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【公務員の教示義務】
・大阪高裁平成26年11月27日第13民事部判決・石井寛明裁判長 (事件番号:大阪高等裁判所平成25年(ネ)第549号・損害賠償請求控訴事件) URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84789 【事案の概要】 ・子供(平成18年8月6日死亡)が小児癌に罹患したため,両親が平成13年4月20日,重病を患って長期療養が必要となった児童の監護者に対する援助の制度の有無について役所の窓口に相談したところ,対応した役所の職員が,特別児童扶養手当の制度が存在するにもかかわらず,本件手当についての教示義務に違反して,援助制度はないとの回答をしたため,両親は本件手当の支給を受けることができず,両親は経済的な苦境に陥るなどして精神的な苦痛を受けたと主張して,損害賠償請求をした。 ・地裁は,教示義務違反を否定して請求を棄却したため,両親は控訴した。 【判示事項】 「本件手当に関しては,受給資格者が認定の請求をした日の属する月の翌月から支給を開始し,災害その他やむを得ない理由により認定の請求をすることができなかったときでない限り,請求をする前に遡って支給することはしないといういわゆる認定請求主義ないし非遡及主義が採用されている。このように受給資格者の請求を前提とする社会保障制度の下においては,受給資格がありながら制度の存在や内容を知らなかったために受給の機会を失う者が出るような事態を防止し,制度の趣旨が実効性を保つことができるよう,制度に関与する国又は地方公共団体の機関は,当該制度の周知徹底を図り,窓口における適切な教示等を行う責務を負っているものというべきである。 もっとも,制度の周知徹底や教示等の責務が法律上明文で規定されている場合は別として,具体的にいかなる場合にどのような方法で周知徹底や教示等を行うかは,原則として,制度に関与する国その他の機関や窓口における担当者の広範な裁量に委ねられているものということができるから,制度の周知徹底や教示等に不十分な点があったとしても,そのことをもって直ちに,法的義務に違反したものとして国家賠償法上違法となるわけではないというべきである。 ただし,社会保障制度が複雑多岐にわたっており,一般市民にとってその内容を的確に理解することには困難が伴うものと認められること,社会保障制度に関わる国その他の機関の窓口は,一般市民と最も密接な関わり合いを有し,来訪者から同制度に関する相談や質問を受けることの多い部署であり,また,来訪者の側でも,具体的な社会保障制度の有無や内容等を把握するに当たり上記窓口における説明や回答を大きな拠り所とすることが多いものと考えられることに照らすと,窓口の担当者においては,条理に基づき,来訪者が制度を具体的に特定してその受給の可否等について相談や質問をした場合はもちろんのこと,制度を特定しないで相談や質問をした場合であっても,具体的な相談等の内容に応じて何らかの手当を受給できる可能性があると考えられるときは,受給資格者がその機会を失うことがないよう,相談内容等に関連すると思われる制度について適切な教示を行い,また,必要に応じ,不明な部分につき更に事情を聴取し,あるいは資料の追完を求めるなどして該当する制度の特定に努めるべき職務上の法的義務(教示義務)を負っているものと解するのが相当である。そして,窓口の担当者が上記教示義務に違反したものと認められるときは,その裁量の範囲を逸脱したものとして,国家賠償法上も違法の評価を受けることになるというべきである。」 【雑感】 ・実際にこのような公務員の教示義務違反で市民が損害を被ることは,日常茶飯事だと思います。 しかし,その立証は容易ではなく,実際にこの事件の地裁は認めませんでした。この高裁はよく責任を認めたなと思えます。おそらく,いったん断られた後で,医療機関からそういう制度があると聞いたけどどうなんだといったにもかかわらず,追い返した点が極めて不当だということを重視したものと思われます。 ・この判決は直接市民が質問した事柄以外でも,「条理」に基づきその周辺の制度についても教示義務を認めたもので,名判決といっていいでしょう。条理だと根拠としては弱すぎますが,よくぞ一審判決を逆転させたものだと評価していいと思います。 ※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
by lawinfo
| 2015-01-28 23:28
| 行政訴訟
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