とある弁護士のひとりごと

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 【国家公務員法違反被告事件】最高裁平成24年12月7日無罪判決

【 国家公務員法違反被告事件最高裁無罪判決】

・最高裁平成24年12月7日第二小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成22年(あ)第762号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82801&hanreiKbn=02


【第1審】
・東京地裁所平成18年6月29日判決
有罪(罰金10万円・執行猶予2年)
・ 被告人控訴(憲法違反,法令適用の誤り及び訴訟手続の法令違反),検察官控訴(罰金刑の執行を猶予した点で軽過ぎて量刑不当)


【第2審】
・東京高裁平成22年3月29日第5刑事部判決(中山隆夫裁判長)
(事件番号:東京高等裁判所平成18年(う)第2351号)
適用違憲判決
「原判決を破棄する。
被告人は無罪。」 
・検察官上告


【最高裁】
・本件上告を棄却する。


【公訴事実の概要】
「被告人は,社会保険庁東京社会保険事務局目黒社会保険事務所に年金審査官として勤務していた厚生労働事務官であるが,平成15年11月9日施行の第43回衆議院議員総選挙に際し,日本共産党を支持する目的をもって,第1 同年10月19日午後0時3分頃から同日午後0時33分頃までの間,東京都中央区(以下省略)所在のB不動産ほか12か所に同党の機関紙であるしんぶん赤旗2003年10月号外(『いよいよ総選挙』で始まるもの)及び同党を支持する政治的目的を有する無署名の文書である東京民報2003年10月号外を配布し,第2 同月25日午前10時11分頃から同日午前10時15分頃までの間,同区(以下省略)所在のC方ほか55か所に前記しんぶん赤旗2003年10月号外及び前記東京民報2003年10月号外を配布し,第3 同年11月3日午前10時6分頃から同日午前10時18分頃までの間,同区(以下省略)所在のD方ほか56か所に同党の機関紙であるしんぶん赤旗2003年10月号外(『憲法問題特集』で始まるもの)及びしんぶん赤旗2003年11月号外を配布した。」


【争点】
・上記公訴事実が,国家公務員法110条1項19号(平成19年法律第108号による改正前のもの),102条1項,人事院規則14-7(政治的行為)(以下「本規則」という。)6項7号,13号(5項3号)違反といえるか。


【最高裁判所の判断】
「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるかどうかは,当該公務員の地位,その職務の内容や権限等,当該公務員がした行為の性質,態様,目的,内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当である。」
「被告人は,社会保険事務所に年金審査官として勤務する事務官であり,管理職的地位にはなく,その職務の内容や権限も,来庁した利用者からの年金の受給の可否や年金の請求,年金の見込額等に関する相談を受け,これに対し,コンピューターに保管されている当該利用者の年金に関する記録を調査した上,その情報に基づいて回答し,必要な手続をとるよう促すという,裁量の余地のないものであった。そして,本件配布行為は,勤務時間外である休日に,国ないし職場の施設を利用せずに,公務員としての地位を利用することなく行われたものである上,公務員により組織される団体の活動としての性格もなく,公務員であることを明らかにすることなく,無言で郵便受けに文書を配布したにとどまるものであって,公務員による行為と認識し得る態様でもなかったものである。」
「本件配布行為は,管理職的地位になく,その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって,職務と全く無関係に,公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり,公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないから,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。そうすると,本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当しないというべきである。」


【雑感】
・憲法論としては重要な最新最高裁判決。しかも,1審有罪⇒2審逆転無罪⇒最高裁検察官の上告棄却というそれほどない流れの事件。
・司法試験受験生としては,多数意見はもちろんのこと,千葉勝美裁判官の補足意見,須藤正彦裁判官の意見も熟読する必要がありますね。

・結論として,厚生労働省大臣官房統計情報部社会統計課長補佐(総括課長補佐)は有罪,年金審査官(厚生労働事務官)は無罪と結論が分かれました。私としては,「管理職的地位」か否かで有罪・無罪の大きな違いが出るのは疑問がありますね。
この2事件は原審がひとつは有罪,もう一つは無罪となっていた以上,最高裁はとしては,①猿払事件最高裁判決を大法廷に回付して判例変更したうえで両事件とも無罪とするか,②無罪事件の方を弁論を開いて有罪とするかしかなかったので,簡易に処理できる方法を模索したという意味合いが強い気がします。

・よく論評されていますが,これだけ不明確な基準を最高裁がたててしまうと,処罰されるか否かの予見可能性が奪われ,今後のことを考えると問題のある判決だと思います。


【もう一つ有罪事件】
・最高裁平成24年12月7日第二小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成22年(あ)第957号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82802&hanreiKbn=02


※上記の意見・判決などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2012-12-07 23:42 | 最高裁
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