とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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カテゴリ:刑事事件( 65 )


【再審無罪】大阪地裁平成27年10月16日判決

【強制わいせつ,強姦再審無罪】
・大阪地裁平成27年10月16日第1刑事部判決・芦髙源裁判長
(事件番号:大阪地方裁判所平成26年(た)第22号・強制わいせつ,強姦(再審)被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85443


【公訴事実】
「被告人は,強いてわいせつな行為をしようと企て,平成20年7月上旬ころ,a市b区cd丁目e番fg棟h号室の被告人方において,同居している養女であるA(当時14年)に対し,その背後から両腕でその身体に抱き付き,両手で衣服の上から両乳房をつかんで揉み,もって強いてわいせつな行為をしたものである。」(平成20年9月30日付け起訴状記載の公訴事実)
「被告人は,a市b区cd丁目e番fg棟h号室の被告人方でAと同居していたものであるが,第1 平成16年11月21日ころ,前記被告人方において,A(当時11年)が13歳未満であることを知りながら,同女を強いて姦淫しようと企て,同女に対し,その肩等をつかんであお向けに押し倒し,無理やり衣服をはぎ取るなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し,強いて同女を姦淫し,第2 平成20年4月14日ころ,前記被告人方において,前記犯行及びその後繰り返し行った虐待行為等によりA(当時14年)が被告人を極度に畏怖しているのに乗じ,同女を強いて姦淫しようと企て,同女に対し,前同様の暴行を加えてその反抗を抑圧し,強いて同女を姦淫したものである。」(平成20年11月12日付け起訴状記載の各公訴事実)


【主文】
「被告人は無罪。」


【雑感】
・これが国家が作り出した最大級の犯罪です。

・検察は補充捜査により新たに発見したといっているようですが,「「処女膜は破れていない」という診断が記載されたカルテ」は,検察が証拠隠しをしていただけで,このような重要証拠を新たに発見することはありえません。
 なぜなら,強姦事件の初動捜査はまずは被害者を産婦人科にすぐに連れて行き,精液が膣内に残っていないかなど明確な証拠の確保をすることが大原則で,これらのことをしないなんてことはありえないからです。

・ただ,私は検察が悪いとはいいません。検察の証拠隠しなんて日常茶飯事で特に珍しいことではなく,このような重要な証拠が証拠提出されないことに疑問を抱き,無罪判決を書かなかった刑事裁判官が悪いんです。
・まさに裁判官の犯罪です。当時の判断としては仕方がなかったなどと言い訳するでしょうが,気づけるポイントはいくらでもあったはずです。裁判官による人道に対する犯罪行為です。


・それにしても検事の作文能力はすごいですね。事実がまったく存在しないのに,場所・方法など事細かに起訴状に記載していますが,これらはすべて検事の妄想です。この起訴状を起案した検事は検事を辞めて,小説家にでもなった方がいいんじゃないでしょうかね。その方が才能を発揮できそうです。
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by lawinfo | 2015-11-09 23:23 | 刑事事件

【刑事事件】最高裁平成27年10月22日決定

【勾留却下の具体例】
・最高裁平成27年10月22日第二小法廷決定
(事件番号:平成27年(し)第597号・勾留請求却下の裁判に対する準抗告の決定に対する特別抗告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85401


【被疑事実】
「被疑者は,大阪家庭裁判所審判官によりAの成年後見人に選任され,同人名義の預金通帳等を保管し,同人の財産を管理する業務に従事していたものであるが,大阪府東大阪市内の郵便局に開設された同人名義の通常郵便貯金口座の貯金を同人のため預かり保管中,平成20年11月21日,同府八尾市内の郵便局において,同口座から現金300万円を払い戻し,同日,同府東大阪市内において,これをBに対し,ほしいままに貸付横領した」


【決定要旨】
「本件は,被害額300万円の業務上横領という相応の犯情の重さを有する事案ではあるものの,平成20年11月に起きた事件であり,平成23年6月に大阪家庭裁判所から大阪府警察本部に告発がされ,長期間にわたり身柄拘束のないまま捜査が続けられていること,本件前の相当額の余罪部分につき公訴時効の完成が迫っていたにもかかわらず,被疑者は警察からの任意の出頭要請に応じるなどしていたこと,被疑者の身上関係等からすると,本件が罪証隠滅・逃亡の現実的可能性の程度が高い事案であるとは認められない。原決定は,捜査の遅延により本件の公訴時効の完成が迫ったことなどを理由に,勾留の必要性がないとまではいえない旨説示した上,原々審の裁判を取り消したが,この説示を踏まえても,勾留の必要性を認めなかった原々審の判断が不合理であるとしてこれを覆すに足りる理由があるとはいえず,原決定の結論を是認することはできない。」


【雑感】
・これまでの勾留・保釈に関する最高裁決定で一般論は十分に説示されていました。
しかし,具体的な適応の場面でいまだに勾留を認める下級審の判断が多く,最高裁の決定の趣旨に反する判断も多いところです。
・この300万円の業務上横領事件という一点をもって勾留の必要性を認めた原審決定に対し,最高裁はそうはいうものの,それまで身柄拘束もせずに捜査を長々続けていた点を詳細に分析し,高裁の形式的判断を覆した点で実務に与える影響は非常に大きいと思います。
・勾留却下を求める事件では,この最高裁決定を添付資料としてつけておけば,下級審の裁判官もビビって自信をもって勾留を認める判断はできにくくなると思います。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2015-10-26 23:18 | 刑事事件

【無罪判決】横浜地裁平成27年9月9日判決

【呼気検査拒否罪無罪判決】
・横浜地裁平成27年9月9日第6刑事部判決・鬼澤友直裁判長
(事件番号:横浜地方裁判所平成27年(わ)第12号・道路交通法違反被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85358


【公訴事実】
「被告人は,平成26年9月4日午後11時56分頃から同月5日午前零時29分頃までの間,横浜市内の路上において,被告人が酒気を帯びて普通自動二輪車を運転するおそれがあると認めた神奈川県警察第一交通機動隊司法警察員巡査部長Aらから,身体に保有しているアルコールの程度について調査するため,政令で定める方法で行う呼気の検査に応ずるよう求められたのに,これを拒んだものである」


【道路交通法118条の2】
「第六十七条(危険防止の措置)第三項の規定による警察官の検査を拒み、又は妨げた者は、三月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 」


【争点】
・警察官A及びBが被告人に呼気検査を求めたか否か


【検察官求刑】
・罰金35万円


【主文】
・被告人は無罪。


【判示事項】
「Bが証言するような事実があったとしても,Bは,「お酒の量を測るから,飲酒検知するからな。」と言ったにとどまり,その場に呼気検査器具があって被告人にこれを使用することを求めたわけではなく,また,呼気検査器具が置いてあるパトカーのところに被告人を連れて行こうとしたわけではないのであるから,このBの発言は,将来の呼気検査の予告にとどまり,被告人に呼気検査に応じるかどうかについて明確な回答を求めるような発言となっていないと言うべきである。
 しかもBと被告人のやり取りは,Aが合流するまでの10秒足らずのうちに行われたものであり,被告人が,Bによりバイクごと転倒させられ,怪我をしたと考えて「転んだじゃねえか,怪我をしたじゃねえか,事故の証明を出せ。」などと述べて相当の興奮状態にあったと認められることを考えると,このような状況において被告人が「関係ない。」と発言したとしても,それをもって,Bから直ちに呼気検査に応じるよう求められていると認識した上で,これに対する拒否の意思を明らかにしたものと見ることもできない。
ウ したがって,Bが証言する被告人に呼気検査を求めた状況を前提としても,この段階では,被告人の言動が,「検査を拒み」に該当するということはできない。」



【雑感】
・軽微事件の無罪判決。重大事件は裁判官もまじめに考えて判決を書きますが,軽微事件だとどうでもいいや,有罪にしとけとしてしまうことが多いです。
・その意味でこの裁判体はきちんとこの事件に向き合ったと思います。

・ただ,この事件が合議事件なのはすごく不思議です。さすがに配転時点では単独事件だと考えられ,かなり難しい事件と考えて裁定合議事件にしたということでしょうか。右陪席が部長にヘルプを求めた?


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by lawinfo | 2015-10-06 23:32 | 刑事事件

【無罪判決】横浜地裁平成27年7月7日判決

【殺人未遂罪一部無罪判決】
・横浜地裁平成27年7月7日第4刑事部判決(成川洋司裁判長)
(事件番号:横浜地方裁判所平成26年(わ)第1200号・殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85302


【公訴事実】
「第1 法定の除外事由がないのに,平成26年4月27日午後8時4分頃,神奈川県藤沢市内のマンション駐車場北側において,所携の回転弾倉式けん銃(平成27年押第31号の1)で弾丸1発を発射し,もって不特定又は多数の者の用に供される場所において,けん銃を発射した。
第2 法定の除外事由がないのに,同日午後8時25分頃,同市内の路上において,前記回転弾倉式けん銃1丁をこれに適合するけん銃実包6発(平成27年押第31号の2,7,4,9。ただし,同号の2及び9は鑑定時の分解検査により弾頭,薬莢及び火薬に分離したもの,同号の4は鑑定時の試射により弾頭及び空薬莢に分離したもの。)と共に携帯して所持した。」


【争点】
・殺人未遂罪が成立するか。①被告人が本件けん銃の銃口をパトカーの後部座席に向けて引き金を引いたか,②銃口を向けたとされるパトカーの後部座席にA警部がいたことを被告人が認識していたか。


【求刑】
・懲役14年並びにけん銃1丁,実包5個及び金属片2片の没収


【主文】
「被告人を懲役5年に処する。
未決勾留日数中180日をその刑に算入する。
押収してある回転弾倉式けん銃1丁(平成27年押第31号の1),実包5個(同号の2,7,9)及び金属片2片(同号の4)を没収する。
本件公訴事実中殺人未遂の点については,被告人は無罪。」


【判示事項】
「そこで,次に,B証言の信用性を検討する。
車載カメラ映像と判示第1記載のマンションに設置された防犯カメラ2の映像につき,同一出来事が起こった際の各表示時刻を基準にすると,その表示時刻の差は弁護人指摘のとおり約3分42秒であると認められる。これを前提にカチカチ音がした瞬間に相当する時間の防犯カメラ映像(同表示時刻午後8時27分41秒から午後8時27分42秒)を見てみると,その際,被告人はパトカーの運転席脇付近を後方から前方へと移動中であったことが認められる。このことは,被告人が後部座席窓ガラスに正対し,同窓ガラスにけん銃を突き付けているときにカチカチ音が聞こえた旨のB証言と明らかに矛盾しており,B証言はその点のみでも信用できないといわざるを得ない
…以上のとおり,争点①②はいずれも肯定することができず,本件公訴事実中殺人未遂の点については犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。」



【雑感】
・銃を使った殺人未遂罪の珍しい無罪判決。パトカーの車載カメラを検察が証拠提出しなければ,認識の問題も含めて有罪となっていたかもしれません。
・通常,このような無罪判決を出される可能性があるときは,「訴因変更」というごまかしを検察としてはよくやるわけですが(このプログでとりあげた事件の中でも「変更後の訴因」で有罪となったものは多数あります),今回訴因変更をしていないのは,裁判員裁判ではそのようなごまかしは止めた方がよいという判断なのでしょうか。それとも,これだけ客観的な矛盾を弁護人に指摘されながら,有罪の確信が検察にあったのでしょうか(それはそれで問題)。
・この無罪判決が確定したら,さすがに偽証(裁判所に「非常に不自然」とまで言われている)または虚偽告訴の疑いのある警察官への処分も検討されるべき事案でしょう。検察としてはお仲間警察の起訴はしないでしょうけど。


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by lawinfo | 2015-09-07 23:03 | 刑事事件

【無罪判決】大阪地裁平成27年5月29日判決

【犯人性無罪判決】
・大阪地裁平成27年5月29日第2刑事部判決・小倉哲浩裁判長
(事件番号:大阪地方裁判所平成25年(わ)第5047号・窃盗,建造物侵入未遂,建造物侵入,強盗殺人未遂被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85164


【公訴事実】
「第1 平成25年3月25日午前0時23分頃,大阪市a区路上において,同所に駐車中のA所有又は管理の現金約3300円及びシャッターの鍵等5点積載の普通乗用自動車1台(時価合計約30万100円相当)を窃取した,
第2 金品窃取の目的で,同日午後8時51分頃,有限会社B取締役Cが看守する同区所在の仕出し弁当屋「B」店舗に侵入しようと考え,前記シャッターの鍵を使用して同店舗のシャッターを解錠しようとしたが,シャッターを解錠することができなかったため,その目的を遂げなかった,
第3 金銭に窮し,かつて勤務していた前記B店舗に押し入り,現金を強奪しようと考え,同月26日午後11時34分頃,前記Cが看守する同店舗に侵入し,同店舗において,同店調理師である前記A(当時70歳)に対し,その背後から,同人の後頭部を殴打してその場に仰向けに転倒させ,殺意をもって,同店舗内にあった包丁(刃体の長さ約18.4cm)で同人の腹部,胸部を順に突き刺し,その反抗を抑圧した上,同店舗内にあった同人管理の現金約16万円を強奪したが,同人に全治136日間を要する後頭部打撲,腹部・胸部刺創,腸管損傷,第4腰椎横突起骨折,外傷性肺損傷等の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかった」


【検察官の求刑】
・懲役30年


【主文】
「被告人は無罪。」


【判示事項】
「検察官の犯人性立証の中心である犯人自転車と被告人自転車の同一性については,両者が類似しており矛盾しないといい得るにとどまり,同一性を強く推認させるような固有の特徴が一致しているとはいえないのであって,被告人が犯人であることを強く推認させるような事情とまではいえない。その他の事実については,被告人が犯人であることを強く推認させるような事情がある場合に,これを補強し,併せて考慮することにより,残された疑いが払拭されることがあり得るとしても,それ自体では,被告人が犯人であることと矛盾しないといい得るにとどまるものである。そうすると,検察官が主張する全事実関係を踏まえて検討しても,被告人が犯人であったとしても矛盾しない証拠は多々認められるものの,被告人が犯人でなければ説明が困難であるといえるほどの証拠状況にはなく,常識に照らして判断すると,被告人が犯人で間違いないということを検察官が立証できたとは認め難い。」


【雑感】
・見た瞬間,司法研修所での刑裁起案を思い起こす事案です。
・重大事件の犯人性が争点の事案を裁判員のみなさんが判断されるのはかなり大変だったと思われます。
・この事案をそのまま修習生に起案させたら,修習生の間でかなり結論が割れるくらい難しい事件だと思います。何も考えず有罪にしておけという雑な修習生も多いことでしょう。

・この部長は某法科大学院で派遣裁判官として,刑事裁判実務Ⅱ(証拠法と事実認定)という授業を担当していたようですが,まさに検察官の証拠が足りていないとして無罪判決にしたのは,教え子にいっていることと矛盾はしていないですね。


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by lawinfo | 2015-06-18 23:49 | 刑事事件

【刑事裁判】広島高裁岡山支部平成27年3月18日判決

【刑訴法321条1項2号前段の「公判期日において供述することができないとき」該当性】
・広島高裁岡山支部平成27年3月18日判決
(事件番号:広島高等裁判所岡山支部平成26年(う)第123号・建造物侵入,窃盗事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85109


【判示事項】
「証人が証言を拒絶した場合にも,刑訴法321条1項2号前段の供述不能の要件を満たすものとして,その検察官調書を採用することができる(最高裁昭和27年4月9日大法廷判決・刑集6巻4号584頁参照)が,供述不能の要件は,証人尋問が不可能又は困難なため,被告人の反対尋問権不行使という犠牲において,例外的に伝聞証拠を用いる必要性を基礎付けるものであるから,単に証人が証言を拒絶したというのでは足りず,証人の供述態度や証言拒絶の理由等に照らして証言拒絶の決意が固く,期日を改めたり,尋問場所や方法に配慮したりするなど,証人の証言を得るための手を尽くしても,翻意して証言する見通しが低いと認められるときに,同要件を満たすものと解される
 本件についてみると,Aの原審公判廷における供述態度,特に検察官に対する供述態度は,証言拒絶の理由も含めて答えないという頑ななものであるが,証言拒絶の理由については,本件検察官調書2(原審甲56)では,被告人に不利な証言をすることにより被告人の恨みを買い,自分の妻子に危害を加えられる可能性等を危惧するものとなっているのに対し,弁護人あるいは裁判官からの尋問に対する答えでは,これを否定し,自分の裁判への影響を危惧するかのような供述をしており,証言拒絶の理由が明確になっているとはいい難い。また,Aは,本件検察官調書1(原審甲17)の時点では,被告人の公判で証言できるとしており,本件検察官調書2においても,被告人の公判で証言できないとまではしておらず,むしろ「被告人の裁判では,自分が証言するすぐ隣に被告人が座って自分を見ているという状態で,そのようなプレッシャーをかけられ続ける状態では,被告人のことが怖くて,本当のことを証言する勇気がない」旨供述しているのであるから,被告人等との間の遮蔽措置やビデオリンク方式による尋問等の方法により,Aが証言する可能性があることを否定できないところ,検察官は,証人尋問の10日以上前にAの上記意向を把握したにもかかわらず,尋問実施までに上記遮蔽措置等の申出をしなかったばかりか,本件検察官調書2を事前に証拠請求するなどして証言拒絶の可能性を弁護人や裁判所に認識させることもしておらず,およそAから公判廷で証言を得るための努力をしたとはいえない。
 原審としても,証人尋問の重要性を意識して,公判廷で証人から証言を得られるように手を尽くすべきであるところ,Aは,証言拒絶の理由を明らかにしていないのであるから,過料その他の制裁を受けることがある旨を告げて証言を命じなければならない(刑訴規則122条2項)のに,原審において同手続は全くとられていないし,上記のとおり,証言拒絶の理由が明確になっていないのに,立証責任を負う検察官に立証を促すこともされていない。また,Aの証言拒絶の理由が,自分の裁判への影響(刑訴法146条)にあったとしても,本件におけるAの証言あるいは本件検察官調書1の重要性や原審公判の審理経過等に鑑みると,本件検察官調書1を採用する前にAを再尋問することも検討してしかるべきところ,原審においてそのような検討がなされた形跡はみられない。
 以上によれば,Aの証言拒絶の理由が明確でなく,証言拒絶の決意が翻意されることが期待できないほど固いとまではいい切れないし,尋問方法や時期等を配慮することにより,証言が得られる可能性があることも否定できないところ,これらの配慮をするなど証言を得るための手が尽くされているとはいえないから,Aが原審第3回公判期日で証言を拒絶したことをもって,刑訴法321条1項2号前段の供述拒否の要件を満たすものとは認められない。」


【雑感】
・実際の事件での法適用の勉強として,とても参考になる事案。司法試験の素材としては絶好の事案でしょう。

・実務上,この程度で調書を採用するのがほとんどです。現実にはこのようなことで高裁が破棄することはあまりないと思います。本当に刑事裁判の癌は高裁だなあと実感します。きちんと法律に基づいて運用する気のない刑事裁判官が多く,このようにきちんと精緻な検証をするのが高裁裁判官の仕事のはずです。

・最高裁の裁判官に対する人事評価に対しては昔から批判が多いですが,ルーティーンで雑な仕事しかしない裁判官の評価は目に見えて落とすべきです。

・この意味のわからない方は,ぜひ東京高裁の刑事控訴審を傍聴してみてください。


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by lawinfo | 2015-06-11 23:15 | 刑事事件

【刑事事件】最高裁平成27年5月25日決定

【公判前整理手続と被告人質問の制限】
・最高裁平成27年5月25日第二小法廷決定
(事件番号:最高裁判所平成25年(あ)第1465号・詐欺被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85122


【判示事項】
「本件質問等は,被告人が公判前整理手続において明示していた「本件公訴事実記載の日時において,大阪市西成区内の自宅ないしその付近にいた。」旨のアリバイの主張に関し,具体的な供述を求め,これに対する被告人の供述がされようとしたものにすぎないところ,本件質問等が刑訴法295条1項所定の「事件に関係のない事項にわたる」ものでないことは明らかである。また,前記1(2)のような公判前整理手続の経過及び結果,並びに,被告人が公判期日で供述しようとした内容に照らすと,前記主張明示義務に違反したものとも,本件質問等を許すことが公判前整理手続を行った意味を失わせるものとも認められず,本件質問等を同条項により制限することはできない。そうすると,検察官の異議申立てを容れて本件質問等を制限した第1審裁判所の措置は是認できず,原判決が同措置は同条項に反するとまではいえない旨判示した点は,同条項の解釈適用を誤ったものといわざるを得ない。」


【雑感】
・最高裁は結論として棄却していますが,最高裁が一審の訴訟指揮は誤りだったと認めていることから,司法試験や二回試験の問題の素材として使われるかもしれません。


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by lawinfo | 2015-05-28 23:14 | 刑事事件

【無罪判決】横浜地裁平成27年4月3日判決

【業務上過失致死事件無罪判決】
・横浜地裁平成27年4月3日第5刑事部判決・近藤宏子裁判長
(事件番号:横浜地方裁判所平成25年(わ)第1470号・業務上過失致死被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85056


【事案の概要】
・幼稚園のプール活動に際し,担任教諭が遊具の片付け作業等に気を取られて溺れた被害児童を見落としたまま放置し,同人が死亡した事故について,担任教諭に園児の行動を注視できる具体的な遊具の片付け方法を十分に教示することを怠った過失及び複数の者によって園児の行動を監視する体制をとることを怠った過失があるか。


【検察官の求刑】
・罰金100万円


【主文】
「被告人は無罪。」


【雑感】
・この件は検察官としても厳しいと思いつつも,子供を失った遺族の突き上げにあって起訴してしまったんでしょうか。痛ましい事故です。
・この判決のポイントは「B教諭が担当するC4組の園児数は新任教諭であることが考慮されて,先輩教諭が担当するクラスよりも少ない13人であった。」(判決書5頁)ことでしょうか。新人教師であることを考慮して受け持ち児童数を減らしていれば,対策はしてあったと認定するしかないでしょう。
・この手の事件で被告人の過失を立証しきるのは難しいでしょうね。


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by lawinfo | 2015-04-24 23:11 | 刑事事件

【一部無罪判決】旭川地裁平成27年4月2日判決

【一部無罪判決】
・旭川地裁平成27年4月2日刑事部判決・二宮信吾裁判長
(事件番号:旭川地方裁判所平成26年(わ)第174号・傷害被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85054


【公訴事実1】
「被告人が,2月26日頃から3月5日頃までの間,旭川市のC方において,Aに対し,その前胸部,腹部等を指でつねるなどの暴行を加え,よって,Aに全治まで約16日間を要する前胸部,腹部皮下出血等の傷害を負わせた」



【公訴事実1に対する判示事項】
「被告人は,Aの生後1週間後頃に,その夜泣きに苛立ち,その右頬を平手で叩き,その後も,その頬を平手で叩いたり,鎖骨の下辺りをつねったり,抱っこする際に揺さぶったりしたことがあること,3月5日時点でAの身体に残っていたあざは被告人の暴力によるものであることを認める旨の供述をしており(乙6),この供述の一部は上記(2)の負傷部位とある程度整合するものである。
 しかし,被告人の上記供述は,Aに対する暴行の時期・態様について特定せずに抽象的に述べるものにすぎず,被告人の述べる各暴行が第1事実の各傷害結果と対応するものであるのかも定かでない上,上記(2)で判示したとおり,3月5日時点におけるAの負傷状況は,故意以外の過失行為等により生じた可能性の高いものであって,第1事実の傷害の原因となる暴行についての客観的な裏付けとはいい難い。また,被告人の妻であるE等の同居家族を含め,被告人の暴行を目撃した者はいない。なお,Eによるブログの書き込み(甲11,12)があるが,Eの供述によってもこの書き込みの内容自体不明確なままであって,被告人の暴行を推認させるものとはいい難い。さらに,1か月検診の際になされたAの負傷に関する被告人及びEの不自然な説明等検察官が主張するその他の事情も,せいぜい被告人による暴行の事実と矛盾しないという程度のものに過ぎない。いずれも被告人の上記供述の信用性を支えるものとはいい難い。
 以上のとおり,被告人の上記供述は,抽象的で,推認力を有する補強証拠に欠けるものであるから,被告人が任意にしたものであって,積極的に供述の信用性を否定するまでの事情が認められないことを考慮しても,当該自白から被告人が第1事実の暴行をしたことを認定するに足りるほどの信用性は認められないというほかない。」


【雑感】
・一部無罪であり,前科もないのに求刑とほぼ変わらない量刑で,他の傷害罪で実質的に無罪の件も処罰しているのではないかと思われるほど重い量刑です。
・この裁判体としては,公訴事実1については無罪判決にはせざるを得ないが,他の傷害で求刑近くの刑を科せるから検察官が控訴することはないだろうとの読みで,この量刑にしたとしか思えません。あまり良くない無罪判決の例といえます。
・もちろん乳児虐待が憎むべき犯罪であることはいうまでもなく,当該被告人に対しては強い非難が加えられること自体は当然です。


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by lawinfo | 2015-04-22 23:18 | 刑事事件

【保釈】最高裁平成27年4月15日決定

【保釈と具体的理由】
・最高裁平成27年4月15日第三小法廷決定
(事件番号:最高裁判所平成27年(し)第223号・保釈許可決定に対する抗告の決定に対する特別抗告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85051


【事案の概要】
・予備校理事長が予備校内にある接骨院内で,18歳の予備校生に強制わいせつをした。公判では,被告人は完全に否認し,第2回公判期日で被害者尋問が行われた。地裁は第2回公判期日後に,被告人の保釈を認めたが,名古屋高裁金沢支部は保釈決定を取り消した。被告人側が最高裁に特別抗告した。


【決定要旨】
「原々審が原審に送付した意見書によれば,原々審は,既に検察官立証の中核となる被害者の証人尋問が終了していることに加え,受訴裁判所として,当該証人尋問を含む審理を現に担当した結果を踏まえて,被告人による罪証隠滅行為の可能性,実効性の程度を具体的に考慮した上で,現時点では,上記元生徒らとの通謀の点も含め,被告人による罪証隠滅のおそれはそれほど高度のものとはいえないと判断したものである。それに加えて,被告人を保釈する必要性や,被告人に前科がないこと,逃亡のおそれが高いとはいえないことなども勘案し,上記の条件を付した上で裁量保釈を許可した原々審の判断は不合理なものとはいえず,原決定は,原々審の判断が不合理であることを具体的に示していない。そうすると,原々決定を裁量の範囲を超えたものとして取り消し,保釈請求を却下した原決定には,刑訴法90条,426条の解釈適用を誤った違法があり,これが決定に影響を及ぼし,原決定を取り消さなければ著しく正義に反するものと認められる。」


【雑感】
・これは弁護人にとって非常に大きい決定です。わりと大きな否認事件で最高裁が保釈を認めない高裁の決定を破棄したことから,今後実務で保釈率があがっていくと思われます。
・特にこの件は,従来からすれば保釈は認められない事案でしょうから,最高裁が立て続けに保釈を認めない高裁決定を取り消したのは,保釈実務へのメッセージがあるということだと思われます。


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by lawinfo | 2015-04-20 23:47 | 刑事事件