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とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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【労災補償】最高裁平成28年7月8日判決

【私的な歓送迎会と労災補償】
・最高裁平成28年7月8日第二小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成26年(行ヒ)第494号・遺族補償給付等不支給処分取消請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86000


【参照条文】
・労働者災害補償保険法12条の8第2項が準用する労働基準法79条
「労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金の千日分の遺族補償を行わなければならない。」


【(破棄された)東京高裁平成26年9月10日判決要旨】
「本件歓送迎会は,中国人研修生との親睦を深めることを目的として,本件会社の従業員有志によって開催された私的な会合であり,Bがこれに中途から参加したことや本件歓送迎会に付随する送迎のためにBが任意に行った運転行為が事業主である本件会社の支配下にある状態でされたものとは認められないとして,本件事故によるBの死亡は,業務上の事由によるものとはいえない」


【最高裁判示事項】
「Bは,本件会社により,その事業活動に密接に関連するものである本件歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ,本件工場における自己の業務を一時中断してこれに途中参加することになり,本件歓送迎会の終了後に当該業務を再開するため本件車両を運転して本件工場に戻るに当たり,併せてE部長に代わり本件研修生らを本件アパートまで送っていた際に本件事故に遭ったものということができるから,本件歓送迎会が事業場外で開催され,アルコール飲料も供されたものであり,本件研修生らを本件アパートまで送ることがE部長らの明示的な指示を受けてされたものとはうかがわれないこと等を考慮しても,Bは,本件事故の際,なお本件会社の支配下にあったというべきである。また,本件事故によるBの死亡と上記の運転行為との間に相当因果関係の存在を肯定することができることも明らかである。
 以上によれば,本件事故によるBの死亡は,労働者災害補償保険法1条,12条の8第2項,労働基準法79条,80条所定の業務上の事由による災害に当たるというべきである。」


【雑感】
・労基署認めず→地裁認めず→高裁認めず→最高裁逆転。遺族の方々はよく心が折れずに頑張られたなぁ思います。

・本件では業務遂行性が争われたわけですが,私的行為では業務遂行性は認められないという考え方が強く,実際に労基署他は業務遂行性を否定しました。
本判決は歓送迎会が単なる私的な集まりではなく,その意味を深く掘り下げて探求して業務遂行性を判断しており,今後この業務遂行性の認められる範囲が拡大する契機になりそうです。


・本件上告代理人の名前で検索すると一番上位にひまわりサーチが出てきます。
その「所感」欄記載の言葉がまさにこの判決に至ったといえ,非常に感銘を受けたため,(勝手に)紹介します。
「故色川幸太郎弁護士(元最高裁判事)は,弁護士にとって特に必要な二つの資質(徳目)として,「他人の不幸に対する感応力」と「不正に対して憤る力」を挙げられたとのことです。私も,及ばずながら,この偉大な先達弁護士の顰みに倣いたいと思います。」
URL:http://www.bengoshikai.jp/search/detail.php?kai_code=20&id=22464

・その色川幸太郎弁護士が語ったスピーチの原文
URL:http://www.irokawa.gr.jp/law/archives/1049/


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。

by lawinfo | 2016-07-08 23:28 | 労働事件
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