とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
by lawinfo
カテゴリ
以前の記事
2018年 11月 2018年 10月 2017年 06月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 その他のジャンル
最新の記事
画像一覧
|
【免訴判決】
・福岡地裁平成29年6月2日第3刑事部判決・足立勉裁判長 (福岡地方裁判所平成27年(わ)第1440号・殺人被告事件) URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=86843 【訴因変更後の公訴事実】 「被告人は,平成11年2月9日から同年6 月5 日までにかけての頃の夜,福岡県田川市大字a字bc番d(現福岡県田川市ae番f地先) のA堰の南側のB川右岸において,殺意をもって,泳ぐことができないC(当時24 ,25歳)をあえて前記B川内に転落させ,よって,その頃,同所において,同人を溺死させて殺害した」 【求刑】 ・懲役13年 【主文】 「被告人を免訴する。」 【判決要旨】 「エ 被告人の殺意の有無について 以上を踏まえて, 被告人の殺意の有無について検討すると, まず,被告人は,①,②及び④の事情を認識していたが,前記3 ⑶ イで検討したように,②の事情については,Cの服の種類が特定できず,④の事情についても,本件当時のCの精神的・肉体的衰弱の程度を裏付ける確たる証拠はないことから, これらの事情を認識していたことで,Cが溺れる危険性を被告人がどの程度認識していたかを推知することは容易ではない。 また,被告人がCに川に入るよう命じるに至った動機,経緯は明らかでない面があるが,Cを反省させるため川に入るよう命じたという被告人の供述は,従前の被告人のCに対する接し方に照らして特段不自然なことではなく,Eの証言ともこの点では整合している。そうすると,被告人は,Cを反省させる目的で川に入るよう命じたと認めるのが相当であるが,そのような目的であるとすれば,Cが川で死亡することを被告人が予測又は期待していたとは考えにくい。 さらに,被告人は,C が水没した直後,どこまで真剣に救助を試みたか疑問は残るものの,自ら川に入ってC を探そうとしており,これは,被告人がCの死の結果を予測又は期待していなかったことを示す事情といえる。この点,検察官は,⑤ のとおりEやHに助けるよう指示していない点や被告人が直ちに119番通報をしていない点を指摘するが,被告人はCの水没直後に川に入っており,EやHにCを助けるよう指示を出す余裕がなかったとも考えられるし,被告人が,結果として自身の命令によってCが死亡したと考えて怖くなり,119番通報をせず立ち去ってしまったとしても不自然ではなく,検察官の主張は説得力に欠ける。 以上に加えて,前記3 ⑶ ウで検討したように,本件当時,Cが泳げなかったことを被告人が認識していたとは認められないことも踏まえると,被告人が,CをB川に飛び込ませた行為について,その行為当時,Cが溺れ死ぬ危険性が高い行為であると認識していたとすることにはなお合理的な疑いが残るから,被告人に殺意があったと認めることはできない。」 「以上検討したように,被告人の所為は,傷害致死罪(平成16年法律第156号による改正前の刑法205条)に該当するが,その公訴時効の起算点は,犯罪行為が終わった平成11年5月の大型連休の頃であり,検察官が平成27年10月30日に公訴提起した時点においては,既に7年(平成16年法律第156号附則3条2項により同法による改正前の刑訴法250条3号による。なお,平成22年法律第26号附則3条1項)が経過して公訴時効が完成していたことが明らかであるから,刑訴法337条4号により被告人に対し免訴の言渡しをする。」 【雑感】 ・あまり目にしない免訴判決。検察としては,殺人罪で起訴しないと公訴時効にかかるので,無理して殺人罪で起訴したというところでしょう。逆にいえば,平成11年の事件を起訴した平成27年10月までどのような捜査をしていたのか,倉庫にでも放置していたのか気になります。 ・このような無罪判決(殺人罪については無罪,傷害致死罪については免訴)に特徴的なのは,多くの場合,公訴事実の「訴因変更」をしています。この事例でもそうです。訴因変更をするくらいグダグダなのは,やはり公訴時効回避の目的のために殺人罪で起訴するということ自体が無理筋だったのかもしれません。 ・しかし,日本の刑事裁判官はそんな無理筋の事件でも結論が大きく変わる場合は,力技で有罪判決を無理に書くことが多いです。 特に,この事案は殺人罪と何もなし(免訴)ですから,天と地くらいの差があり,同じ事案でも殺人罪を認める裁判官がいてもまったく不思議ではありません。裁判なんてそんな程度のものです。 ※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
by lawinfo
| 2017-06-22 23:23
| 刑事事件
|
ファン申請 |
||