とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【取調べ違法】大阪地裁平成28年3月25日判決

【取調べ違法】
・大阪地裁平成28年3月25日第16民事部判決・森木田邦裕裁判長
(事件番号:大阪地方裁判所平成27年(ワ)第1715号・損害賠償請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85887


【判示事項】
「(エ)高齢者である原告を侮辱する言動
 B警察官は,前記(1)シのとおり,「うるさいな。人の揚げ足ばっかりとって。80まで生きてそれか。くだらんな,不毛や。俺もこんなんなんのかな。」「人間やっぱり年っていうたらプライドだけが残るな。」などと発言しているところ,発言の経緯からすると,B警察官が話を聞いてくれないから供述しないと述べた原告の態度を非難するために,原告が高齢者であるからプライドだけが残っているなどと侮辱したものというべきである(前記(1)シ)。原告は,B警察官の見立てに対して反論しようとしたところ,B警察官から反論を聞かない旨言われたのであって(前記(1)シ),かかる経緯からすれば,原告が自らへの嫌疑を否定するために,B警察官が言い分を聞いてくれるまで供述を拒否することは,不当なものとはいえず,B警察官の発言の揚げ足をとるものであるともいえない。そして,B警察官の上記発言が,前記(ウ)のような原告の人生を全否定するような発言に引き続いてなされていることも考え併せると,殊更に原告の人格を攻撃する態様でなされた不当な取調べであったというべきである。」

「上記のとおり,原告は,9月11日の取調べにおいて,B警察官から供述や自白を強いられるような言動を受け,自らの人生を否定するかのような侮辱的で不当な人格攻撃にわたる発言を受けたこと,また,同日の取調べ後に,自らの意思に反して指印を強いられ,11月7日の取調べにおいて,供述調書への追記も不当に拒絶されたことなど,国賠法条1条1項の適用上違法というべき行き過ぎた犯罪捜査により,その人格権を侵害されたものと認められる。ただし,証拠(甲15,16)によれば,9月11日の取調べにおいて,原告は,その持ち前の精神的な強さをもって若いB警察官と対峙し,丁々発止のやり取りを展開する場面もあり,自白するまでに精神的に追い込まれたとはいえないこと等をも併せ考慮すれば,原告が人格権を侵害されたことにより受けた精神的苦痛に対する慰謝料としては,100万円を認めるのが相当である。」


【雑感】
・この手の事件で100万円が認められるのは非常に稀で,裁判所は警察のやったことが違法であると事実認定することすら躊躇します。その意味で,勇気のある判断なのかもしれません。

・この手の事件では,請求を認める場合でも仮執行宣言をビビってつけない裁判官も多いですが,これはつけてますね。

・この判決書の損害論の部分のただし以下(40頁)の「原告は,その持ち前の精神的な強さをもって若いB警察官と対峙し,丁々発止のやり取りを展開する場面もあり,自白するまでに精神的に追い込まれたとはいえないこと等」というくだりが笑えました。大阪らしいやり取りですね。請求額200万円を認容額100万円に落とす理由付けは,もう少し別の表現があったのではないかと思います。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2016-05-26 23:15 | 損害賠償請求

【再審開始決定】札幌地裁平成28年3月3日決定

【おとり捜査再審開始決定】
・札幌地裁平成28年3月3日刑事第2部決定・佐伯恒治裁判長
(事件番号:札幌地方裁判所平成25年(た)第2号)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85828


【判示事項】
「本件おとり捜査は,その必要性が認められず,かえって,具体的な嫌疑もない者に対して犯意を誘発するような働きかけを行うことで,犯罪を抑止すべき国家が自ら新たな銃器犯罪を作出し,国民の生命,身体の安全を脅かしたものであるといい得るところ,更に本件では,次に示すような事情も認められる。
 すなわち,特筆すべきは,銃器対策課の捜査官らは,事件後,こぞって内容虚偽の捜査書類を作成した上,裁判でおとり捜査の違法性が争われるや,内部で口裏合わせをした上,CやDは捜査協力者ではなく,おとり捜査は行っていないなどと全く真実に反する証言をし,組織ぐるみで本件おとり捜査の存在を隠蔽している。こうした捜査官らの行為は,事案の真相を明らかにして,適正に刑罰法規を適用するという刑事裁判の目的を根底から覆し,請求人が公正な裁判を受ける権利を踏みにじるものである。
…結局,本件おとり捜査には,令状主義の精神を潜脱し,没却するのと同等ともいえるほど重大な違法があると認められるから,本件おとり捜査によって得られた証拠は,将来の違法捜査抑止の観点からも,司法の廉潔性保持の観点からも,証拠能力を認めることは相当ではない。殊に,銃器対策課が請求人を逮捕する前から「Cを消す。」などと本件おとり捜査の存在を組織ぐるみで隠蔽しようと画策していたことからすると,その違法性を認識しながら請求人を逮捕したものと認められ,そのような捜査によって得られた証拠を用いることは到底許されるべきことではない。本件おとり捜査が,請求人にけん銃を日本国内に持ち込ませ,これを現行犯逮捕するなどして検挙することを目的としたものであることからすると,少なくとも,現行犯逮捕によって得られた各証拠(本件けん銃,実包,弾頭及び空薬莢(確定審の甲6ないし9),それらの鑑定書(同じく甲11)並びに逮捕時の状況に関する捜査報告書等(同じく甲2ないし4))は証拠排除されるべきである。
 そうすると,請求人が真正なけん銃やこれに適合する実包を所持していたことは請求人自身認めているものの,この自白を補強すべき証拠がなく,結局,刑訴法319条2項により犯罪の証明がないことに帰するから,請求人に対し無罪の言渡しをすべきである。本件再審請求は,刑訴法435条6号所定の有罪の言渡しを受けた者に対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときに該当する。
 よって,刑訴法448条1項により,本件について再審を開始することとする。」


【雑感】
・これはひどい…。警察の組織ぐるみの犯罪誘致,刑事裁判での組織的隠蔽。ノルマ達成という目的だけのために,違法行為を重ねる警察,警察を監督する能力の一切ない検察…。
…と,いいたいところですが,そんなに特殊なことではなく,割と行われていることです。

・このブログでずっといっていますが,捜査機関はいかなる時代・国を問わず暴走するものです。それを止められるのは裁判所だけです。刑事裁判官がこの事件の確定審で無罪判決を書いていれば,捜査機関に対するある程度の抑止力をもったはずです。そして,日本の刑事司法の癌は高裁です。高裁で地裁の無罪判決が逆転されるのを恐れて,地裁は無罪判決を書きたがりません。

・唯一良かったことを探すのであれば,今後エリートとして刑事畑を歩むこの事件の部長が警察と検察の実態をまざまざと知ったことです。今後裁判所として刑事政策を考えるうえで,この事件の教訓が生かされることを切に望みます。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2016-05-06 23:07 | 刑事事件