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とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【会社法】最高裁平成27年2月19日判決

【非上場会社と有利発行】
・最高裁平成27年2月19日第一小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成25年(受)第1080号・損害賠償請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84873


【事案の概要】
・かつら販売大手A社が上場前にIらに不当に安い価格で新株を発行するなどして会社に損害を与えたとして、株主がIら4人を相手に,約22億5000万円を会社に賠償するよう求めた事案。


【争点】
・非上場会社が株主以外の者に発行した新株の発行価額が商法280条ノ2第2項にいう「特ニ有利ナル発行価額」に当たるか。


【株価】
・平成12年5月時点で1株1万円程度,平成18年3月時点で1株(株式分割前)9000円程度の価値を有し,DCF法によれば平成16年3月時点の価値は1株7897円と算定された。本件新株発行の発行価額は1株1500円だった。


【判示事項】
「非上場会社の株価の算定については,簿価純資産法,時価純資産法,配当還元法,収益還元法,DCF法,類似会社比準法など様々な評価手法が存在しているのであって,どのような場合にどの評価手法を用いるべきかについて明確な判断基準が確立されているというわけではない。また,個々の評価手法においても,将来の収益,フリーキャッシュフロー等の予測値や,還元率,割引率等の数値,類似会社の範囲など,ある程度の幅のある判断要素が含まれていることが少なくない。
 株価の算定に関する上記のような状況に鑑みると,取締役会が,新株発行当時,客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額を決定していたにもかかわらず,裁判所が,事後的に,他の評価手法を用いたり,異なる予測値等を採用したりするなどして,改めて株価の算定を行った上,その算定結果と現実の発行価額とを比較して「特ニ有利ナル発行価額」に当たるか否かを判断するのは,取締役らの予測可能性を害することともなり,相当ではないというべきである。
 したがって,非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し,客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には,その発行価額は,特別の事情のない限り,「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないと解するのが相当である。」



【雑感】
・受験時代よく争点として取り上げられた問題でした。
 今後,司法試験の論文で取り上げられる可能性は十分あり,受験生は注意すべき判例でしょう。この判例を知らないと有利発行に当たるという受験生も多そうです。
・この判決によると,非上場会社で株主以外の者に新株を発行する場合はよっぽどのことがない限り,有利発行になることはなくなるでしょう。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。

by lawinfo | 2015-02-19 23:17 | 最高裁
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