括判事)
(事件番号:東京高等裁判所平成24年(ネ)第4142号)
事案:約定利率が制限利率以下になった時点ですでに継続的過払い状態
「控訴人(※SMBC)は被控訴人Eとの取引においては,平成20年6月4日に約定利率を利息制限法所定の制限利率以内に変更したから,同日以降は,控訴人が悪意の受益者であるとの推定は働かず,いわゆる過払利息は発生しないとも主張する。
 しかし,当審計算書5②のとおり,被控訴人Eと控訴人との間の取引経過は,平成20年6月4日よりも前から過払の状態となり,その後も取引は継続して過払の状態となり貸金債務は存在していなかったことが認められるから,同日以降は,利息が発生する余地はなく,この時期に制限超過部分の支払につき貸金業法43条1項を適用してこれを有効な利息の支払とみなすことができないことは明らかである。そうすると,被控訴人Eと控訴人との間の取引につき,同日以降,利息制限法の制限利率内に利率が変更されたとしても,控訴人がそれまでに発生した過払金の取得につき悪意の受益者である以上,この時期に発生した過払金の取得についても悪意の受益者であることを否定することはできない。」

②東京高裁平成24年9月27日第24民事部判決(三輪和雄部総括判事)
(事件番号:東京高等裁判所平成24年(ネ)第4222号)
 事案:約定利率が制限利率以下になった時点で利限残があり,その後,過払いになり,また残ありになる取引
「変更後の約定利率に基づく返済については,①その返済の直前における借受金残額(その時点までの利息を含むもの)が返済金総額を上回っている場合には,その返済金の受領にはそもそも不当利得は発生しないことになるが,②その返済直前における借受金残額が返済金総額に満たない場合には,その差額分に対応する元利金債権は存在していないのであり,③その返済時点で既に過払の状態にある場合には貸金債権が存在していないのであるから,控訴人(※SMBC)がそれまでに発生してした過払金の取得につき悪意の受益者である以上,②及び③の場合において発生した過払金の取得ついても悪意の受益者であるというべきである。控訴人の主張を前提としても,以上の結論に変わりがないことは明白である。」


【雑感】
・要は,制限利率以下の取引であっても,制限利率以上の取引から継続するものについては,制限利率以上の利息をとっていたら悪意の受益者であるということです。
今後この点についてさらに検討していきたいと思います。


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by lawinfo | 2012-12-13 23:15 | 過払い訴訟論点

【裁判官人事情報】東京高裁第20民事部が変わる!?

【裁判官人事情報】
・貸金業者の代理人がこぞって判決を取りにいっていた東京高裁の部がありました(消費者系弁護士には有名な話です)。

・平成24年12月8日の最高裁判所人事で,その部総括判事が定年退官されたことがわかりました。
これで,東京高裁の配属部が何部に入るかビクビクしながら見ることはなくなりそうです。


・別の話として,武富士役員責任追及訴訟で画期的な判決を書き,その後東京高裁で逆転判決を出されてしまって,私としてはその後の裁判所内部の評価を非常に気にしていた森義之前横浜地裁部総括判事は,同日付で和歌山地,家裁所長になられていました。
森部長の経歴なら当然ですが,最高裁が派手な判決ばかり書く裁判官を閑職に追いやったのでないことを祈ります。


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by lawinfo | 2012-12-10 23:19 | 雑談

 【国家公務員法違反被告事件】最高裁平成24年12月7日無罪判決

【 国家公務員法違反被告事件最高裁無罪判決】

・最高裁平成24年12月7日第二小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成22年(あ)第762号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82801&hanreiKbn=02


【第1審】
・東京地裁所平成18年6月29日判決
有罪(罰金10万円・執行猶予2年)
・ 被告人控訴(憲法違反,法令適用の誤り及び訴訟手続の法令違反),検察官控訴(罰金刑の執行を猶予した点で軽過ぎて量刑不当)


【第2審】
・東京高裁平成22年3月29日第5刑事部判決(中山隆夫裁判長)
(事件番号:東京高等裁判所平成18年(う)第2351号)
適用違憲判決
「原判決を破棄する。
被告人は無罪。」 
・検察官上告


【最高裁】
・本件上告を棄却する。


【公訴事実の概要】
「被告人は,社会保険庁東京社会保険事務局目黒社会保険事務所に年金審査官として勤務していた厚生労働事務官であるが,平成15年11月9日施行の第43回衆議院議員総選挙に際し,日本共産党を支持する目的をもって,第1 同年10月19日午後0時3分頃から同日午後0時33分頃までの間,東京都中央区(以下省略)所在のB不動産ほか12か所に同党の機関紙であるしんぶん赤旗2003年10月号外(『いよいよ総選挙』で始まるもの)及び同党を支持する政治的目的を有する無署名の文書である東京民報2003年10月号外を配布し,第2 同月25日午前10時11分頃から同日午前10時15分頃までの間,同区(以下省略)所在のC方ほか55か所に前記しんぶん赤旗2003年10月号外及び前記東京民報2003年10月号外を配布し,第3 同年11月3日午前10時6分頃から同日午前10時18分頃までの間,同区(以下省略)所在のD方ほか56か所に同党の機関紙であるしんぶん赤旗2003年10月号外(『憲法問題特集』で始まるもの)及びしんぶん赤旗2003年11月号外を配布した。」


【争点】
・上記公訴事実が,国家公務員法110条1項19号(平成19年法律第108号による改正前のもの),102条1項,人事院規則14-7(政治的行為)(以下「本規則」という。)6項7号,13号(5項3号)違反といえるか。


【最高裁判所の判断】
「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるかどうかは,当該公務員の地位,その職務の内容や権限等,当該公務員がした行為の性質,態様,目的,内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当である。」
「被告人は,社会保険事務所に年金審査官として勤務する事務官であり,管理職的地位にはなく,その職務の内容や権限も,来庁した利用者からの年金の受給の可否や年金の請求,年金の見込額等に関する相談を受け,これに対し,コンピューターに保管されている当該利用者の年金に関する記録を調査した上,その情報に基づいて回答し,必要な手続をとるよう促すという,裁量の余地のないものであった。そして,本件配布行為は,勤務時間外である休日に,国ないし職場の施設を利用せずに,公務員としての地位を利用することなく行われたものである上,公務員により組織される団体の活動としての性格もなく,公務員であることを明らかにすることなく,無言で郵便受けに文書を配布したにとどまるものであって,公務員による行為と認識し得る態様でもなかったものである。」
「本件配布行為は,管理職的地位になく,その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって,職務と全く無関係に,公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり,公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないから,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。そうすると,本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当しないというべきである。」


【雑感】
・憲法論としては重要な最新最高裁判決。しかも,1審有罪⇒2審逆転無罪⇒最高裁検察官の上告棄却というそれほどない流れの事件。
・司法試験受験生としては,多数意見はもちろんのこと,千葉勝美裁判官の補足意見,須藤正彦裁判官の意見も熟読する必要がありますね。

・結論として,厚生労働省大臣官房統計情報部社会統計課長補佐(総括課長補佐)は有罪,年金審査官(厚生労働事務官)は無罪と結論が分かれました。私としては,「管理職的地位」か否かで有罪・無罪の大きな違いが出るのは疑問がありますね。
この2事件は原審がひとつは有罪,もう一つは無罪となっていた以上,最高裁はとしては,①猿払事件最高裁判決を大法廷に回付して判例変更したうえで両事件とも無罪とするか,②無罪事件の方を弁論を開いて有罪とするかしかなかったので,簡易に処理できる方法を模索したという意味合いが強い気がします。

・よく論評されていますが,これだけ不明確な基準を最高裁がたててしまうと,処罰されるか否かの予見可能性が奪われ,今後のことを考えると問題のある判決だと思います。


【もう一つ有罪事件】
・最高裁平成24年12月7日第二小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成22年(あ)第957号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82802&hanreiKbn=02


※上記の意見・判決などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2012-12-07 23:42 | 最高裁

【更生会社TFK(旧:武富士)】更生計画に基づく第1回弁済状況

【更生会社TFK(旧:武富士)更生計画に基づく第1回弁済状況】

・近時,あまり動きのなかった旧武富士(現:更生会社TFK株式会社)ですが,更生計画に基づく第1回の弁済がほぼ終了(97.7%)したとのお知らせがHPに掲載されていました。

 対象金額:488億9439万4697円
 弁済金額:485億2750万6166円
 対象件数:91万8026件
 弁済件数:89万6589件

URL:http://www.tfk-corp.jp/pdf/121130.pdf

・弁済金の振込口座の指定が未了の方は,至急連絡するようにとのことです。


・この件はともかく,個人的に関心のある管財人によって起こされているいくつかの訴訟の動向について,平成24年6月22日付「第2回弁済について-訴訟の進捗状況-」以降,全然更新されていません。
URL:http://www.tfk-corp.jp/pdf/120622.pdf

・管財人はこの点の続報もこまめに更新してほしいものです。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2012-12-05 23:41 | 貸金業者の対応