とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【貸金業者の対応】武富士旧役員責任追及訴訟等のその後⑤

【武富士旧役員責任追及訴訟等のその後⑤】
・武富士の処理をしている更生会社TFK株式会社のHPが更新されていました。
URL:http://www.tfk-corp.jp/news.html

・税金の還付を請求していたわけですが,東京地裁は,平成25年10月30日の判決で更生会社TFK株式会社管財人の請求を棄却しました。


【請求内容】
・事件名:更正すべき理由がない旨の通知処分の取消等請求事件
 請求金額:2374億6470万6270円
 被告:国
 請求の理由:武富士は制限超過利息を税務上の益金として法人税を支払ってきたが,制限超過利息が無効であることが確定したため,その分の法人税の還付を受けるべく,税務署に対し,国税通則法23条2項1項に基づき更正の請求をした。
 ところが,税務署から上記更正請求に理由がない旨の通知処分を受け,更生会社は国税不服審判所
に審査請求を申し立てていたが,3か月が経過したため,通知処分の取り消しを求めて訴訟提起した。


【雑感】
・まあ,もともと裁判所に認められることは難しいと考えられていた件ですので,管財人は控訴しない方がいいんじゃないかと思います。武富士元役員の件と違って.控訴しても国は和解しないでしょうから。


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by lawinfo | 2013-10-31 23:12 | 過払い訴訟論点

【傷害致死無罪判決】札幌地裁平成25年10月11日判決

【裁判員裁判傷害致死無罪判決】
・札幌地裁平成25年10月11日刑事第3部判決・加藤学裁判長
(事件番号:札幌地方裁判所平成24年(わ)第966号・傷害致死被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83688&hanreiKbn=04


【訴因変更後の公訴事実】
「被告人は,平成24 年9 月5 日午後8 時10 分頃,北海道北広島市a 町b 丁目c 番地d被告人方居間において,うつ伏せに倒れていたA(当時31 歳)の背部に馬乗りになり,その後頸部を手で押さえる暴行を加えて,同人の胸腹部及び顔面を床面に圧迫させ,よって,その頃,同所において,同人を窒息により死亡させた。」


【検察官森中尚志・鎌田航求刑】
・懲役4年


【主文】
・被告人は無罪


【判示事項】
「被告人がAの背部に馬乗りになり,その後頸部を押さえつける前のA及び被告人の行為は,1で認定したとおりである。その一連の事情,特に,(ア)本件当時,Aは被告人よりも身長と体重が劣っていたが,Aの被告人に対する攻撃が相当の時間継続的に繰り返されたこと,(イ)被告人が体勢を崩してうつ伏せ状態になったAに馬乗りになった時点で,ある程度,被告人が優勢になっていたと認められるが,Aは,それ以降も,被告人を蹴ったり,起き上がろうとして相当程度抵抗していたこと,(ウ)本件の数か月前にもAがパイプ椅子で被告人を攻撃したことからすれば,Aが現実に抵抗を続けていた時点はいうまでもなく,Aが抵抗をやめた時点でも,直ちにAが被告人に対する攻撃を再開する可能性がなくなったとはいえないから,Aの抵抗が止んでからある程度の時間は,Aの被告人に対する急迫不正の侵害は継続していたと認められる。
 そして,前記のとおり,被告人が,Aが抵抗しなくなった後,相当の時間Aを押さえつけていたとは認められないから,急迫不正の侵害が止んでからも,被告人がAの後頸部を押さえ続けたという事実は認められない。
 次に,本件当日,Aは,被告人に対して,2回殴りかかり,肩をつかみ,背負い投げをするといった攻撃をしたのに対し,被告人がした反撃行為は,Aの肩をつかみ,1回殴り,たまたま,背負い投げに失敗して倒れたAの上になったことからAの背部に馬乗りになり,Aが起き上がるのを防ぐために,Aの手を払って後頸部を押さえたというものであり,反撃行為を全体的に見るとAの攻撃に対する防衛行為として相当性を欠くようなものは認められない。Aの背部に馬乗りになり後頸部を押さえつけた行為は,客観的にみると,Aの鼻と口を塞いでAを窒息させる行為であり,危険性が高い行為であるが,それは,Aが起き上がるのを防ぐために防御的になされたものであり,Aの行動から離れて積極的に攻撃をしたというものでもない。また,顔面を下に向けて後頸部を押さえつけたからといって,鼻と口の双方が塞がり呼吸ができなくなるとは限らない上,被告人がことさらにそのようになることを意図していたとの証拠もないから,不注意であったことは否めないにしても,本件当時,偶々Aの鼻と口の双方が塞がったことが,当時の被告人の防衛行為の相当性を失わせるものではない
 被告人に防衛の意思が認められることは明白である。
 したがって,本件当時,被告人がAに対して加えた暴行は,Aの攻撃から被告人の身体を守るためやむを得ずにした行為であると認められるから,被告人には正当防衛が成立する。」


【雑感】
・またまた,元刑裁教官が無罪判決。
・それにしてもこの事件は,①傷害致死事案,②訴因変更した事案,③被告人は統合失調症,④公訴棄却の可否,⑤正当防衛の成否という法律のプロが担当しても極めて大変な事案を裁判員が担当したというのはかなり大変だったと思います。


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by lawinfo | 2013-10-25 23:02 | 刑事事件

【裁判員裁判破棄事案】最高裁平成25年10月21日決定

【覚せい剤事犯におけるこれからの裁判員裁判】
・最高裁平成25年10月21日第一小法廷決定
(事件番号:最高裁判所平成24年(あ)第724号・ 覚せい剤取締法違反,関税法違反被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83676&hanreiKbn=02


【判示事項】
「荷物の運搬委託を伴わない密輸方法は,目的地に確実に到着する運搬者となる人物を見付け出した上,同人の知らない間に覚せい剤をその手荷物の中に忍ばせたりする一方,目的地到着後に密かに,あるいは,同人の意思に反してでもそれを回収しなければならないなどという点で,準備や実行の手間が多く,確実性も低い密輸方法といえる。そうすると,密輸組織としては,荷物の中身が覚せい剤であることまで打ち明けるかどうかはともかく,運搬者に対し,荷物の回収方法について必要な指示等をした上で覚せい剤が入った荷物の運搬を委託するという密輸方法を採用するのが通常であるといえ,荷物の運搬の委託自体をせず,運搬者の知らない間に覚せい剤をその手荷物の中に忍ばせるなどして運搬させるとか,覚せい剤が入った荷物の運搬の委託はするものの,その回収方法について何らの指示等もしないというのは,密輸組織において目的地到着後に運搬者から覚せい剤を確実に回収することができるような特別な事情があるか,あるいは確実に回収することができる措置を別途講じているといった事情がある場合に限られるといえる。したがって,この種事案については,上記のような特段の事情がない限り,運搬者は,密輸組織の関係者等から,回収方法について必要な指示等を受けた上,覚せい剤が入った荷物の運搬の委託を受けていたものと認定するのが相当である。」
(中略)
「以上に対し,第1審判決は,「(密輸組織による回収のための措置としては)様々なものが考えられ,運搬者に事情を知らせないまま同人から回収する方法がないとまではいえない」という前提の下,「被告人が本件覚せい剤が隠匿された本件スーツケースを自己の手荷物として持ち込んだという事実から,特別の事情がなければ通常中身を知っているとまで推認することはできない」と説示し,最終的に被告人の知情性は認定できないという結論を導いている。この点は,この種事案に適用されるべき経験則等の内容を誤認したか,あるいは,抽象的な可能性のみを理由として経験則等に基づく合理的な推認を否定した点において経験則等の適用を誤ったものといえ,原判決のとおり,知情性を否定した結論が誤っているといわざるを得ない」


【雑感】
・とうとう認定方法まで最高裁が決めてしまいましたね。これだと,ロボットに事実認定させるようなもので,事案について裁判員が深く議論するまでもなく自動的に結論が導かれるようになりそうです。ここまでくると,もう裁判員裁判はいらないんじゃないですか?
・最近の高裁の1審裁判員裁判破棄判決といい,この最高裁決定といい,裁判所としては裁判員の非常識な事実認定に業を煮やしたということなんでしょうね。
・私としては裁判員裁判で職業裁判官の感覚もかなり変わったと裁判員裁判を肯定的に評価していました。しかし,1審の刑事裁判官は裁判員裁判が強度のストレス要因となっていると言われており,最高裁がこんな態度をとるならもう裁判員裁判は廃止でいいでしょう。


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by lawinfo | 2013-10-24 23:30 | 刑事事件

【裁判官の非行】平成25年10月8日決定

【裁判官分限裁判】
・平成25年10月8日決定
(事件番号:平成25年(分)第1号)
URL:http://kanpou.npb.go.jp/20131022/20131022h06155/20131022h061550008f.html

・被申立人 福岡地方裁判所判事 髙橋 信慶


【主文】
・被申立人を戒告する。


【雑感】
・裁判官と修習生の飲み会は,通常所属部の庁舎内でやることが多いです。この裁判官を含め男性6人と女性修習生1人が午前零時まで飲み会をやることはかなり異常なことだと思います。
・今回裁判所が分限裁判を早期にしたことには何か意図があるのではないかと疑ってしまします。つまり,弾劾裁判にかけられると大騒ぎになるので,分限裁判で最も重い「戒告」を選択しつつ,本人に依願退官させることを約束させることで,弾劾裁判を回避したのではないかという疑念です。
・実際福岡高裁特別部(古賀寛裁判長)は,官報にこの事実が掲載されるまでは何の公表もしなかったことから,裏で幕引きを図ろうとしたのではないかと疑われても仕方がないと思います。
・身体的接触を伴わなかった盗撮事件において,華井俊樹元判事補は弾劾裁判にかけられ,本人が依願退官を申し出ていたにもかかわらず,裁判所は退官を認めず,免職されるまでの給料を自主的に返納させていたと聞いています(世間では給料ドロボーのように誤解されていますが,最高裁はもっとえぐいことをしていたのです)。
・確かに,華井元判事補は略式起訴され,罰金刑を科されているという違いはあるものの,裁判官と修習生という圧倒的な力の差がある当事者間で無理やり行われた行為とで差があるのか極めて疑問です。

・この分限裁判と弾劾裁判は実は髙橋元判事の今後の人生に大きな違いが生じます。
 弾劾裁判で免職されると法曹資格を失うのに対し,分限裁判は法曹資格を失いません。そこで,今後ひっそりと弁護士になることができることになります。今後,髙橋元判事が弁護士登録を申請してきたら,弁護士会はしっかり審査をするように強く求めたいところです。

・福岡地検は退官したから社会的制裁を受けていると安易に事件を終わらせることなく,丁寧に捜査すべきです。

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by lawinfo | 2013-10-23 23:49 | 時事ネタ

【ヘイトスピーチ】京都地裁平成25年10月7日判決

【ヘイトスピーチ損害賠償請求事件】
・京都地裁平成25年10月7日判決
(事件番号:京都地方裁判所平成22年(ワ)第2655号・ 街頭宣伝差止め等請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83675&hanreiKbn=04


【認容額】
・1226万3140円


【判示事項(損害論のみ)】
「わが国の裁判所は,人種差別撤廃条約2条1項及び6条の規定を根拠として,法律を同条約の定めに適合するように解釈する責務を負うが,これを損害賠償という観点からみた場合,わが国の裁判所は,単に人種差別行為がされたというだけでなく,これにより具体的な損害が発生している場合に初めて,民法709条に基づき,加害者に対し,被害者への損害賠償を命ずることができるというにとどまる。
 しかし,人種差別となる行為が無形損害(無形損害も具体的な損害である。)を発生させており,法709条に基づき,行為者に対し,被害者への損害賠償を命ずることができる場合には,わが国の裁判所は,人種差別撤廃条約上の責務に基づき,同条約の定めに適合するよう無形損害に対する賠償額の認定を行うべきものと解される。
 やや敷衍して説明すると,無形損害に対する賠償額は,行為の違法性の程度や被害の深刻さを考慮して,裁判所がその裁量によって定めるべきものであるが,人種差別行為による無形損害が発生した場合,人種差別撤廃条約2条1項及び6条(※)により,加害者に対し支払を命ずる賠償額は,人種差別行為に対する効果的な保護及び救済措置となるような額を定めなければならないと解されるのである。」


【人種差別撤廃条約】
「第2条
1 締約国は、人種差別を非難し、また、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとることを約束する。このため、
(a)各締約国は、個人、集団又は団体に対する人種差別の行為又は慣行に従事しないこと並びに国及び地方のすべての公の当局及び機関がこの義務に従って行動するよう確保することを約束する。
(b)各締約国は、いかなる個人又は団体による人種差別も後援せず、擁護せず又は支持しないことを約束する。
(c)各締約国は、政府(国及び地方)の政策を再検討し及び人種差別を生じさせ又は永続化させる効果を有するいかなる法令も改正し、廃止し又は無効にするために効果的な措置をとる。
(d)各締約国は、すべての適当な方法(状況により必要とされるときは、立法を含む。)により、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる。
(e)各締約国は、適当なときは、人種間の融和を目的とし、かつ、複数の人種で構成される団体及び運動を支援し並びに人種間の障壁を撤廃する他の方法を奨励すること並びに人種間の分断を強化するようないかなる動きも抑制することを約束する。
2 締約国は、状況により正当とされる場合には、特定の人種の集団又はこれに属する個人に対し人権及び基本的自由の十分かつ平等な享有を保障するため、社会的、経済的、文化的その他の分野において、当該人種の集団又は個人の適切な発展及び保護を確保するための特別かつ具体的な措置をとる。この措置は、いかなる場合においても、その目的が達成された後、その結果として、異なる人種の集団に対して不平等な又は別個の権利を維持することとなってはならない。

第6条
 締約国は、自国の管轄の下にあるすべての者に対し、権限のある自国の裁判所及び他の国家機関を通じて、この条約に反して人権及び基本的自由を侵害するあらゆる人種差別の行為に対する効果的な保護及び救済措置を確保し、並びにその差別の結果として被ったあらゆる損害に対し、公正かつ適正な賠償又は救済を当該裁判所に求める権利を確保する。」


【雑感】
・当ブログでは,本事件の当否には一切立ち入りません。
・私が法律家として気になったのは,裁判所が人種差別撤廃条約の条項を根拠に高額な賠償金を認容している損害論の点のみです。
・おそらく,この裁判所は人種差別撤廃条約の6条を重視していると思われますが,この条項から直ちにここまでの高額な賠償責任が導かれるか疑問があります。特に,最後は裁判所の裁量だといってしまえば,何の基準もなく高額な賠償義務を課されることにもなりかねない点が懸念されます。
・被告側が控訴したようなので,控訴審の判断(損害論に限る)がとても楽しみです。


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by lawinfo | 2013-10-22 23:33 | 損害賠償請求

【国家賠償請求認容】横浜地裁平成25年9月6日判決

【部活動中の事故で負った傷害に対する国家賠償請求認容判決】
・横浜地裁平成25年9月6日第8民事部判決・遠藤真澄裁判長
(事件番号:横浜地方裁判所平成24年(ワ)第266号・損害賠償請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83663&hanreiKbn=04


【事案の概要】
・中学校の野球部に所属していた原告が,本件学校を設置管理する被告に対し,原告が本件野球部の練習において右眼にボールの直撃を受け,右網膜萎縮等の傷害を負った事故に関し,本件事故は本件野球部の顧問教諭らが防球ネットの配置を徹底せず,生徒に防具等を装着させず,複数箇所の同時投球を避ける等の指導監督義務を怠ったことに起因するなどとして,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償請求をした事案


【判示事項】
「①本件顧問教諭らは,朝練習に稀にしか出席せず(同(1)イ),放課後の練習においても不定期に出席するのみであり,また,他の教員をして出席させることもしておらず(同(1)イ),部員らに対し,定期的かつ計画的にフリーバッティング練習における安全上の注意点について注意喚起を行っていたとは認められないこと(同(2)イ),②本件事故時において本件顧問教諭ら及びその他の教員に代わり部員らを指導監督するキャプテン等の責任者を指定するなどしておらず(同(2)エ),本件顧問教諭らの指導を間接的に部員らに浸透させる態勢を整えていたとも認められないこと,③側方ネット及び本件ピッチングマシーンは,グラウンドのほぼ中心に位置しており(上記前提事実(3)ウ),多くの部員らにとって,本件フリーバッティング練習において側方ネットが設置されていないこと及び原告が本件ピッチングマシーン後方でボールを拾っていたことは,容易に気付き得たと認められるにもかかわらず,本件フリーバッティング練習は,側方ネットが設置されず,かつ,原告がボールを拾っている状態で,漫然と本件合図が出て開始されたこと(同(2)エ,上記認定事実(5)エ),④本件顧問教諭らは,本件野球部の1年生らの判断能力が未熟で,かつ,野球の経験が少ないことから,特に安全指導を行う必要性のあると考えられるにもかかわらず,何ら特別の安全指導を行っていないこと(同(2)ウ),⑤原告は,本件各ネットの設置について,本件顧問教諭らや本件野球部の上級生からの特別の指導によって学んだのではなく,同上級生が本件各ネットを設置しているのを真似て,分からない点について質問をすることにより覚えたにすぎないこと(同(4)イ)などからすれば,部員らは,本件各ネットが有する安全上の重要性について十分に理解しないまま,慣例としてこれを設置していたにすぎなかったと評価するのが相当であり,本件顧問教諭らが,部員らに対し,フリーバッティング練習におけるボール係等の生命身体の侵害の危険性について,その高度な危険性を理解させるに十分な理解を得させる指導を行っていたとは到底認められない
そうであれば,本件顧問教諭らの指導によって,フリーバッティング練習において必ず本件各ネットを適切な位置に設置し,また,ボール係が本件各ネットで保護されるよう,同ネットから出ることのないよう,指導することが徹底されていたとはいえない。
エ よって,本件顧問教諭らには,本件野球部の活動について部員らの安全を確保し,事故の発生を未然に防ぐべき義務に違反した過失が認められる。」


【雑感】
・国賠請求を認めた珍しい判決。なかなか認めてもらえないんですよね,この手の事件は。
・特に本件は,原告が日本スポーツ振興センターから本件見舞金として400万円受け取っていることから,これで納得すればといわれかねないこともあり,よく認めてくれたなぁと思います。


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by lawinfo | 2013-10-21 23:13 | 損害賠償請求

【再審抗告棄却決定】最高裁平成25年10月16日決定

【名張毒ぶどう酒殺人事件第7次再審請求の差戻し後の特別抗告事件】
・最高裁平成25年10月16日第一小法廷決定
(事件番号:最高裁判所平成24年(し)第268号・ 再審開始決定及び死刑執行停止決定に対する異議申立ての決定に対する特別抗告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83659&hanreiKbn=02


【判示事項】
「原審(差戻し後の異議審)の鑑定は,科学的に合理性を有する試験方法を用いて,かつ,当時の製法を基に再製造したニッカリンTにつき実際にエーテル抽出を実施した上でTRIEPPはエーテル抽出されないとの試験結果を得たものである上,そのような結果を得た理由についてもTRIEPPの分子構造等に由来すると考えられる旨を十分に説明しており,合理的な科学的根拠を示したものであるということができる。同鑑定によれば,本件使用毒物がニッカリンTであることと,TRIEPPが事件検体からは検出されなかったこととは何ら矛盾するものではないと認められる。所論は,農薬を抽出する際には塩化ナトリウムを飽和するまで加える方法(塩析)が当時は行われており,塩析した上で試験をすればTRIEPPはエーテル抽出後であっても検出されると主張するが,当時の三重県衛生研究所の試験において塩析が行われた形跡はうかがわれず,所論は前提を欠くものである。また,対照検体からはTRIEPPが検出されている点についても,当審に提出された検察官の意見書の添付資料等によれば,PETPがエーテル抽出された後にTRIEPPを生成して検出されたものと考えられる旨の原判断は合理性を有するものと認められる。
 以上によれば,証拠群3は,本件使用毒物がニッカリンTであることと何ら矛盾する証拠ではなく,申立人がニッカリンTを本件前に自宅に保管していた事実の情況証拠としての価値や,各自白調書の信用性に影響を及ぼすものではないことが明らかであるから,証拠群3につき刑訴法435条6号該当性を否定した原判断は正当である。」


【雑感】
・差し戻してこれとは…。かなり無念でしょう。


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by lawinfo | 2013-10-18 23:40 | 刑事事件

【医療事故無罪判決】横浜地裁平成25年9月17日判決

【業務上過失傷害被告事件 無罪判決】
・横浜地裁平成25年9月17日第5刑事部判決・毛利晴光裁判長
(事件番号:横浜地方裁判所平成24年(わ)第576号・ 業務上過失傷害被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83653&hanreiKbn=04


【公訴事実】
「被告人は,医師免許を受け,横浜市旭区a町b番c号所在のA病院において,麻酔科医師として医療業務に従事していたものであるが,平成20年4月16日,A病院甲手術室において,執刀医他1名の外科医師及び2名の看護師による医療体制のもと被告人が麻酔を担当し,入院患者B(当時44歳)に全身麻酔を施した上,左乳房部分切除及びセンチネルリンパ節生検の手術を行うに当たり,被告人が,同日午前8時55分頃,前記Bに対し麻酔導入を開始し,同人を,自発呼吸のできない意識消失・鎮痛・筋弛緩状態にしたため,同人の生命維持のためには,麻酔担当医である被告人において,麻酔器に接続した蛇管の先端に付けられ,前記Bに装着されたマスクを通じて酸素を供給して呼吸管理をするなどし,同人の全身状態を適切に維持・管理することが不可欠なのであるから,同人の身体の状態を目視するほか,同人に装着されたセンサー等により測定・表示された心拍数・血圧・酸素飽和度等を注視するなどの方法で同人の全身状態を絶え間なく看視し,異変があれば適切に対処すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,同日午前9時7分頃,漫然と同室から退室して約27分間にわたって前記手術室を不在にし,その間,同人の全身状態を看視するなどせずに放置した過失により,同日午前9時16分頃,前記Bの蛇管が麻酔器の蛇管取付口から脱落して同人の全身状態が悪化したのに気付かず,同日午前9時34分頃までの約18分間にわたり同人への酸素の供給を遮断させ,よって,同人に完治不能の低酸素脳症に基づく高次脳機能障害及び四肢不全麻痺の傷害を負わせたものである。」


【検察官の求刑】
・罰金50万円


【主文】
・被告人は無罪


【判示事項】
「甲手術室不在という被告人の行動は,その不在時間の長さ(甲手術室に戻るまでに約27分間,蛇管が外れたときまででも,約9分間)からして,インチャージの担当として後期研修医の指導・補助をしていたという事情があったとはいえ,いささか長過ぎたのではないかとの問題がなくはないが,被告人の置かれた具体的状況,更には当時の我が国の医療水準等を踏まえてみたとき,刑事罰を科さなければならないほどに許容されない問題性があったとは,到底いいがたい。したがって,本件事故について,被告人には,検察官が主張するような,常時在室してBの全身状態を絶え間なく看視すべき業務上の注意義務を認めることはできない。」


【雑感】
・毛利部長,無罪判決よく出されますね。
・本件では,裁判所は検察官の争点の立て方に疑問を呈していることから(6頁),検察側に問題があったのかもしれません。
・ただ,検察官としても被害者側の突き上げがあったため嫌々起訴した可能性もあり,検察官としては厳しい事件だったのかもしれません。
・これだけ無罪判決を出されると,毛利部長を担当する横浜地検公判部の担当部は戦々恐々でしょう。


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by lawinfo | 2013-10-17 23:39 | 刑事事件

【認定落ち】神戸地裁平成25年7月25日判決

【強姦致傷罪認定落ち判決】
・神戸地裁平成25年7月25日第4刑事部判決・丸田顕裁判長
(事件番号:神戸地方裁判所平成25年(わ)第155号・逮捕監禁,強姦致傷被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83652&hanreiKbn=04


【争点】
・本件では逮捕監禁罪については争いはなく,争点は強姦致傷罪の成否です。
強姦致傷に係る主位的訴因は,被告人が被害者を姦淫する前に被害者の顔面を殴打して負傷させたというものです。これに対し,弁護人は,被告人が姦淫前に被害者の顔面を殴打した事実はなく,殴打したのは姦淫後であると主張しました。
 他方,検察官の主張する予備的訴因は,被告人が姦淫後に被害者の顔面を殴打して負傷させたというものでした。弁護人は,被害者の負傷は強姦とは別の理由により生じたものであるから,強姦罪と傷害罪が成立するにとどまると主張しました。



【検察官求刑】
・懲役6年


【主文】
・被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中90日をその刑に算入する。


【法令の適用】
犯罪事実第1の行為 包括して刑法220条
犯罪事実第2の行為 刑法177条前段
犯罪事実第3の行為 刑法204条


【判示事項】
「被告人と被害者の供述内容は,暴行の時期以外の点では大きな食い違いはなく,被害者が暴れた際に被告人が被害者の顔面を殴打したという点でも共通する。
 これを前提に,被害者の供述調書の信用性について検討すると,被害者にとっては,強姦の被害に遭うという重大な局面で受けた暴行については印象に残りやすいと考えられる。しかし他方,被害者は,姦淫される前後に,複数回にわたって意識がはっきりしない時期があり,また,本件直前には相当大量の酒を飲んでいたことなどからすると,認識と記憶の正確性には疑問を差し挟む余地がある(実際,強姦時の出来事の一部については姦淫との前後関係を覚えていなかったり,受けた暴行態様について曖昧な記憶しかない部分がある。)。また,被害者の供述によると,被害者はパンツを脱がされ,両足を開かれるなどした後に初めて抵抗したというのであるが,当初抵抗せず,その段階に至ってにわかに抵抗を始めたという経過にはやや不自然さが感じられる。加えて,被害者の供述時の具体的な状況は明らかでなく,記憶の鮮明さの程度や,捜査官の誘導の有無なども不明であることを踏まえると,被害者の供述調書が全面的に信用できると評価することはできない
 これに対し,被告人の供述内容はかなり具体的で,曖昧な点は少なく,前後の経過や他の客観的な証拠等に照らして明らかに不自然・不合理な点も認められない。そして,反対質問や補充質問を受けてもその供述内容は動揺していない。その供述態度には,自身に不利な点も含め事実をありのままに供述しようとする姿勢が見受けられ,暴行の時期についてのみあえて虚偽の供述をしているとも考えにくい。そうすると,被告人の供述は基本的に信用することができ,少なくとも,それが事実に反していると断定すべき決定的な事情は見出せない。
 以上からすると,暴行の時期について,主位的訴因に沿う被害者供述の信用性には疑問の余地があり,被告人供述を排斥することはできない。そして,被害者供述以外に主位的訴因を立証しうる証拠はない。したがって,被告人が姦淫前に被害者の顔面等を殴打し,負傷させたとは認められない。」


【雑感】
・量刑が求刑の半分というのは,検察の大敗北といってよいでしょう。そもそも,予備的訴因が設定されていることから,裁判所から検察官に内々に(または暗に)主位的訴因を認定できないという心証を伝えられていたのではないかと思います。

・今回の量刑が求刑のちょうど半分であることに疑問を抱いた方はいませんでしたか。判決書を読むと,本件はもう少し量刑が低くてもおかしくない事案です(ただし,累犯前科の内容がわからないので,それ次第ともいえますが)。裁判所が求刑の半額を下回る判決を書かないのは検察官が控訴審査にかけるのを嫌がって半額未満の量刑にしないためだと考えられます。
 控訴審査とは,検察庁内部で問題だと考える判決が裁判所から言い渡された場合に,事件を担当した検察官とその他の検察官とが,控訴するか否かを検討する場です。結局担当検事以外の上の決裁(次席・検事正・上級庁など)をこの後にとらないといけないので,この控訴審査の段階ですべてが決まるわけではないですが,逆にこの控訴審査にかからないと検察官は控訴しないわけですから,検察官の求刑に近い判決を書かない裁判所としては非常に気にすることになります。量刑が求刑の半額未満だとこの控訴審査にかかると言われています。
 そこで,思い切った判決が刑事事件で言い渡される場合でも,量刑が求刑の半分未満にはしないことが多いです。それは,控訴されたら自分の判断が覆されるかもしれないという原審裁判官のあまえです。
 本件がその意図をもってちょうど半分の量刑にしたか否かはわかりませんが,意外にこういう意図が隠されていることが多いことは知っていても悪くないと思います。弁護人の科刑意見が3年だったからだと思われるかもしれませんが,裁判所は弁護人の科刑意見はまったく気にしていないのが実情です(この弁護人はもっと低く言っておくべきだったと思いますが…)。

・以上,いろいろ言ってきましたが,本件の裁判官は強姦事件という被害者側のいうことをそのまま判決に書かないといろいろ世間から文句を言われるというプレッシャーの中で,自分の信念に従って,被害者の供述の信用性を否定した点はきちんと評価されるべきだと思います。これは私が弁護士だから,弁護人のいうとおりになったから評価しているのではまったくなく,あくまで法と証拠に基づいて判断するという裁判所の職責をきちんと果たした点を評価しているだけです。
 特に,民事・刑事を問わず,控訴審で覆されるのが嫌だから消極的な判決を書くという裁判官は不適格というほかなく,許せません。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2013-10-16 23:14 | 刑事事件

【国家賠償請求事件】横浜地裁小田原支部平成25年9月13日判決

【国家賠償請求事件】
・横浜地裁小田原支部平成25年9月13日判決・三木勇次裁判長
(事件番号:横浜地方裁判所小田原支部平成23年(ワ)第955号・損害賠償(国家賠償)請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83618&hanreiKbn=04


【事案の概要】
・被告市内において農業を営む原告に対して被告職員がした,原告所有地に井戸の設置は認められない旨の説明は,上記のような条例の解釈を誤った違法なものであり,被告には,国家賠償法1条1項に基づき,原告が水道敷設のため余分に負担した費用を賠償する責任があるとされた事例


【判示事項】
「不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点として損害の発生を知ったといえるためには,単に加害行為により損害が発生したことを知っただけではなく,その加害行為が不法行為を構成することを知ったことが必要と解すべきである(最高裁判所昭和42年11月30日第一小法廷判決・裁判集民事89号279頁参照)ところ,①法律の専門家でない一般市民にとって,本件条例を所管する被告の職員の説明に違法があると疑うことは容易ではないこと,②本件条例は,井戸設置の例外的許可事由として「水道水その他の水を用いることが困難なこと」及び「その他井戸を設置することについて市長が特に必要と認めるとき」と定めるにとどまり,原告において,自身がこの許可要件に該当するか否かを判断することは困難であること,③被告自身,本件訴訟の口頭弁論終結時に至るまで,一貫してBの説明の違法性を否定していることからすると,原告が,水道敷設工事を完了した時点において,Bの説明が不法行為を構成すると知ったということはできず,原告が損害の発生を知ったのは,早くとも,本件住宅完成後にG弁護士に相談したとき(平成21年4月20日から同年7月21日までの間)であったというべきである」


【雑感】
・時効の起算点についていいことを言っています。


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by lawinfo | 2013-10-03 23:03 | 行政訴訟