とある弁護士のひとりごと

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【過払い論点】取引の分断をめぐる最高裁の判断

・最高裁は過払い訴訟で数々の判断を示してきています。
しかし,ここ数年間で,最高裁は取引の一連性についての判断をほとんど示さなくなってきています。
・高裁で分断と判断されたとき,上告すべきか否かを考えるうえで最高裁のここ数年の判断について知っておく必要があります。


【取引の一連性についての最高裁の基本的な判断】
・最高裁平成20年1月18日第二小法廷判決・民集第62巻1号28頁
(事件番号:最高裁判所平成18年(受)第2268号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=35608&hanreiKbn=02
別個の基本契約に基づく場合の判断基準として,最高裁は以下のものを挙げる。
「①第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間,②第1の基本契約についての契約書の返還の有無③借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無④第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況⑤第2の基本契約が締結されるに至る経緯⑥第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等」

なお,同一の基本契約に基づく継続的取引であっても,一連計算が否定されることがあります。同一の基本契約だから当然に一連だと主張するのはかなり弱い主張だと思います。
しかも,同一の基本契約の事案で借主側が敗訴した東京高裁平成23年7月27日第20民事部判決(事件番号:東京高等裁判所平成23年(ネ)第2432号)で,借主側が上告受理申立てをした件も,最高裁は不受理にしています。
貸金業者は株式会社オリエントコーポレーションです。

・この事案で一連と判断されたものとしては,先行取引期間が9か月で中断期間が6か月
分断と判断とされたものとして,先行取引期間が6年9か月で中断期間が2年3か月です。

・特に,オリコのようなクレジット系業者は純粋な貸金業者と異なり,通常,②契約書を返還しておらず,③カードの失効手続をとらずに後続取引でも使える状態にしていることから,後続取引への期待はあるため,一連性は認めやすい事案です。
それにもかかわらず,最高裁がこの事案を不受理としたことはかなり残念な判断だったといえます(ただし,最高裁が不受理としたことに何らの拘束力もなく,まだ最高裁としての判断を示すべき時期ではないと判断しただけの可能性もあり,最高裁の判断はまだわかりません)。


【最高裁の分断について上告の可否】
・以上からすると,最高裁としては,極めて異常な高裁の判断でもない限り(※),取引の分断については上告を受理しない方針にしているものと思われます。そのため,高裁の結論が「どっちもありうる」「少しおかしい」程度では,上告しても認められることはほとんどないと考えられます。

実際に取引の分断について上告受理申立てを多数した弁護士に話を聞くと,申立てをしても,おもしろいように記録到達通知から約2か月後に不受理決定が届くと言っていました。

・結局,この取引の一連性の問題について最高裁は事実認定の問題と考え,高裁の判断に任せ,最高裁としては判断しないという状態が今後も続くと思われます。


【※極めて異常な高裁の判断の例】
・最高裁が取引の分断の争点について,弁論を開き貸金業者の上告を認め,原審を破棄したものがあります。原審は名古屋高裁平成22年11月11日判決です。
(事件番号:名古屋高等裁判所平成22年(ネ)第638号)


・最高裁平成23年7月14日第一小法廷判決・集民第237号263頁
(事件番号:最高裁判所平成23年(受)第332号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81503&hanreiKbn=02
・原審は,4つの基本契約からなる取引でその中断期間が約1年6か月ないし2年4か月の期間があるにもかかわらず,各基本契約に自動継続条項(自動更新条項)があることを主な一連性の理由としてあげ,期間を考慮せず,各取引間に過払金充当合意が存在すると認めて一連計算を認めています。
・さすがに,消費者側弁護士としても「この判決はひどい」と思ってしまうレベルの高裁判決で,これはさすがに最高裁が覆すものやむを得ないと思います。

・逆に考えると,上記最高裁平成20年1月18日判決に明確に違反するレベルのおかしさでなければ,最高裁は上告または上告受理申立てを受理することはないと思われます。
取引の一連性について,高裁の判断が納得できない場合はこのレベルでおかしい判断かを慎重に検討される方がいいと思います。


※上記の意見・判決などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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# by lawinfo | 2012-07-16 20:51 | 最高裁