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とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
by lawinfo
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【刑事事件】大阪地裁平成26年11月10日判決

【所得税法違反無罪判決】
・大阪地裁平成26年11月10日第12刑事部判決・遠藤邦彦裁判長
(事件番号:平成24年(わ)第3568号・所得税法違反被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84644


【公訴事実】
「被告人は,大阪市甲区乙a丁目b番c号の丙会館地下1階において,クラブ『X』を経営し,同クラブで稼働する従業員等に対する給与の支払をするとともに,ホステスに対する報酬の支払をする源泉徴収義務者であったものであるが,平成21年8月から平成23年7月までの間,同クラブで稼働する従業員等に対し,給与として合計1億3163万1960円を,同クラブで稼働するホステスに対し,報酬として合計6億276万7900円をそれぞれ支払った際,これらの従業員等に対する給与について所得税として合計3143万1591円を,ホステスに対する報酬について所得税として合計4797万4278円をそれぞれ源泉徴収し,各法定納期限までに大阪府丁市戊d丁目e番f号所在の所轄己税務署に納付しなければならないのに,これを納付せず,もって源泉徴収して納付すべき所得税合計7940万5869円を納付しなかった。」


【争点】
・争点は,被告人が,クラブXの源泉徴収義務者であったか否か。
検察官は,被告人は,AとXを共同経営していたから,Aとともに,稼働する従業員等に対する給与及びホステスに対する報酬についての源泉徴収義務者であったと主張する。
 これに対し,弁護人は,XはAが単独で経営しており,被告人はAの従業員にすぎず,本件給与等に対する源泉徴収義務を負う立場にはなかったから,真正身分を欠き,無罪であると主張し,被告人もこれに沿う供述をした。


【主文】
「被告人は無罪。」


【判示事項】
「第3 被告人が幹部従業員であることを前提にした源泉徴収義務者性検察官は,Aが上位者で優位な立場にあったとしても,源泉徴収義務者は,支払の係る経済的出捐の効果の帰属主体となるにふさわしい実体を有する者に当たるとして,被告人が源泉徴収義務者であると主張する。
 しかし,前述のとおり,被告人は,Aの僅か5分の1しか利得配分を受けておらず,給与等の計算は,黒服従業員のトップとして事実上行っていたにすぎないのであるから,そのような者を経済的出捐の効果の帰属主体などといえるはずもなく,被告人を源泉徴収義務者とみることはできない

第4 被告人の源泉徴収義務者該当性以上検討したとおり,XはAの単独経営であり,被告人はいわば黒服従業員のトップとして経理等の業務に従事していた幹部従業員にすぎず,被告人は,ホステスや黒服従業員の請負,雇用契約の主体には当たらない。
 したがって,被告人は,本件給与等の源泉徴収義務者に該当しない。」


【雑感】
・本件は全国ニュースになった事件。またまた,元研修所教官の無罪判決か…と思ったのですが,どうやら国税当局と検察官のずさんなやり方が無罪判決を生んだだけなのかもしれません。
・わざわざ,裁判所が「3 本件の特異性」(判決書2頁)と題して,国税と検察のずさんさを指摘したうえで論証しているところが本件のまさに特異なところといえるでしょう。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。

by lawinfo | 2014-11-25 23:47 | 刑事事件
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