とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
by lawinfo
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

<   2015年 03月 ( 8 )   > この月の画像一覧


【工作物責任】札幌地裁平成27年3月26日判決

【野球のファウルボールと工作物責任】
・札幌地裁平成27年3月26日民事第3部判決・長谷川恭弘裁判長
(事件番号:札幌地方裁判所平成24年(ワ)第1570号・損害賠償請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85019

【事案の概要】
・原告が,「札幌ドーム」の1塁側内野席において,平成22年8月21日行われたプロ野球の試合を観戦中,打者の打ったファウルボールが原告の顔面に直撃して右眼球破裂等の傷害を負った事故について,被告らがファウルボールから観客を保護する安全設備の設置等を怠ったことが原因であるなどと主張し,①本件試合を主催し,本件ドームを占有していた被告株式会社北海道日本ハムファイターズに対し,a 工作物責任(民法717条1項),b 不法行為(民法709条),c 債務不履行(野球観戦契約上の安全配慮義務違反)に基づき,②指定管理者として本件ドームを占有していた被告株式会社札幌ドームに対し,a 工作物責任(民法717条1項),b 不法行為(民法709条)に基づき,③本件ドームを所有していた被告札幌市に対し,a 営造物責任(国家賠償法2条1項),b 不法行為(民法709条)に基づき,連帯して,本件事故による4659万5884円の損害賠償を請求した事案。


【判示事項】
「プロ野球の試合の観客に求められる注意義務の内容は,試合の状況に意識を向けつつ,グラウンド内のボールの所在や打球の行方をなるべく目で追っておくべきであるが,投手が投球し,打者が打撃によりボールを放つ瞬間を見逃すことも往々にしてあり得るから,打者による打撃の瞬間を見ていなかったり,打球の行方を見失ったりした場合には,自らの周囲の観客の動静や球場内で実施されている注意喚起措置等の安全対策を手掛かりに,飛来する打球を目で捕捉するなどした上で,当該打球との衝突を回避する行動をとる必要があるという限度で認められるのであって,かつそれで足りるというべきである(例えば,高く打ち上がり飛行時間も長いいわゆるフライ性の打球について,観客がその所在を見失ったりした場合に,注意喚起の措置や周囲の状況等から当該打球を目で捕捉して,これとの衝突を回避する義務があるとすることは相当であり,漫然と回避行動をとらなかった者は,プロ野球の試合を観戦する際に求められる基本的な注意義務を怠ったものと解されよう。)。」


【雑感】
・観客に注意義務を認めるのはさすがに疑問があります。この裁判体は最終的には原告に対する損害賠償請求を肯定していますが,観客は常に気をはってスポーツ観戦をしなければいけないというのはいくらなんでも非常識でしょう。
・この裁判体はいろいろな事情を拾って観客を勝たせてあげたいという思いは伝わってきますが,いろいろなことに手を広げた結果,あまりすっきりとした判決になっていない気がします。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
[PR]

by lawinfo | 2015-03-31 23:01 | 損害賠償請求

【無罪判決】大阪高裁平成27年2月13日判決

【高裁破棄無罪判決】
・大阪高裁平成27年2月13日第6刑事部判決・笹野明義裁判長
(事件番号:大阪高等裁判所平成26年(う)第980号・強制わいせつ致傷被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84952


【公訴事実】
「被告人は,平成25年6月3日午前1時頃から同日午前1時36分頃までの間,京都市a区b町c番地d所在のカウンターバー「C」店内において,Aに対し,強いてわいせつな行為をしようと企て,「われ,ただで済むと思うなよ。分かってんのか。われ,承知せえへんぞ。」などと語気鋭く申し向け,両手で同女の両肩をつかんでその身体を揺さぶるなどした上,両手で同女の身体を床に押し倒して,仰向けになった同女の両肩を床に押さえつけ,さらに,同女が履いていたタイツ及びショーツを脱がせるなどの暴行を加え,左手で着衣の上から同女の乳房を揉むとともに,その陰部を手指で弄ぶなどし,もって強いてわいせつな行為をし,その際,前記一連の暴行により,同女に約1週間の通院加療を要する右下腿打撲傷,右大腿打撲傷の傷害を負わせた」


【主文】
「原判決を破棄する。
 被告人は無罪。」


【判示事項】
「Aの原審証言の信用性を認めた理由のうち,掌紋と整合するとの点は明らかに前提事実を誤ったものであり,それを踏まえて,改めてAの原審証言の信用性に関して原判決が説示する点を検討すると,そもそもAの原審証言には,核心部分等に種々問題があり,それ自体全面的に信用できるようなものではなく,原判決が動かし難いとした事実やその事実から推認した内容にも疑問があり,Bの原審証言や負傷状況との整合性がAの原審証言を補強する力はさほど強いものではなく,また,Aに虚偽申告の動機がおよそないとまでいえない。そうすると,認定の核となるべきAの原審証言の核心部分が信用できないことに帰するのであるから,Aから相談を受けた者の証言がAの一部証言と整合することや,Aがその証言と矛盾しない傷を負っていることがあったとしても,原判示の事実の限度とはいえAの原審証言の信用性を認め,原判示の事実について合理的疑いを容れない程度の立証がされているとした原判決は,論理則,経験則等に照らして不合理というほかない。」


【雑感】
・この判決を書いた部長は京都地裁時代に,自ら書いた判決(京都府舞鶴女子高生殺害事件)について,目撃証言の信用性の点で大阪高裁に逆転無罪にされた経験を有するようです。
・その後,ご自身が大阪高裁の部長になると,本件で京都地裁の被害者証言の信用性の点で逆転無罪にしているところからすると,証言の信用性を厳しく判断されるようになったのかもしれませんね(影響があるかはわかりませんが)。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
[PR]

by lawinfo | 2015-03-20 23:38 | 刑事事件

【無罪判決】京都地裁平成27年3月2日判決

【自殺か他殺か】
・京都地裁平成27年3月2日第1刑事部判決・後藤眞知子裁判長
(事件番号:京都地方裁判所平成25年(わ)707号・殺人被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84958


【公訴事実】
・被告人は,平成24年11月9日午後8時25分頃から同日午後10時51分頃までの間,滋賀県内,三重県内,京都府内又はその周辺において,殺意をもって,内縁の妻であるA(当時47歳)の頸部にタオルを巻いて絞め付け,よって,その頃,同所において,絞頸による窒息により死亡させて殺害した。


【争点】
・被害者は自殺か他殺か


【検察官の求刑】
・懲役7年,本件タオルの没収


【主文】
・被告人は無罪


【判示事項】
「法医学的,物理的な見地からみて,Aが本件タオルを用いて本件車両の助手席で自殺した可能性を排除することができない一方で,その他,被告人がAを殺害したことを有意に推認させる事情も認められない。そうすると,結局,神経症の症状が悪化し,自殺を企図するような言動もしていたAが,自殺ではなく,被告人によって殺害されたと認めるにはなお合理的な疑いが残るといわざるを得ない」


【雑感】
・認定が非常に難しい事件です。裁判官次第で有罪認定しかねない事案で,刑事裁判っておそろしいものだと心底思いました。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
[PR]

by lawinfo | 2015-03-19 23:19 | 刑事事件

【外れ馬券の経費性】最高裁平成27年3月10日判決

【外れ馬券の経費該当性】
・最高裁平成27年3月10日第三小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成26年(あ)第948号・所得税法違反被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84934


【事案の概要】
・被告人は,馬券を自動的に購入できる市販のソフトを使用して馬券を購入していた。被告人は,同ソフトを使用して馬券を購入するに際し,馬券の購入代金の合計額に対する払戻金の合計額の比率である回収率を高めるように,インターネット上の競馬情報配信サービス等から得られたデータを自らが分析した結果に基づき,同ソフトに条件を設定してこれに合致する馬券を抽出させ,自らが作成した計算式によって購入額を自動的に算出していた。この方法により,被告人は,毎週土日に開催される中央競馬の全ての競馬場のほとんどのレースについて,数年以上にわたって大量かつ網羅的に,一日当たり数百万円から数千万円,一年当たり10億円前後の馬券を購入し続けていた。実際に本件の公訴事実とされた平成19年から平成21年までの3年間は,平成19年に約1億円,平成20年に約2600万円,平成21年に約1300万円の利益を上げていた。


【判示事項】
「被告人が馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ,一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するといえるなどの本件事実関係の下では,払戻金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たるとした原判断は正当である。
(中略)
外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金という費用が当たり馬券の払戻金という収入に対応するなどの本件事実関係の下では,外れ馬券の購入代金について当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができるとした原判断は正当である。」


【雑感】
・1審以来非常に興味のあった事件。最高裁も結論として,外れ馬券の購入費用を必要経費と認めました。
・しかし,1審以来気になっていたのですが,あくまでこの結論は,本件のようないわば職業的な自動ソフトを使った場合のみで,趣味程度では経費として認められないのではないかと思います。この判決によって,経費申告する人は,本判決の射程が及ばないという判断もありうることを肝に銘ずるべきです。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
[PR]

by lawinfo | 2015-03-10 23:40 | 最高裁

【貸金業者の対応】SFコーポレーションのその後⑥

【SFコーポレーションのその後⑥】
・破産管財人のHPが更新されています。
クロスシードと投資会社らに対する貸金返還等請求事件の判決(東京地方裁判所平成25年(ワ)第1680号)が,平成27年3月4日に東京地裁民事第5部によって言い渡されたようです。
URL:http://sf-corp.jp/news/20150306.html

・それによると以下のとおりの結果になったようです。
 被告クロスシード:全部認容
 被告投資会社6社:一部認容(各2000万円の限度で認容)

・投資会社から判決どおり回収できれば,クレディア分と合わせて配当原資がそこそこになりそうなので,管財人には今後とも破産財団の増殖に励んでほしいところです。

・いつもいっていますが,どこぞの破産管財人と異なり,この破産管財人(鈴木銀治郎先生)は迅速かつ割と詳しめに情報公開しており,高く評価されるべきだと考えています。破産管財人代理も含めると多数いる割に,全然情報公開せず,ろくに財団増殖もできていない某会社の破産管財人の報酬は低く算定されるべきです。裁判所はこういうところも含めてきちんと管財人報酬を設定するべきです。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
[PR]

by lawinfo | 2015-03-06 23:51 | 貸金業者の対応

【損益相殺】最高裁平成27年3月4日大法廷判決

【遺族補償年金と損益相殺】
・最高裁平成27年3月4日大法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成24年(受)第1478号・損害賠償請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84909


【事案の概要】
・Aは,長時間の時間外労働や配置転換に伴う業務内容の変化等の業務に起因する心理的負荷の蓄積により,精神障害(鬱病及び解離性とん走)を発症し,病的な心理状態の下で,平成18年9月16日,死亡した。Aの相続人である上告人らが,Aを雇用していた被上告人に対し,不法行為又は債務不履行に基づき,損害賠償を求めた。
・上告人らは,労働者災害補償保険法に基づく葬祭料と遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定している。


【争点】
・遺族補償年金についてAの死亡による逸失利益の元本との間で損益相殺的な調整をした原審の判断は,遺族補償年金等がその支払時における損害金の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは,遅延損害金の支払債務にまず充当されるべきものであるとした最高裁平成16年(受)第525号同年12月20日第二小法廷判決・裁判集民事215号987頁に反するか。


【判示事項】
「不法行為による損害賠償債務は,不法行為の時に発生し,かつ,何らの催告を要することなく遅滞に陥るものと解されており(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照),被害者が不法行為によって死亡した場合において,不法行為の時から相当な時間が経過した後に得られたはずの利益を喪失したという損害についても,不法行為の時に発生したものとしてその額を算定する必要が生ずる。しかし,この算定は,事柄の性質上,不確実,不確定な要素に関する蓋然性に基づく将来予測や擬制の下に行わざるを得ないもので,中間利息の控除等も含め,法的安定性を維持しつつ公平かつ迅速な損害賠償額の算定の仕組みを確保するという観点からの要請等をも考慮した上で行うことが相当であるといえるものである。
 遺族補償年金は,労働者の死亡による遺族の被扶養利益の喪失の塡補を目的とする保険給付であり,その目的に従い,法令に基づき,定められた額が定められた時期に定期的に支給されるものとされているが(労災保険法9条3項,16条の3第1項参照),これは,遺族の被扶養利益の喪失が現実化する都度ないし現実化するのに対応して,その支給を行うことを制度上予定しているものと解されるのであって,制度の趣旨に沿った支給がされる限り,その支給分については当該遺族に被扶養利益の喪失が生じなかったとみることが相当である。そして,上記の支給に係る損害が被害者の逸失利益等の消極損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有することは,上記のとおりである。
 上述した損害の算定の在り方と上記のような遺族補償年金の給付の意義等に照らせば,不法行為により死亡した被害者の相続人が遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定することにより,上記相続人が喪失した被扶養利益が塡補されたこととなる場合には,その限度で,被害者の逸失利益等の消極損害は現実にはないものと評価できる
 以上によれば,被害者が不法行為によって死亡した場合において,その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,その塡補の対象となる損害は不法行為の時に塡補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが公平の見地からみて相当であるというべきである(前掲最高裁平成22年9月13日第一小法廷判決等参照)。
 上記2の事実関係によれば,本件において上告人らが支給を受け,又は支給を受けることが確定していた遺族補償年金は,その制度の予定するところに従って支給され,又は支給されることが確定したものということができ,その他上記特段の事情もうかがわれないから,その塡補の対象となる損害は不法行為の時に塡補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが相当である。
(3) 以上説示するところに従い,所論引用の当裁判所第二小法廷平成16年12月20日判決は,上記判断と抵触する限度において,これを変更すべきである。」


【参考判例(最高裁平成16年12月20日第二小法廷判決)】
「被上告人らの損害賠償債務は,本件事故の日に発生し,かつ,何らの催告を要することなく,遅滞に陥ったものである(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照)。本件自賠責保険金等によっててん補される損害についても,本件事故時から本件自賠責保険金等の支
払日までの間の遅延損害金が既に発生していたのであるから,本件自賠責保険金等が支払時における損害金の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは,遅延損害金の支払債務にまず充当されるべきものであることは明らかである(民法491条1項参照)」
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62604


【雑感】
・久しぶりの大法廷による判例変更。変更された方の上記最高裁判決は,民法491条からあっさり遅延損害金から充当されることは明らかであると言い切っていますが,それが約10年後に変更されることになりました。
・矛盾する2つの最高裁判決をどちらに統一するかが争点でしたが,元本から充当するということで実務は確定したといえます。
・遅延損害金から充当せず元金から充当することで,金額としてはかなり減ることになります。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
[PR]

by lawinfo | 2015-03-04 23:21 | 労働事件

【弁護士向け】翻訳サービス利用の注意点

【弁護士向け注意喚起】
・日弁連からメールが回ってきたとおり,弁護士がインターネット上の翻訳サービスを利用したところ,外国人の被告人との連絡文書がインターネット上で閲覧可能な状態になったとのことです。
URL:http://www.ipa.go.jp/about/press/20150220.html


・北千住パブリック法律事務所が,平成23年12月に,メーリングリストで強姦事件の被害者の氏名等の漏洩をしたように,問題が続発しています。このような事態を重く見て細心の注意を払う必要があるでしょう。
URL:http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2012/opinion_120314_3.pdf
なお,北千住パブリック法律事務所は公設事務所でありながら,このようなお粗末なことをしでかしたわけですが,その処分が甘すぎて疑問に思っています。

・会員のお金を使って事務所を運営しながら,われわれ弁護士のイメージを悪くするという重大な非違行為に対して,弁護士会として厳しく対応をしないのが不思議でなりません。

・このような大失態を演じたこの事務所が,10周年記念シンポジウムを開催したことにはさすがに失笑しました。
URL:http://kp-lawblog.jp/?page=5


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
[PR]

by lawinfo | 2015-03-02 23:05 | 時事ネタ

【無罪判決】千葉地裁平成27年1月14日判決

【満員電車内における痴漢行為と無罪判決】
・千葉地裁平成27年1月14日刑事第1部判決・井筒径子裁判長
(事件番号:千葉地方裁判所平成26年(わ)第1077号・公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84886


【公訴事実】
「被告人は,平成26年4月24日午後6時52分頃から同日午後6時56分頃までの間,千葉県習志野市(以下省略)所在のA電鉄株式会社B駅から同県八千代市(以下省略)所在の同会社C駅までの間を走行中の電車内において,乗客のD(当時20歳)に対し,同人の着衣の上からその乳房を手でもみ,もって公共の乗物において,女子を著しくしゅう恥させ,かつ,女子に不安を覚えさせるような卑わいな言動をした」


【求刑】
・懲役4月


【判示事項】
「(2) 犯人性について
 被害者は,被告人を犯人であると判断した理由について,もんでいる手の動きを1回見てから被告人の顔を確認したなどと供述している。そして,その手については,握ったり開いたりし,親指を除いた4本の指が触れている様子が分かる右手であるなどと供述しているのでこの点の信用性を検討する。
ア まず,犯人の手が被告人の手であると判断したのは,犯人の手の動きを見たことと,被告人の顔を確認したことであると供述するにとどまっており,犯人の手の動きと,被告人の顔がどのように結びつくのかについては述べていない。被害者が犯人の手が被告人のものであると判断した過程には飛躍があるといわざるを得ない
 検察官は,被害者は,左乳房をもんでいる手をたどると被告人の顔を確認することができた旨供述しており信用できると主張するが,この供述は,検察官の「その手は,おじさんから伸びていたおじさんの手であるということを確認したということですか。」という誘導的な質問に「はい。」と述べたものに過ぎず,被害者自らが被告人の右手であると判断した過程を具体的に述べたものとはいい難い。 また,被害者は,被害者の左胸を触った手は右手であると供述するが,右手と判断した根拠についても述べていない。被害者の供述から犯人の手が右手であったと認定することにも疑いが残る。 仮に犯人の手が右手であった場合,その手が被告人の手であるかについてさらに検討する。被害者が述べる被告人との立ち位置(被害者の正面で被告人が左向きに立っている状態)からすれば,被告人は,右腕を体に沿わせるようにして左側に伸ばさなければ被害者に接触することは難しい。被害者は,被告人は腕を組んでおり,右手の平は左肘の下にあって,肘に当たっていない状態であったと述べるが,少なくともそのような体勢を取らなければ,被害者に接触することは困難であるといえる。
 しかし,上記の被害者と被告人との位置関係や,足の踏み場もなく身動きができない満員電車の中であったことに照らすと,被害者には被告人の正面や右側はよく見えないはずである。しかし被害者は,被告人の体勢について,左手の平が右肘に当たっていた旨述べるなど,あたかも被告人の正面を見たように供述している。被害者が,胸を触った手が被告人の右手であることを前提に,被告人の体勢を推測したとの疑いが払拭できない。したがって,犯人の手が被告人の右手であると認定するには疑いを入れざるを得ない。 検察官は,被害者は一度胸に違和感を感じた後,再度左乳房に触れているのを気づいた状況からして意識的に左乳房をもんでいる右手やその右手の顔を確認したと認められること,また,被告人とは至近距離にあり視認状況にも特段の問題はないことから別人の手を被告人の手と見間違う可能性はないと主張する。しかし,既述のとおり,犯人の右手やその顔を確認した過程についての供述の信用性には疑いを入れる余地があり,また,車内の混雑状況や被告人と被害者との位置関係からすれば視認状況に問題がなかったともいえないというべきである。」


【雑感】
・この手の事件は事実認定が大変難しく,高裁でバンバン破棄されるので,1審裁判官も無罪判決を書くのはとても勇気のいることです。
・この裁判官は検察官の誘導的質問を誘導的だと非難していますが,実際の刑事裁判は堂々と誘導尋問で有罪を認定することが多く,ひどい裁判官は検察官が被害者の決定的な証言を聞き出せない場合は,自ら被害者に補充質問で証言させることがほとんどです。
・その意味でこの裁判官は大変公正な審理をしていますが,刑事裁判の最大の癌は高裁だとずっとこのブログで言ってきているとおり,この事件が検察官によって控訴されていれば高裁で破棄される可能性は十分にあると思います。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
[PR]

by lawinfo | 2015-03-01 23:07 | 刑事事件