とある弁護士のひとりごと

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【刑事裁判】広島高裁岡山支部平成27年3月18日判決

【刑訴法321条1項2号前段の「公判期日において供述することができないとき」該当性】
・広島高裁岡山支部平成27年3月18日判決
(事件番号:広島高等裁判所岡山支部平成26年(う)第123号・建造物侵入,窃盗事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85109


【判示事項】
「証人が証言を拒絶した場合にも,刑訴法321条1項2号前段の供述不能の要件を満たすものとして,その検察官調書を採用することができる(最高裁昭和27年4月9日大法廷判決・刑集6巻4号584頁参照)が,供述不能の要件は,証人尋問が不可能又は困難なため,被告人の反対尋問権不行使という犠牲において,例外的に伝聞証拠を用いる必要性を基礎付けるものであるから,単に証人が証言を拒絶したというのでは足りず,証人の供述態度や証言拒絶の理由等に照らして証言拒絶の決意が固く,期日を改めたり,尋問場所や方法に配慮したりするなど,証人の証言を得るための手を尽くしても,翻意して証言する見通しが低いと認められるときに,同要件を満たすものと解される
 本件についてみると,Aの原審公判廷における供述態度,特に検察官に対する供述態度は,証言拒絶の理由も含めて答えないという頑ななものであるが,証言拒絶の理由については,本件検察官調書2(原審甲56)では,被告人に不利な証言をすることにより被告人の恨みを買い,自分の妻子に危害を加えられる可能性等を危惧するものとなっているのに対し,弁護人あるいは裁判官からの尋問に対する答えでは,これを否定し,自分の裁判への影響を危惧するかのような供述をしており,証言拒絶の理由が明確になっているとはいい難い。また,Aは,本件検察官調書1(原審甲17)の時点では,被告人の公判で証言できるとしており,本件検察官調書2においても,被告人の公判で証言できないとまではしておらず,むしろ「被告人の裁判では,自分が証言するすぐ隣に被告人が座って自分を見ているという状態で,そのようなプレッシャーをかけられ続ける状態では,被告人のことが怖くて,本当のことを証言する勇気がない」旨供述しているのであるから,被告人等との間の遮蔽措置やビデオリンク方式による尋問等の方法により,Aが証言する可能性があることを否定できないところ,検察官は,証人尋問の10日以上前にAの上記意向を把握したにもかかわらず,尋問実施までに上記遮蔽措置等の申出をしなかったばかりか,本件検察官調書2を事前に証拠請求するなどして証言拒絶の可能性を弁護人や裁判所に認識させることもしておらず,およそAから公判廷で証言を得るための努力をしたとはいえない。
 原審としても,証人尋問の重要性を意識して,公判廷で証人から証言を得られるように手を尽くすべきであるところ,Aは,証言拒絶の理由を明らかにしていないのであるから,過料その他の制裁を受けることがある旨を告げて証言を命じなければならない(刑訴規則122条2項)のに,原審において同手続は全くとられていないし,上記のとおり,証言拒絶の理由が明確になっていないのに,立証責任を負う検察官に立証を促すこともされていない。また,Aの証言拒絶の理由が,自分の裁判への影響(刑訴法146条)にあったとしても,本件におけるAの証言あるいは本件検察官調書1の重要性や原審公判の審理経過等に鑑みると,本件検察官調書1を採用する前にAを再尋問することも検討してしかるべきところ,原審においてそのような検討がなされた形跡はみられない。
 以上によれば,Aの証言拒絶の理由が明確でなく,証言拒絶の決意が翻意されることが期待できないほど固いとまではいい切れないし,尋問方法や時期等を配慮することにより,証言が得られる可能性があることも否定できないところ,これらの配慮をするなど証言を得るための手が尽くされているとはいえないから,Aが原審第3回公判期日で証言を拒絶したことをもって,刑訴法321条1項2号前段の供述拒否の要件を満たすものとは認められない。」


【雑感】
・実際の事件での法適用の勉強として,とても参考になる事案。司法試験の素材としては絶好の事案でしょう。

・実務上,この程度で調書を採用するのがほとんどです。現実にはこのようなことで高裁が破棄することはあまりないと思います。本当に刑事裁判の癌は高裁だなあと実感します。きちんと法律に基づいて運用する気のない刑事裁判官が多く,このようにきちんと精緻な検証をするのが高裁裁判官の仕事のはずです。

・最高裁の裁判官に対する人事評価に対しては昔から批判が多いですが,ルーティーンで雑な仕事しかしない裁判官の評価は目に見えて落とすべきです。

・この意味のわからない方は,ぜひ東京高裁の刑事控訴審を傍聴してみてください。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2015-06-11 23:15 | 刑事事件
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