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とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【消費者問題】京都地裁平成24年1月12日判決

【インターネット通信サービスの通信料金返還請求】
・京都地裁平成24年1月12日第4民事部判決・佐藤明裁判長
(事件番号:京都地方裁判所平成22年(ワ)第3533号・通信料金返還請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82027&hanreiKbn=04


【事案の概要】
・Xは電気通信事業者Yに対し,通信料金として合計約20万円を支払った。
 Xは,Yの1契約あたりの月間平均売上収入からみれば,一般消費者は1カ月1万円を超える通信料金が発生することは予測できないから,本件契約におけるパケット料金条項が消費者の予測できない極めて高額なパケット料を課金する不当な内容であるとして,本件パケット料金条項のうち,消費者が通常予測する額である1万円を超える部分については消費者契約法10条により無効であるとして,Yに対し不当利得返還の請求をした。
・また,Xは本件契約締結に際し,Yには携帯電話とパソコンを直接接続し使用する際の通信料金を具体的に説明する義務,または,通信料金高額化についての防止措置をとる義務があったにもかかわらずこれを怠ったとして,債務不履行による損害賠償を請求した。


【判示事項】
「本件パケット料金条項が,任意規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重するものであるとはいえず,消費者契約法10条前段が定める要件に該当しないというべきである。」
「被告は,本件契約上の義務として,原告がアクセスインターネットを利用するに先立ち,原告に対し,同サービスを利用することにより高額な料金が発生する可能性があることにつき,情報提供をする義務を負うと解するのが相当である。」
「一旦,利用者がアクセスインターネットの利用を開始し,通信料金が高額化した後の段階においては,利用者に生じる予測外の財産的負担の拡大の防止という観点から,情報提供の必要性の程度が高まるといえるのであり,この段階において被告に課される情報提供義務の有無については,別途検討する必要がある。」
「本件通信時において,原告のアクセスインターネットの利用により高額なパケット通信料金が発生しており,それが原告の誤解や,不注意に基づくものであることが被告においても容易に認識し得る場合においては,被告は,本件契約上の付随義務として,原告の予測外の通信料金の発生拡大を防止するため,上記パケット通信料金が発生した事実をメールその他の手段により原告に告知して注意喚起をする義務を負うと解するのが相当である。」


【雑感】
・近時,消費者契約法の適用を裁判所はことごとく否定しています。本当に消費者保護に役に立たない法律で,改正すべきだという声が出てきています。
・ただ,裁判所としてはなんとか消費者を保護しようと,説明義務違反を認めた点では評価できる判決です。
・しかし,結局このような消費者事件では,裁判所は過失相殺をし間を取る判決をするため,勝ったんだか負けたんだかよくわからない結論になりがちです。
しかも,本件の事案での消費者の過失は過失といえるか疑問で原告本人尋問の一部の供述を過度に強調しています。裁判所としては,通信事業者側に控訴しないようにする対策または控訴審を見越して高裁に破棄されないようにしたとしか思えません。


※上記の判決・意見などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。

by lawinfo | 2013-05-03 23:25 | 消費者問題
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