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とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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2012年 07月 20日 ( 1 )


【過払い論点】過払金元金と過払利息の充当方法

【争点がなくなりつつある貸金業者の流行りの主張】
・近時,アコム・プロミス・アプラス・オリコなどは,過払利息は過払金元本とは違い,後に発生した借入金債務に充当することはできないとの主張をするようになってきました。
 この考えによると,過払利息は過払金元本と別に計算され,充当されなくなる結果,過払利息発生から個別に時効が進行し,過払請求時点から遡って10年分しか過払利息は請求できないことになります(時効の起算点が最終取引日ではなくなる)。


【業者の根拠】
・最高裁平成19年6月7日第一小法廷判決・民集第61巻4号1537頁の過払金充当合意の定義
(事件番号:最高裁判所平成18年(受)第1887号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=34782&hanreiKbn=02
・上記判決は過払金充当合意を「各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,上記過払金を,弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより,弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意含んでいるものと解するのが相当である」と判示しており,この「過払金」には,過払金元本はともかく過払利息は含まない。

・大阪高裁平成22年7月23日判決
・過払金発生後の新たな貸付けは,過払金債務の弁済として行われるものではないから,民法491条は適用されず,したがって,同条を根拠として貸付金に過払利息,過払金元本の順に充当するということもできない。
・過払金のみならず過払利息をも新たな借入金債務に充当することは,実質重利になり,また,当事者の意思の推定も困難であるから,許されない。

・付随論点:過払利息の消滅時効の期間
・過払利息は過払金元金という基本権に基づき,過払金発生から一定期日が経過したことにより具体的に発生する権利(支分権たる利息債権)であり,民法169条により5年の短期消滅時効にかかるか。


【高裁レベルの借主側勝訴の判決】
・東京高裁平成24年4月26日第7民事部判決(裁判長:市村陽典裁判官)
(事件番号:東京高裁裁判所平成23年(受)第8109号)
「制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生し,かつ,同項の適用が認められないときは,過払金元本のみならず,過払利息もその後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解するのが合理的であり,両者の意思を合理的に解釈すれば,債務者である顧客のために利益が多い過払利息,過払金元本の順に新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解するのが相当である。」
「過払利息債権が民法169条に規定する定期給付債権に該当するということはできないから,この点においても,被控訴人(=アコム:著者注)の主張に理由がないことは明らかである。」

・大阪高裁平成24年4月25日第6民事部判決【貸金業者:プロミス】
(事件番号:大阪高等裁判所平成23年(ネ)第3634号)
「過払金返還債務の元金と元金に対する法定利息がある場合において,当事者間に特段の充当合意がないときは,過払金返還債務の元金のみならず,元金に対する法定利息についても,その後発生する貸付金債務に充当して全体を一括精算することが当事者の合理的意思に合致するものと解するのが相当であるから,控訴人(=プロミス:著者注)の主張を採用することはできない。」

・名古屋高裁平成24年5月25日民事第1部判決【貸金業者:オリコ】
(事件番号:名古屋高等裁判所平成24年(ネ)第151号)
「貸金業者が,営業として行う金銭消費貸借取引において借主から悪意で受領した過払金については,それに対する利息(過払利息)についても,後になす貸付けに対する弁済に充当されるものとすることが,当事者の合理的意思に適うと解するのが相当である。
 また,借受金の弁済に当たり,過払金元本と過払利息のいずれを先に充当するかという問題は,債権者及び債務者の利害が,弁済金を費用,利息,元本のいずれに充当するかの問題と類似するものであるから,民法491条の趣旨に照らして,過払金元本よりも過払利息が先に充当されると解するのが相当である。」


【私見】
・最高裁平成15年7月18日第二小法廷判決・民集57巻7号895頁
(事件番号:最高裁判所平成13年(受)第1032号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52323&hanreiKbn=02
「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けとその返済が繰り
返される金銭消費貸借取引においては,借主は,借入れ総額の減少を望み,複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常と考えられることから,弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果当該借入金債務が完
済され,これに対する弁済の指定が無意味となる場合には,特段の事情のない限り,弁済当時存在する他の借入金債務に対する弁済を指定したものと推認することができる。」
・本判決の趣旨からすれば,当事者の合理的意思解釈からは,過払金元本と過払利息は別個として扱えば複数の権利関係が発生するため,そのような事態が生じることは望まないため,過払利息も新たな貸付金に充当されるというべきでしょう。

・実質的に重利を認めることになるとする大阪高裁の判決はかなりひどいといわざるを得ないでしょう。この点,福岡高裁宮崎支部平成23年2月28日判決(事件番号:福岡高等裁判所平成22年(ネ)第244号)は,「過払金の利息を過払金の元本に先立って借入金債務に充当することは,利息を元本に組み入れた上これについて新たな利息の発生を認めるものではないから,かかる充当の順序によると重利を認める結果になるとの控訴人の指摘も理由がない」としており,妥当な判断だと思います。

・また,私も何件か判決を頂いた東京高裁第7民事部の市村部長の判決は簡素ながらすごく納得できる判断をされており,市村部長の判決は心強い判決です。なにより,利率の付け方の判例(※)からわかるように,最高裁は過払金元本と過払利息の別立計算という面倒な考えを採用するとは到底おもえません。
そのため,この点で譲歩する必要はまったくなく,仮に敗訴すれば控訴・上告してこの論点に決着がついてほしいものです。貸金業者側は上告されて最高裁の判断が示されることを怖れていると思われるので,貸金業者が高裁で敗訴しても上告はしないと思われます(何でも上告してくるC社は除く)。



【※利率の判例】
・最高裁平成22年4月20日第三小法廷判決・民集64巻3号921頁
(事件番号:最高裁判所平成21年(受)第955号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=80121&hanreiKbn=02

※上記の意見・判決などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。

by lawinfo | 2012-07-20 21:32 | 過払い訴訟論点