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とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【認定司法書士の代理権】最高裁平成28年6月27日判決

【認定司法書士の代理権】
・最高裁平成28年6月27日第一小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成26年(受)第1813号・損害賠償請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85969


【判示事項】
「一般に,民事に関する紛争においては,訴訟の提起前などに裁判外の和解が行われる場合が少なくないことから,法3条1項7号は,同項6号イの上記趣旨に鑑み,簡裁民事訴訟手続の代理を認定司法書士に認めたことに付随するものとして,裁判外の和解についても認定司法書士が代理することを認めたものといえ,その趣旨からすると,代理することができる民事に関する紛争も,簡裁民事訴訟手続におけるのと同一の範囲内のものと解すべきである。また,複数の債権を対象とする債務整理の場合であっても,通常,債権ごとに争いの内容や解決の方法が異なるし,最終的には個別の債権の給付を求める訴訟手続が想定されるといえることなどに照らせば,裁判外の和解について認定司法書士が代理することができる範囲は,個別の債権ごとの価額を基準として定められるべきものといえる。
 このように,認定司法書士が裁判外の和解について代理することができる範囲は,認定司法書士が業務を行う時点において,委任者や,受任者である認定司法書士との関係だけでなく,和解の交渉の相手方など第三者との関係でも,客観的かつ明確な基準によって決められるべきであり,認定司法書士が債務整理を依頼された場合においても,裁判外の和解が成立した時点で初めて判明するような,債務者が弁済計画の変更によって受ける経済的利益の額や,債権者が必ずしも容易には認識できない,債務整理の対象となる債権総額等の基準によって決められるべきではない
 以上によれば,債務整理を依頼された認定司法書士は,当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が法3条1項7号に規定する額を超える場合には,その債権に係る裁判外の和解について代理することができないと解するのが相当である。」


【参照条文】
・司法書士法3条1項7号
「民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法 の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。 」


【雑感】
・最高裁が認定司法書士の代理権の範囲について,経済的利益説と総額説を否定し,個別債権説に立つことが確定しました。

・司法書士のHPで「経済的利益が140万円以内であれば司法書士の業務の範囲内」とうたっていれば,本日以降違法な記載をしているということになります。

・この最高裁について,まったく意味のわかっていないマスコミは,最高裁が日弁連の見解に立ったとかさかんに喧伝し,物事を深く考える力のない弁護士はそれを歓迎とか平気でコメントしています。
 しかし,最高裁が総額説も否定したことから,同一依頼者について,個別の債権額が140万円未満であれば,100社あっても代理権があるということになり,認定司法書士資格さえあれば,弁護士まがいのことが堂々とできるようになりました。

・なお,上記参照条文のように,140万円以上の債権をめぐる「相談(受任に至らなくとも)」を司法書士が受けることはもともと違法行為ですので,相談をする場合はご注意ください。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。

by lawinfo | 2016-06-27 23:59 | 消費者問題
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