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【おとり捜査再審開始決定】
・札幌地裁平成28年3月3日刑事第2部決定・佐伯恒治裁判長 (事件番号:札幌地方裁判所平成25年(た)第2号) URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85828 【判示事項】 「本件おとり捜査は,その必要性が認められず,かえって,具体的な嫌疑もない者に対して犯意を誘発するような働きかけを行うことで,犯罪を抑止すべき国家が自ら新たな銃器犯罪を作出し,国民の生命,身体の安全を脅かしたものであるといい得るところ,更に本件では,次に示すような事情も認められる。 すなわち,特筆すべきは,銃器対策課の捜査官らは,事件後,こぞって内容虚偽の捜査書類を作成した上,裁判でおとり捜査の違法性が争われるや,内部で口裏合わせをした上,CやDは捜査協力者ではなく,おとり捜査は行っていないなどと全く真実に反する証言をし,組織ぐるみで本件おとり捜査の存在を隠蔽している。こうした捜査官らの行為は,事案の真相を明らかにして,適正に刑罰法規を適用するという刑事裁判の目的を根底から覆し,請求人が公正な裁判を受ける権利を踏みにじるものである。 …結局,本件おとり捜査には,令状主義の精神を潜脱し,没却するのと同等ともいえるほど重大な違法があると認められるから,本件おとり捜査によって得られた証拠は,将来の違法捜査抑止の観点からも,司法の廉潔性保持の観点からも,証拠能力を認めることは相当ではない。殊に,銃器対策課が請求人を逮捕する前から「Cを消す。」などと本件おとり捜査の存在を組織ぐるみで隠蔽しようと画策していたことからすると,その違法性を認識しながら請求人を逮捕したものと認められ,そのような捜査によって得られた証拠を用いることは到底許されるべきことではない。本件おとり捜査が,請求人にけん銃を日本国内に持ち込ませ,これを現行犯逮捕するなどして検挙することを目的としたものであることからすると,少なくとも,現行犯逮捕によって得られた各証拠(本件けん銃,実包,弾頭及び空薬莢(確定審の甲6ないし9),それらの鑑定書(同じく甲11)並びに逮捕時の状況に関する捜査報告書等(同じく甲2ないし4))は証拠排除されるべきである。 そうすると,請求人が真正なけん銃やこれに適合する実包を所持していたことは請求人自身認めているものの,この自白を補強すべき証拠がなく,結局,刑訴法319条2項により犯罪の証明がないことに帰するから,請求人に対し無罪の言渡しをすべきである。本件再審請求は,刑訴法435条6号所定の有罪の言渡しを受けた者に対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときに該当する。 よって,刑訴法448条1項により,本件について再審を開始することとする。」 【雑感】 ・これはひどい…。警察の組織ぐるみの犯罪誘致,刑事裁判での組織的隠蔽。ノルマ達成という目的だけのために,違法行為を重ねる警察,警察を監督する能力の一切ない検察…。 …と,いいたいところですが,そんなに特殊なことではなく,割と行われていることです。 ・このブログでずっといっていますが,捜査機関はいかなる時代・国を問わず暴走するものです。それを止められるのは裁判所だけです。刑事裁判官がこの事件の確定審で無罪判決を書いていれば,捜査機関に対するある程度の抑止力をもったはずです。そして,日本の刑事司法の癌は高裁です。高裁で地裁の無罪判決が逆転されるのを恐れて,地裁は無罪判決を書きたがりません。 ・唯一良かったことを探すのであれば,今後エリートとして刑事畑を歩むこの事件の部長が警察と検察の実態をまざまざと知ったことです。今後裁判所として刑事政策を考えるうえで,この事件の教訓が生かされることを切に望みます。 ※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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| 2016-05-06 23:07
| 刑事事件
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