とある弁護士のひとりごと

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【認知症と人身事故】名古屋高裁平成26年4月24日判決

【認知症と人身事故による損害賠償請求】
・名古屋高裁平成26年4月24日民事第3部判決・長門栄吉裁判長
(事件番号:名古屋高等裁判所平成25年(ネ)第752号・損害賠償請求控訴事件)
・原審:名古屋地裁平成25年8月9日判決
(事件番号:名古屋地方裁判所平成22年(ワ)第819号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84175&hanreiKbn=04


【事案の概要】
・認知症の高齢者Cが鉄道の駅構内の線路内に立ち入り,人身事故を起こした後に,鉄道会社がその家族に対し,損害賠償請求をした事案。原審はCの妻A及び長男Bに対しても損害賠償請求を認めた。A及びBが控訴。
なお,判決書の認定(41頁)によると,Cは死亡当時5000万円以上の財産があった。


【主文】
「1 原判決中,控訴人らに関する部分を次のとおり変更する。
2 控訴人Aは,被控訴人に対し,359万8870円及びこれに対する平成22年3月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被控訴人の控訴人Aに対するその余の請求及び控訴人Bに対する請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,第1,2審を通じて,控訴人Aと被控訴人との間に生じたものはこれを2分し,その1を控訴人Aの負担とし,その余を被控訴人の負担とし,控訴人Bと被控訴人との間に生じたものは被控訴人の負担とする。
5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。」


【判示事項】
(妻Aの免責事由該当性)
「精神障害上の事由により責任無能力状態にあるCが,監督義務者の不知の間に外出し,その生命や身体に危害が及ぶようなことがないように,Cの監督義務者等が相当な方法でCの行動を監視し,必要に応じてその行動を阻止したり,その行動に付き添ったりするなどのことが許されることは,余りにも当然のことであり,そのような方法として,出入口にセンサーを設置し,Cが出入りする際にそれが作動するようにしておくことが,上記相当の方法を逸脱するものとは到底解することができない。
 以上によれば,控訴人Aについて,民法714条1項所定の免責事由を認めることができない。」


(長男Bの責任)
「Cの介護は,控訴人Aを含む家族ないしは親族間の話合いで円滑になされ,また,Cの財産管理も,現状維持方針の下で控訴人A により従前どおりなされていたため,控訴人らにおいて,Cについて特に成年後見開始申立手続をする必要が意識されることなく経過していたものであって,控訴人らにおいて,ことさらにCに対する成年後見開始申立手続を回避していたような事情はなかったことが認められる。そして,本件事故の開始前においてCについて成年後見開始申立手続がなされていれば,Cについて後見開始審判がなされ,控訴人Bがその成年後見人に選任された蓋然性が大きい状況があったからといって,そのことで,控訴人Bが法的な意味で,Cに対する身上監護に関する権利を行使し,義務を負うものではない上,控訴人Bは,本件事故当時,20年以上も,Cとは別居して生活していたのであるから,そのような控訴人Bをもって,Cの加害行為によって生じた損害について民法714条による賠償責任を負担させるような,Cに対する事実上の監督者に該当するものということはできない。」


【雑感】
・この件は,超高齢化社会を迎える日本において,今後誰もが起こりうる事柄についての司法判断であり,極めて重要な判断といえるでしょう。
・今後,同種事案の裁判例が集積していき,いずれは最高裁が明確な基準を作る時期がくると思います。
・高裁は長男Bの責任を一審とは異なり否定していますが,これは具体的な事情を斟酌して否定したものであり,この手の事案において,妻の責任は認められるが子供の責任は否定されるなどという一般論を展開することはできません。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2014-05-12 23:19 | 時事ネタ
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