とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【最高裁】ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査報告書

【ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査報告書・最高裁判所裁判官会議談話】
・国がこぞって人権侵害をし,それに裁判所も加担していたことを認める報告書は,今後同様な人権侵害にわれわれが加担しないことの戒めとして,法曹関係者は一読しておくべきでしょう。

URL:http://www.courts.go.jp/about/siryo/hansenbyo_chousahoukokusyo_danwa/

・今考えれば,このような謝罪も,ひとつの地裁判決(熊本地裁平成13年5月11日判決・熊本地方裁判所平成10年(ワ)第764号,第1000号,第1282号,平成11年(ワ)第383号)が国家賠償請求を認容したからこそです。

・内閣は平成13年5月25日付内閣総理大臣談話で,国会は平成13年6月7日衆参両院決議で,上記熊本地裁判決後迅速に対応しているのに,最高裁は,それから約15年もたって声明を出しているところに,裁判所の後ろ向きな姿勢が看てとれます。

・特に,有識者委員会は明確に憲法違反を指摘しているのに,最高裁は裁判所法違反というレベルに抑え,意地でも憲法違反を犯したとは言いたくないようです。


・最後に,有識者委員会意見の「はじめに」の部分は,なんでこんなに最高裁を持ち上げているんですかね。こんな最高裁の遅きに失する対応に対し,「敬意を表する」などというのは,この人たちの感覚に違和感を覚えざるを得ません。もちろん,この部分は最高裁事務総局の作文なのでしょうが,これを不要として削除をする決定をしなかった下記有識者委員会もどうかと思います。特に,学者や研究者,元裁判官はともかく,弁護士枠の人は何を考えているんでしょうかね。

【有識者委員会委員】
座長 井上英夫・金沢大学名誉教授
    石田法子・平成26年度大阪弁護士会会長
    大塚浩之・読売新聞論説副委員長
    川出敏裕・東京大学大学院法学政治学研究科教授
    小西秀宣・元東京高裁部総括判事・元法務省人権擁護局長


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2016-04-25 23:51 | 最高裁

【損賠否定】最高裁平成28年4月21日判決

【未決勾留者と安全配慮義務】
・最高裁平成28年4月21日判決
(事件番号:最高裁判所平成26年(受)第755号・損害賠償請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85846


【判示事項】
「未決勾留は,刑訴法の規定に基づき,逃亡又は罪証隠滅の防止を目的として,被疑者又は被告人の居住を刑事施設内に限定するものであって,このような未決勾留による拘禁関係は,勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され,法令等の規定に従って規律されるものである。そうすると,未決勾留による拘禁関係は,当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上の安全配慮義務を負うべき特別な社会的接触の関係とはいえない。したがって,国は,拘置所に収容された被勾留者に対して,その不履行が損害賠償責任を生じさせることとなる信義則上の安全配慮義務を負わないというべきである。」


【雑感】
・法律家らしいわかりにくいレトリックで,あんまりすっきりしませんね。

・じゃあ,国賠請求も控訴して,国賠も残しておいたら認めてくれたかというとそれもないんでしょうから(時効かどうかとも関係なく),結局損害賠償請求を認める考えはなかったと一言言っておいてくれた方がすっきりします。

・まあ,最高裁があえてこの事案をHPに掲載したのは,今後,未決勾留者の事案で,安全配慮義務構成をとってくれるなよ,国賠請求権の時効が過ぎたらおとなしく請求自体をやめろよという我々弁護士への戒めでしょう。


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by lawinfo | 2016-04-22 23:21 | 最高裁

【貸金業者の対応】旧武富士その後⑦

【貸金業者の対応】旧武富士その後⑦
・最高裁平成28年3月15日第三小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成26年(受)第2454号・損害賠償請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85749


【判示事項】
「原審は,上告人Y2による前記3①から⑤までの各事項の提示時期等を問題とする。しかしながら,上記各事項が提示された時点において,Aが本件取引に係る信託契約の受託者や履行引受契約の履行引受者との間で折衝に入り,かつ,上記事前調査の予定期間が経過していたからといって,本件取引の実施を延期し又は取りやめることが不可能又は著しく困難であったという事情はうかがわれない。そして,本件仕組債が上告人Y2において販売経験が十分とはいえない新商品であり,Cらが金融取引についての詳しい知識を有しておらず,本件英文書面の訳文が交付されていないことは,国際的に金融事業を行い,本件取引について公認会計士らの意見も求めていたAにとって上記各事項を理解する支障になるとはいえない。
したがって,上告人Y2が本件取引を行った際に説明義務違反があったということはできない。」


【雑感】
・メリルリンチの説明義務違反が問題となった,武富士最後の訴訟である本件訴訟は管財人の逆転敗訴で終わりました。これが残っていたため,更生手続がなかなか終わらなかったので残念ですね。ただ,もう武富士のことは誰も気にしなくなっていた時期なだけに,敗訴でもあまり話題になりませんでした。

・管財人の敗訴に関するコメント
URL:http://www.tfk-corp.jp/pdf/160318.pdf

・原審東京高裁(平成25年(ネ)第4770号)は,配当金を増やすために無茶をしたんでしょうね。まあ,もともと,この事件は武富士自身が会社更生前にメリルリンチを相手に訴訟をしていた事件で,一審で敗訴し,管財人が引き継いだら二審で勝っちゃったという事件なので,上告審で負けたのは管財人のせいではないと思います。

・今後の旧武富士の更生手続は以下を参照してください。
URL:http://www.tfk-corp.jp/news.html


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by lawinfo | 2016-04-06 23:01 | 貸金業者の対応

【無罪判決】横浜地裁平成28年1月29日判決

【無罪判決】
・横浜地裁平成28年1月29日第1刑事部判決・足立勉裁判長
(横浜地方裁判所平成27年(わ)第849号・ 暴力行為等処罰に関する法律違反,傷害被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85810


【公訴事実】
「被告人は,平成27年5月25日午前零時40分頃,横浜市内のa荘A方において,同人(当時49歳)に対し,その顔面を殴るなどの暴行を加えた上,持っていた包丁(刃体の長さ約21.3センチメートル)の刃先をその喉元に突き付け,「殺すぞ」などと言い,もって凶器を示して脅迫し,さらに,同人を畳に仰向けに倒して馬乗りになり,その右腕を左手でつかんだ上,その左顔面直近の位置において,包丁の刃先を畳に数回突き刺すなどの暴行を加え,よって,同人に全治約1週間を要する口唇部挫傷,右上腕部挫傷の傷害を負わせたものである。」


【争点】
①被害者(とされる人物)証言の信用性
②正当防衛の成否


【求刑】
・懲役2年


【主文】
「被告人は無罪。」


【判示事項】
「被告人供述は,A証言に勝るとも劣らない具体性,迫真性を備えており,被告人とAが口論に至った経緯についても,2人の間で本件前日に交わされたラインのやり取りや,AがBに対して抱いていた感情に照らし,自然な内容といえる。
そして,前記のとおり,Aには,感情的にかなり不安定な面があり,被告人と口論するなどして興奮状態になると,時に自傷行為を含め突飛な行動に出ることがあるのであり,被告人が,興奮して外へ出ようと暴れるAを落ち着かせるために,Aを組み伏せた上,その顔を平手で叩くなどして制止しようとしたが,目を離した隙にAが窓から飛び降りていた,という被告人の述べる一連の事実経過は,Aの行動傾向を踏まえれば,十分あり得る出来事といえる。
この点,検察官は,以前に包丁で自傷行為に及んだことがあったというAがまたしても自傷行為に及ぼうとしていると認識しながら,その場を収拾するには突飛な行動に出るしかないと思って包丁を持ち出したのは不自然,不合理であると主張する。しかし,空手の有段者であるAが約30分もの間興奮して暴れていたという状況を前提とすると,これを収拾するためにはA以上の突飛な行動をするしかないと考えたこと自体は了解可能であり,不自然,不合理であるなどとはいえない。」

「思うに,本件で想定されるAの自傷行為は,Aが自身の胸部や腹部を包丁で刺すなどという生命に危険が及びかねない行為であって,自殺関与罪が刑法上規定されていることも踏まえると,違法と評価すべきものと解される。そうすると,被告人による本件行為は,Aが外出して自傷行為に及ばないようにAを制止する目的からなされたものであり,Aの生命身体という法益に対する不正の侵害が切迫した状況において,これを防衛するためになされた行為というべきである。また,女性ではあるが空手の有段者であり,被告人に激しく抵抗していたAを制止するには,ある程度の有形力行使は避けられなかったと思わること,本件行為によりAが負った傷害の程度も全治約1週間にとどまることに照らせば,本件行為は,防衛手段として必要かつ相当なものであったと認められる。
したがって,被告人の本件行為については,正当防衛が成立する。」


【評価】
・被害者・被告人のどちらかがウソをついているため,事実認定がすごく難しい事案ですね。
一方が元自衛官で,女性が空手の有段者というどちらも力がある人物の間で行われた事件で,判決書を読んでいるだけではどちらの主張が正しいともいえません(証言を間近で聞くと違うかもしれませんが)。

・判断者が変われば180度事実認定が異なりうる事案であり,裁判の怖さを痛感する事案です。これを司法研修所の二回試験素材にすると,とても修習生が悩む事案になりそうです。まあ,刑裁起案よりは,弁護起案向きでしょうか。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2016-04-01 23:25 | 刑事事件