とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【不法原因給付】最高裁平成26年10月28日判決

【不法原因給付と破産管財人の権利行使】
・最高裁平成26年10月28日第三小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成24年(受)第2007号・不当利得返還等請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84582


【事案の概要】
・無限連鎖講をしていた破産会社の破産管財人が,被上告人と破産会社との間の契約が公序良俗に反して無効であるとして,当該契約により破産会社から違法な配当金を受けた被上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,上記の給付額の一部と遅延損害金の支払を求めた事案。
・原審(東京高裁平成24年6月6日判決)は,本件配当金の給付が不法原因給付に当たり,上告人は民法708条の規定によりその返還を請求することができないとして,上告人の請求を棄却した。


【主文】
「1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
2 被上告人は,上告人に対し,2133万2835円及びこれに対する平成23年6月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟の総費用は被上告人の負担とする」


【判示事項】
「本件配当金は,関与することが禁止された無限連鎖講に該当する本件事業によって被上告人に給付されたものであって,その仕組み上,他の会員が出えんした金銭を原資とするものである。そして,本件事業の会員の相当部分の者は,出えんした金銭の額に相当する金銭を受領することができないまま破産会社の破綻により損失を受け,被害の救済を受けることもできずに破産債権者の多数を占めるに至っているというのである。このような事実関係の下で,破産会社の破産管財人である上告人が,被上告人に対して本件配当金の返還を求め,これにつき破産手続の中で損失を受けた上記会員らを含む破産債権者への配当を行うなど適正かつ公平な清算を図ろうとすることは,衡平にかなうというべきである。仮に,被上告人が破産管財人に対して本件配当金の返還を拒むことができるとするならば,被害者である他の会員の損失の下に被上告人が不当な利益を保持し続けることを是認することになって,およそ相当であるとはいい難い。
 したがって,上記の事情の下においては,被上告人が,上告人に対し,本件配当金の給付が不法原因給付に当たることを理由としてその返還を拒むことは,信義則上許されないと解するのが相当である。」


【雑感】
・一審・二審(特に東京高裁)で敗訴したにもかかわらず,破産裁判所はよく破産管財人の上告受理申立てを許可したなぁと思います。まさに一発逆転の勝利だった事案といえます。
・結論としては妥当だとは思うものの,どちらかというと感情論で理論的にはいまいちスッキリしない理屈です。木内補足意見も併せて読むと,要は,破産者は悪徳会社でその会社からの請求は不法原因給付だけど,破産後は破産管財人というキレイな存在になったから,その管財人からの請求を拒むのは許されないといったにすぎないような気がします(「抗弁の切断」「抗弁の遮断」とでもいうのでしょうか)。
・個人的にはこれだけ時間をかけて,回収が現実にできたのか気になりますね。勝訴したものの,結局配当ができなかったとなれば,この最高裁の理屈も机上の空論にすぎなくなります。
・この判断がどこまでの射程があるかわかりませんが,今後,悪徳会社の破産管財人はその利益を受けたものに対し,徹底的に請求をし回収を図っていくべきだということになるんでしょうかね(もちろん費用対効果の点はありますが)。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2014-10-29 23:25 | 最高裁

【無罪判決】横浜地裁平成26年9月17日判決

【強制わいせつ無罪判決】
・横浜地裁平成26年9月17日第3刑事部判決・田村眞裁判長
(事件番号:横浜地方裁判所平成25年(わ)第461号・準強制わいせつ,強制わいせつ被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84568


【公訴事実】
「被告人は,
第1 平成23年11月下旬頃,横浜市鶴見区所在の当時の被告人方(以下「自宅」という。)において,就寝中の実子であるA(当時15歳)に対し,その着用していたブラジャーの中に手を差し入れて胸を手でもむなどし,目を覚ましたAが家庭崩壊等を恐れ,寝たふりをして抗拒不能の状態にあるのに乗じ,引き続き,Aの着用していたブラジャーの中に手を差し入れて胸を手でもんだ上,その着用していたパンティーの中に手を差し入れて陰部を手で触るなどし,もって人の抗拒不能に乗じ,わいせつな行為をし,
第2 平成24年5月6日頃,上記場所において,実子であるB(当時12歳)に対し,Bが13歳未満であることを
知りながら,その着用していたブラジャーをずらして胸を手でもむなどし,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。」


【主文】
「被告人は無罪。」


【雑感】
・強制わいせつ事件で証人が実際に出頭して証言したにもかかわらず,無罪判決になった珍しい判決。
・判決書2頁の前提事実の記載を見れば証言の信用性に疑問をもつのも不思議じゃない事案です。
・結局のところ,警察が十分な裏付け捜査をせず,検察もそれをただ追認するだけで起訴している事件で,ずさんな捜査をしているといわざるをえないでしょう。


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by lawinfo | 2014-10-27 23:08 | 刑事事件

【マタハラ訴訟】最高裁平成26年10月23日判決

【降格の形式的な同意とマタハラ訴訟】
・最高裁平成26年10月23日第一小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成24年(受)第2231号・地位確認等請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84577


【事案の概要】
・病院を複数運営する消費生活協同組合に雇用され副主任の職位にあった理学療法士が,労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換に際して副主任を免ぜられ,育児休業の終了後も副主任に任ぜられなかったことから,被上告人に対し,上記の副主任を免じた措置は雇用の分野における男女雇用機会均等法9条3項に違反する無効なものであるなどと主張して,管理職(副主任)手当の支払及び債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求める事案


【判示事項】
「一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ,上記のような均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば,女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は,原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解されるが,当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度,上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして,当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき,又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって,その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして,上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは,同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である。」


【雑感】
・本件はマスコミが広く報道しましたが,まったく内容のない報道でした。そもそも,純粋なマタニティ・ハラスメントは認められる余地がなく,それは原審の広島高裁もわかっています。そのため,本判決により,マタハラは違法であることが認められたなどという報道は完全に誤りで,この最高裁判決が出る前から違法です。
・本件で重要な点は,被処分者がとある事情により(判決書3頁(6)),自ら副主任の地位を解くように希望し,副主任の地位を解かれることを形式的に同意している点です。
 原審の広島高裁はこのような事情があるから処分を有効としたもので,このような事情がなければ広島高裁も違法と判断していたはずです。
・本最高裁判決の意義は,上記のような事情をも考慮し,形式的に同意があったと認定するのではなく,実質をちゃんと見ろよと下級審裁判所に訓示した点に意味があります。今後形式的な同意がある事案で,使いやすい事案だと思います。
・マタハラ以外でも,実質的な同意かどうかを裁判所が判断してくれるといいんですが…。


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by lawinfo | 2014-10-25 23:56 | 最高裁

【生活保護】最高裁平成26年10月23日判決

【生活保護の指示内容】
・最高裁平成26年10月23日第一小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成25年(受)第492号・損害賠償等請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84578


【事案の概要】
・生活保護受給者であった上告人が,京都市伏見福祉事務所長から,生活保護法施行規則19条により書面によって行われた同法27条1項に基づく指示に従わなかったとの理由で同法62条3項に基づく保護廃止決定を受けたことにつき,本件廃止決定はその指示の内容が客観的に実現不可能なものであるから違法であるなどとして,被上告人に対し,国家損害賠償をした事案。


【主文】
「原判決を破棄する。
 本件を大阪高等裁判所に差し戻す。」


【判示事項】
「本件指示書には,指示の内容として,本件請負業務による収入を月額11万円まで増収すべき旨が記載されているのみであり,本件自動車を処分すべきことも指示の内容に含まれているものと解すべき記載は見当たらないから,本件指示の内容は上記の増収のみと解され,処分行政庁が上告人に対し従前から増収とともにこれに代わる対応として本件自動車の処分を口頭で指導し,上告人がその指導の内容を理解しており,本件指示書にも指示の理由として従前の指導の経過が記載されていたとしても,本件自動車の処分が本件指示の内容に含まれると解することはできないというべきである」

「生活保護法27条1項に基づく指導又は指示の内容が客観的に実現不可能又は著しく実現困難である場合には,当該指導又は指示に従わなかったことを理由に同法62条3項に基づく保護の廃止等をすることは違法となると解される」


【雑感】
・本件で重要なのは,本事案の個別判断ではなく,判示事項の後の部分です。
・福祉事務所は生活保護受給者の実態を見ずに形式的に無茶な指示をする場合があります。
 本判決により,福祉事務所の生活保護受給者への指示が著しく実現困難である場合は,その指示に従わないことを理由とする保護の廃止等が違法であることが明確になったという意味で重要な意味をもつと考えられます。


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by lawinfo | 2014-10-24 23:38 | 最高裁

【無罪判決】大阪地裁平成26年9月3日判決

【無罪判決】
・大阪地裁平成26年9月3日第8刑事部判決・田口直樹裁判長
(事件番号:大阪地方裁判所平成25年(わ)第4935号・殺人被告事件・裁判員裁判対象事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84557


【公訴事実】
「被告人は,知的障害を有し,全身性エリテマトーデスに罹患していた長女のA(当時29歳)を介護していたものであるが,自己及び長女らの将来を悲観するなどし,同人と無理心中することを決意し,平成25年10月8日午後1時頃から同日午後4時47分頃までの間に,大阪府吹田市a町b丁目c番dハイツe号室被告人方風呂場において,長女に対し,殺意をもって,同人を浴槽内の湯水に沈め,よって,その頃,同所において,同人を溺水による窒息により死亡させて殺害した。」


【争点】
・責任能力の有無のみ。
・本件では検察官が心身耗弱を認め,弁護人が心身喪失を主張し,無罪を求めた。


【本件のポイント】
・被害者は被告人の娘で,知的障害があり,難病認定もされている「全身性エリテマトーデス」に罹患しており,うつ病に罹患していた被告人は娘と無理心中をする目的で娘を殺害。その後,被告人は入水自殺を図り,池の中で浮いていたところを救助された(判決書3頁)。


【参考:公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター 】
URL:http://www.nanbyou.or.jp/entry/53


【求刑】
・懲役4年


【主文】
・被告人は無罪


【判示事項】
「証拠上,被告人がどのような出来事を直接的な動機として本件殺害行為に及んだかは必ずしも判明せず,夫やヘルパーが認識している本件殺害行為当日の被告人の様子に自殺に至るような事情もうかがえず,被告人は突発的に無理心中を決意したと考えられ,それまで被害者に愛情を注いで養育してきた被告人が本件殺害行為を行った原因としては,大うつ病性障害の影響以外には考えることができない。したがって,被告人は大うつ病性障害の影響のみにより本件殺害行為に及んだ可能性を排斥できず,自分の意思で思いとどまることが全くできない状態に至っていなかったというには,合理的な疑いが残るとの判断に至った。」


【雑感】
・この事件を見て「京都認知症母殺害心中未遂事件(京都地裁平成18年7月21日判決・東尾龍一裁判長)」を思い起こしました。
・今後訪れる超高齢化時代では,このような介護をめぐる問題は他人事ではありません。自分にも起こりうる問題としてこの問題を見ていく必要があります。
・このかなりの難事件を担当した裁判員の方々には敬意を表したいと思います。


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by lawinfo | 2014-10-15 23:08 | 刑事事件

【石綿】最高裁平成26年10月9日判決

【石綿国賠請求事件】
・最高裁平成26年10月9日第一小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成23年(受)第2455号・損害賠償請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84545


【判示事項】
「以上の諸点に照らすと,労働大臣は,昭和33年頃以降,石綿工場に局所排気装置を設置することの義務付けが可能となった段階で,できる限り速やかに,旧労基法に基づく省令制定権限を適切に行使し,罰則をもって上記の義務付けを行って局所排気装置の普及を図るべきであったということができる。そして,昭和33年には,局所排気装置の設置等に関する実用的な知識及び技術が相当程度普及して石綿工場において有効に機能する局所排気装置を設置することが可能となり,石綿工場に局所排気装置を設置することを義務付けるために必要な実用性のある技術的知見が存在するに至っていたものと解するのが相当である。
 そうすると,昭和33年当時,労働大臣が,旧労基法に基づく省令制定権限を行使して石綿工場に局所排気装置を設置することを義務付けることが可能であったと解する余地があり,そうであるとすれば,同年以降,労働大臣が上記省令制定権限を行使しなかったことが,国家賠償法1条1項の適用上違法となる余地があることになる。」


【雑感】
・久しぶりに見た国の行為の違法を認める可能性を残す最高裁判決。原審に表れているとおり,国の責任をどうしても認めない判断をしておけば,最高裁で覆されることはないという事なかれ主義にはうんざりです。
・本判決の判決書16頁の「違法となる余地がある」という表現がすごく微妙ですが,同日の最高裁判決(最高裁判所平成26年(受)第771号)が,国の違法性を認めた大阪高裁平成25年12月25日判決を維持している(正確には一部取り消し)ことから,国の責任を否定した本判決も差戻審で覆ることになるでしょう。


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by lawinfo | 2014-10-09 23:25 | 最高裁