とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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カテゴリ:刑事事件( 65 )


【無罪判決】名古屋地裁平成27年3月5日判決

【受託収賄無罪判決】
・名古屋地裁平成27年3月5日刑事第6部判決・鵜飼祐充裁判長
(事件番号:名古屋地方裁判所平成26年(わ)第1494号・受託収賄,事前収賄,公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85026


【事案の概要】
・平成22年10月13日から平成25年5月8日まで,岐阜県美濃加茂市の市議会議員であり,同年6月2日の岐阜県美濃加茂市の市長選挙で当選した市長である被告人が,浄水ブラントを取り扱う株式会社の代表取締役Cから,美濃加茂市の市立学校に設置する契約が締結できるように,職員に働きかけるよう請託を受けた際に賄賂を受け取ったなどとして,受託収賄・事前収賄の罪を犯したとして起訴された事案。



【争点】
①Cから被告人に対する2度の現金授受の存否,②Cから被告人に対する依頼の内容及び同依頼が請託と評価できるか否か,③被告人が市議会において浄水プラントの導入を促す質疑及び発言を行ったと認められるか否か,④被告人のE課長に対する働きかけが市議会議員としての権限に基づく影響力を行使したものといえるか否か


【検察官の求刑】
・求刑懲役1年6月,30万円の追徴


【主文】
・被告人は無罪


【判示事項】
「争点①の本件各現金授受に関するCの公判供述について,信用性につき疑問があり,検察官が主張するその他の間接事実を考慮しても,本件各現金授受のいずれについても認めるには合理的な疑いが残ることから,被告人は無罪であると判断した」


【雑感】
・最年少の市長の贈収賄事件であるとして騒がれた事件。
・贈賄側は別の裁判体が有罪と判断しており,その整合性が問われます。この事件は検察側が控訴しており,控訴審が楽しみな事件です。
・本件では,裁判長が説諭で「市政に尽力されることを期待します。頑張って下さい」と述べたとされており,この裁判体としては,無罪であることが確信できるレベルだったことが窺えます。
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by lawinfo | 2015-04-08 23:12 | 刑事事件

【無罪判決】大阪高裁平成27年2月13日判決

【高裁破棄無罪判決】
・大阪高裁平成27年2月13日第6刑事部判決・笹野明義裁判長
(事件番号:大阪高等裁判所平成26年(う)第980号・強制わいせつ致傷被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84952


【公訴事実】
「被告人は,平成25年6月3日午前1時頃から同日午前1時36分頃までの間,京都市a区b町c番地d所在のカウンターバー「C」店内において,Aに対し,強いてわいせつな行為をしようと企て,「われ,ただで済むと思うなよ。分かってんのか。われ,承知せえへんぞ。」などと語気鋭く申し向け,両手で同女の両肩をつかんでその身体を揺さぶるなどした上,両手で同女の身体を床に押し倒して,仰向けになった同女の両肩を床に押さえつけ,さらに,同女が履いていたタイツ及びショーツを脱がせるなどの暴行を加え,左手で着衣の上から同女の乳房を揉むとともに,その陰部を手指で弄ぶなどし,もって強いてわいせつな行為をし,その際,前記一連の暴行により,同女に約1週間の通院加療を要する右下腿打撲傷,右大腿打撲傷の傷害を負わせた」


【主文】
「原判決を破棄する。
 被告人は無罪。」


【判示事項】
「Aの原審証言の信用性を認めた理由のうち,掌紋と整合するとの点は明らかに前提事実を誤ったものであり,それを踏まえて,改めてAの原審証言の信用性に関して原判決が説示する点を検討すると,そもそもAの原審証言には,核心部分等に種々問題があり,それ自体全面的に信用できるようなものではなく,原判決が動かし難いとした事実やその事実から推認した内容にも疑問があり,Bの原審証言や負傷状況との整合性がAの原審証言を補強する力はさほど強いものではなく,また,Aに虚偽申告の動機がおよそないとまでいえない。そうすると,認定の核となるべきAの原審証言の核心部分が信用できないことに帰するのであるから,Aから相談を受けた者の証言がAの一部証言と整合することや,Aがその証言と矛盾しない傷を負っていることがあったとしても,原判示の事実の限度とはいえAの原審証言の信用性を認め,原判示の事実について合理的疑いを容れない程度の立証がされているとした原判決は,論理則,経験則等に照らして不合理というほかない。」


【雑感】
・この判決を書いた部長は京都地裁時代に,自ら書いた判決(京都府舞鶴女子高生殺害事件)について,目撃証言の信用性の点で大阪高裁に逆転無罪にされた経験を有するようです。
・その後,ご自身が大阪高裁の部長になると,本件で京都地裁の被害者証言の信用性の点で逆転無罪にしているところからすると,証言の信用性を厳しく判断されるようになったのかもしれませんね(影響があるかはわかりませんが)。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2015-03-20 23:38 | 刑事事件

【無罪判決】京都地裁平成27年3月2日判決

【自殺か他殺か】
・京都地裁平成27年3月2日第1刑事部判決・後藤眞知子裁判長
(事件番号:京都地方裁判所平成25年(わ)707号・殺人被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84958


【公訴事実】
・被告人は,平成24年11月9日午後8時25分頃から同日午後10時51分頃までの間,滋賀県内,三重県内,京都府内又はその周辺において,殺意をもって,内縁の妻であるA(当時47歳)の頸部にタオルを巻いて絞め付け,よって,その頃,同所において,絞頸による窒息により死亡させて殺害した。


【争点】
・被害者は自殺か他殺か


【検察官の求刑】
・懲役7年,本件タオルの没収


【主文】
・被告人は無罪


【判示事項】
「法医学的,物理的な見地からみて,Aが本件タオルを用いて本件車両の助手席で自殺した可能性を排除することができない一方で,その他,被告人がAを殺害したことを有意に推認させる事情も認められない。そうすると,結局,神経症の症状が悪化し,自殺を企図するような言動もしていたAが,自殺ではなく,被告人によって殺害されたと認めるにはなお合理的な疑いが残るといわざるを得ない」


【雑感】
・認定が非常に難しい事件です。裁判官次第で有罪認定しかねない事案で,刑事裁判っておそろしいものだと心底思いました。


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by lawinfo | 2015-03-19 23:19 | 刑事事件

【無罪判決】千葉地裁平成27年1月14日判決

【満員電車内における痴漢行為と無罪判決】
・千葉地裁平成27年1月14日刑事第1部判決・井筒径子裁判長
(事件番号:千葉地方裁判所平成26年(わ)第1077号・公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84886


【公訴事実】
「被告人は,平成26年4月24日午後6時52分頃から同日午後6時56分頃までの間,千葉県習志野市(以下省略)所在のA電鉄株式会社B駅から同県八千代市(以下省略)所在の同会社C駅までの間を走行中の電車内において,乗客のD(当時20歳)に対し,同人の着衣の上からその乳房を手でもみ,もって公共の乗物において,女子を著しくしゅう恥させ,かつ,女子に不安を覚えさせるような卑わいな言動をした」


【求刑】
・懲役4月


【判示事項】
「(2) 犯人性について
 被害者は,被告人を犯人であると判断した理由について,もんでいる手の動きを1回見てから被告人の顔を確認したなどと供述している。そして,その手については,握ったり開いたりし,親指を除いた4本の指が触れている様子が分かる右手であるなどと供述しているのでこの点の信用性を検討する。
ア まず,犯人の手が被告人の手であると判断したのは,犯人の手の動きを見たことと,被告人の顔を確認したことであると供述するにとどまっており,犯人の手の動きと,被告人の顔がどのように結びつくのかについては述べていない。被害者が犯人の手が被告人のものであると判断した過程には飛躍があるといわざるを得ない
 検察官は,被害者は,左乳房をもんでいる手をたどると被告人の顔を確認することができた旨供述しており信用できると主張するが,この供述は,検察官の「その手は,おじさんから伸びていたおじさんの手であるということを確認したということですか。」という誘導的な質問に「はい。」と述べたものに過ぎず,被害者自らが被告人の右手であると判断した過程を具体的に述べたものとはいい難い。 また,被害者は,被害者の左胸を触った手は右手であると供述するが,右手と判断した根拠についても述べていない。被害者の供述から犯人の手が右手であったと認定することにも疑いが残る。 仮に犯人の手が右手であった場合,その手が被告人の手であるかについてさらに検討する。被害者が述べる被告人との立ち位置(被害者の正面で被告人が左向きに立っている状態)からすれば,被告人は,右腕を体に沿わせるようにして左側に伸ばさなければ被害者に接触することは難しい。被害者は,被告人は腕を組んでおり,右手の平は左肘の下にあって,肘に当たっていない状態であったと述べるが,少なくともそのような体勢を取らなければ,被害者に接触することは困難であるといえる。
 しかし,上記の被害者と被告人との位置関係や,足の踏み場もなく身動きができない満員電車の中であったことに照らすと,被害者には被告人の正面や右側はよく見えないはずである。しかし被害者は,被告人の体勢について,左手の平が右肘に当たっていた旨述べるなど,あたかも被告人の正面を見たように供述している。被害者が,胸を触った手が被告人の右手であることを前提に,被告人の体勢を推測したとの疑いが払拭できない。したがって,犯人の手が被告人の右手であると認定するには疑いを入れざるを得ない。 検察官は,被害者は一度胸に違和感を感じた後,再度左乳房に触れているのを気づいた状況からして意識的に左乳房をもんでいる右手やその右手の顔を確認したと認められること,また,被告人とは至近距離にあり視認状況にも特段の問題はないことから別人の手を被告人の手と見間違う可能性はないと主張する。しかし,既述のとおり,犯人の右手やその顔を確認した過程についての供述の信用性には疑いを入れる余地があり,また,車内の混雑状況や被告人と被害者との位置関係からすれば視認状況に問題がなかったともいえないというべきである。」


【雑感】
・この手の事件は事実認定が大変難しく,高裁でバンバン破棄されるので,1審裁判官も無罪判決を書くのはとても勇気のいることです。
・この裁判官は検察官の誘導的質問を誘導的だと非難していますが,実際の刑事裁判は堂々と誘導尋問で有罪を認定することが多く,ひどい裁判官は検察官が被害者の決定的な証言を聞き出せない場合は,自ら被害者に補充質問で証言させることがほとんどです。
・その意味でこの裁判官は大変公正な審理をしていますが,刑事裁判の最大の癌は高裁だとずっとこのブログで言ってきているとおり,この事件が検察官によって控訴されていれば高裁で破棄される可能性は十分にあると思います。


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by lawinfo | 2015-03-01 23:07 | 刑事事件

【3Dプリンター銃】横浜地裁平成26年10月20日判決

【3Dプリンター銃の「けん銃」該当性】
・横浜地裁平成26年10月20日第1刑事部判決・伊名波宏仁裁判長
(横浜地方裁判所平成26年(わ)第670号・ 銃砲刀剣類所持等取締法違反,武器等製造法違反被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84694


【主文】
「被告人を懲役2年に処する。
 未決勾留日数中50日をその刑に算入する。
 押収してあるけん銃様のもの2丁(平成26年押第31号の1及び2)を没収する。」


【判示事項】
「(1)本件3Dプリンター銃は,いずれも銃口内に金属製プレートが挿入され固定されており,そのままの状態では金属性弾丸の発射が不可能であったが,上記プレートを除去すれば金属性弾丸の発射が可能であったこと,(2)その除去作業は,神奈川県警察科学捜査研究所の技術職員をして,第1のものについては丸棒とハンマーを用いて10分程度の時間で,第2のものについてはドリルを用いて50分程度の時間でいずれも可能であったことが認められる。そうすると,本件3Dプリンター銃は,そのままの状態では金属性弾丸の発射は不可能であったが,ある程度の技術を有する者であれば,ごく短時間の容易な作業によりその発射機能を回復ないし付与することができるものであり,武器等製造法及び銃砲刀剣類所持等取締法にいう「けん銃」に該当することが明らかである」


【雑感】
・近時発達してきた3Dプリンターを使って作り上げられた製造物の判決。興味本位で銃を作っていまうと,実刑判決もありうるということを広く知ってもらうために本判決を取り上げました。
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by lawinfo | 2014-12-16 23:12 | 刑事事件

【刑事事件】大阪地裁平成26年11月10日判決

【所得税法違反無罪判決】
・大阪地裁平成26年11月10日第12刑事部判決・遠藤邦彦裁判長
(事件番号:平成24年(わ)第3568号・所得税法違反被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84644


【公訴事実】
「被告人は,大阪市甲区乙a丁目b番c号の丙会館地下1階において,クラブ『X』を経営し,同クラブで稼働する従業員等に対する給与の支払をするとともに,ホステスに対する報酬の支払をする源泉徴収義務者であったものであるが,平成21年8月から平成23年7月までの間,同クラブで稼働する従業員等に対し,給与として合計1億3163万1960円を,同クラブで稼働するホステスに対し,報酬として合計6億276万7900円をそれぞれ支払った際,これらの従業員等に対する給与について所得税として合計3143万1591円を,ホステスに対する報酬について所得税として合計4797万4278円をそれぞれ源泉徴収し,各法定納期限までに大阪府丁市戊d丁目e番f号所在の所轄己税務署に納付しなければならないのに,これを納付せず,もって源泉徴収して納付すべき所得税合計7940万5869円を納付しなかった。」


【争点】
・争点は,被告人が,クラブXの源泉徴収義務者であったか否か。
検察官は,被告人は,AとXを共同経営していたから,Aとともに,稼働する従業員等に対する給与及びホステスに対する報酬についての源泉徴収義務者であったと主張する。
 これに対し,弁護人は,XはAが単独で経営しており,被告人はAの従業員にすぎず,本件給与等に対する源泉徴収義務を負う立場にはなかったから,真正身分を欠き,無罪であると主張し,被告人もこれに沿う供述をした。


【主文】
「被告人は無罪。」


【判示事項】
「第3 被告人が幹部従業員であることを前提にした源泉徴収義務者性検察官は,Aが上位者で優位な立場にあったとしても,源泉徴収義務者は,支払の係る経済的出捐の効果の帰属主体となるにふさわしい実体を有する者に当たるとして,被告人が源泉徴収義務者であると主張する。
 しかし,前述のとおり,被告人は,Aの僅か5分の1しか利得配分を受けておらず,給与等の計算は,黒服従業員のトップとして事実上行っていたにすぎないのであるから,そのような者を経済的出捐の効果の帰属主体などといえるはずもなく,被告人を源泉徴収義務者とみることはできない

第4 被告人の源泉徴収義務者該当性以上検討したとおり,XはAの単独経営であり,被告人はいわば黒服従業員のトップとして経理等の業務に従事していた幹部従業員にすぎず,被告人は,ホステスや黒服従業員の請負,雇用契約の主体には当たらない。
 したがって,被告人は,本件給与等の源泉徴収義務者に該当しない。」


【雑感】
・本件は全国ニュースになった事件。またまた,元研修所教官の無罪判決か…と思ったのですが,どうやら国税当局と検察官のずさんなやり方が無罪判決を生んだだけなのかもしれません。
・わざわざ,裁判所が「3 本件の特異性」(判決書2頁)と題して,国税と検察のずさんさを指摘したうえで論証しているところが本件のまさに特異なところといえるでしょう。


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by lawinfo | 2014-11-25 23:47 | 刑事事件

【無罪判決】横浜地裁平成26年9月17日判決

【強制わいせつ無罪判決】
・横浜地裁平成26年9月17日第3刑事部判決・田村眞裁判長
(事件番号:横浜地方裁判所平成25年(わ)第461号・準強制わいせつ,強制わいせつ被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84568


【公訴事実】
「被告人は,
第1 平成23年11月下旬頃,横浜市鶴見区所在の当時の被告人方(以下「自宅」という。)において,就寝中の実子であるA(当時15歳)に対し,その着用していたブラジャーの中に手を差し入れて胸を手でもむなどし,目を覚ましたAが家庭崩壊等を恐れ,寝たふりをして抗拒不能の状態にあるのに乗じ,引き続き,Aの着用していたブラジャーの中に手を差し入れて胸を手でもんだ上,その着用していたパンティーの中に手を差し入れて陰部を手で触るなどし,もって人の抗拒不能に乗じ,わいせつな行為をし,
第2 平成24年5月6日頃,上記場所において,実子であるB(当時12歳)に対し,Bが13歳未満であることを
知りながら,その着用していたブラジャーをずらして胸を手でもむなどし,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。」


【主文】
「被告人は無罪。」


【雑感】
・強制わいせつ事件で証人が実際に出頭して証言したにもかかわらず,無罪判決になった珍しい判決。
・判決書2頁の前提事実の記載を見れば証言の信用性に疑問をもつのも不思議じゃない事案です。
・結局のところ,警察が十分な裏付け捜査をせず,検察もそれをただ追認するだけで起訴している事件で,ずさんな捜査をしているといわざるをえないでしょう。


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by lawinfo | 2014-10-27 23:08 | 刑事事件

【無罪判決】大阪地裁平成26年9月3日判決

【無罪判決】
・大阪地裁平成26年9月3日第8刑事部判決・田口直樹裁判長
(事件番号:大阪地方裁判所平成25年(わ)第4935号・殺人被告事件・裁判員裁判対象事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84557


【公訴事実】
「被告人は,知的障害を有し,全身性エリテマトーデスに罹患していた長女のA(当時29歳)を介護していたものであるが,自己及び長女らの将来を悲観するなどし,同人と無理心中することを決意し,平成25年10月8日午後1時頃から同日午後4時47分頃までの間に,大阪府吹田市a町b丁目c番dハイツe号室被告人方風呂場において,長女に対し,殺意をもって,同人を浴槽内の湯水に沈め,よって,その頃,同所において,同人を溺水による窒息により死亡させて殺害した。」


【争点】
・責任能力の有無のみ。
・本件では検察官が心身耗弱を認め,弁護人が心身喪失を主張し,無罪を求めた。


【本件のポイント】
・被害者は被告人の娘で,知的障害があり,難病認定もされている「全身性エリテマトーデス」に罹患しており,うつ病に罹患していた被告人は娘と無理心中をする目的で娘を殺害。その後,被告人は入水自殺を図り,池の中で浮いていたところを救助された(判決書3頁)。


【参考:公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター 】
URL:http://www.nanbyou.or.jp/entry/53


【求刑】
・懲役4年


【主文】
・被告人は無罪


【判示事項】
「証拠上,被告人がどのような出来事を直接的な動機として本件殺害行為に及んだかは必ずしも判明せず,夫やヘルパーが認識している本件殺害行為当日の被告人の様子に自殺に至るような事情もうかがえず,被告人は突発的に無理心中を決意したと考えられ,それまで被害者に愛情を注いで養育してきた被告人が本件殺害行為を行った原因としては,大うつ病性障害の影響以外には考えることができない。したがって,被告人は大うつ病性障害の影響のみにより本件殺害行為に及んだ可能性を排斥できず,自分の意思で思いとどまることが全くできない状態に至っていなかったというには,合理的な疑いが残るとの判断に至った。」


【雑感】
・この事件を見て「京都認知症母殺害心中未遂事件(京都地裁平成18年7月21日判決・東尾龍一裁判長)」を思い起こしました。
・今後訪れる超高齢化時代では,このような介護をめぐる問題は他人事ではありません。自分にも起こりうる問題としてこの問題を見ていく必要があります。
・このかなりの難事件を担当した裁判員の方々には敬意を表したいと思います。


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by lawinfo | 2014-10-15 23:08 | 刑事事件

【一部無罪判決】横浜地裁平成26年7月3日判決

【3つの公訴事実と心神喪失の認定】
・横浜地裁平成26年7月3日第1刑事部判決・樋上慎二裁判官
(横浜地方裁判所平成25年(わ)第731号・傷害,強盗被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84400


【公訴事実】
「被告人は,
第1 平成24年3月20日午前2時10分頃から同日午前2時20分頃までの間,神奈川県綾瀬市ab丁目e番駐車場において,A(当時51歳)に対し,同人の顔面を両手のげんこつで多数回殴り,さらに,同人の身体をつかんでその場に引き倒した上,同人の顔面,胸部,腹部等を多数回蹴るなどの暴行を加え,よって,同人に全治約4週間を要する眼窩骨折,肋骨骨折等の傷害を負わせ
第2 前記暴行により前記Aが畏怖状態となっているのに乗じ,同人から金品を強取しようと企て,その頃,同所において,同人に対し,「財布と携帯を出せ」と怒鳴って脅迫し,その反抗を抑圧して,同人所有の現金約7万円及びキャッシュカード等8点在中の財布1個(時価合計約500円相当)を強取し
第3 被告人は,平成24年3月20日午後3時15分頃,神奈川県綾瀬市ab丁目c番d号メゾンC前路上において,しゃがみ込んでいたB(当時43歳)に対し,同人の左肩を手で突き飛ばし,同人の顔面を蹴るなどの暴行を加え,よって,同人に加療約1週間を要する顔面打撲等の傷害を負わせた」


【争点】
・傷害,強盗事件と,その約13時間後の別の被害者に対する傷害事件について,躁鬱病の躁状態に複雑酩酊の脱抑制が付け加わった精神症状により心神耗弱または心神喪失の状態にあったか。


【求刑】
・懲役4年


【主文】
「被告人を懲役2年6月に処する。
 未決勾留日数中260日をその刑に算入する。
 本件公訴事実中,被告人が平成24年3月20日神奈川県綾瀬市ab丁目c番d号前路上においてBの身体を傷害したとの点については,被告人は無罪。」


【判示事項】
「E医師による(あ)の指摘は,D医師と同じビンダーの論文に依拠しつつ,ビンダーの論述内容を引用して反論するというもので,説得的であり,また,(い)の指摘は,文献上の議論を示すもので,同様に説得的である(なお,検察官は,(い)の鑑定例を1つの症例判断に過ぎない旨主張するが,(い)の鑑定例が文献上の根拠として,専門的な経験則を示すものである点に疑念の余地はない。)。(う)の指摘は,E医師の精神医学一般の専門的知見に基づくものであり,(あ),(い)の指摘に沿った内容でもあって,十分に尊重することができる(なお,E医師は,検察官の主張するとおり,アルコール関連の精神障害に特化した専門医ではないし,被告人と面接を行ってはいない。しかしながら,E医師が,臨床精神医学の専門家として,各種の精神障害につき十分な知識を有することは,その供述する内容からして明らかである上,E医師は,被告人と面接を行ったD医師及び被告人を診察したF医師の各見解について,その是非を当裁判所が判断するに際し,専門的な経験則等を当裁判所に提供して当裁判所の有する知識を補充するという立場にあったのであるから,E医師が被告人と面接を行う必要性は,認められない。)。
 以上によれば,D医師のいう(i)ないし(iii)の根拠は,いずれも採用できず,同医師の見解は,被告人が躁鬱病に罹患している可能性を否定する点,及び仮に躁鬱病の症状があったとしても,複雑酩酊の状態に直接に影響を与えたとは考えられない旨述べる点で,不合理である。」


【雑感】
・一部について心神喪失による責任無能力を認めた判決。
・特に,検察官の主張に沿う医師の判断を他の医師の異なる判断と対比して詳細に検討したうえで,医師の判断の信用性を排斥している点が特徴的な判決です。
・3つの公訴事実について,安易に一括して責任能力ありと判断することなく,状況ごとに冷静に違いを分析したうえで判断しており,それなりに説得力のある判決だと思います。
・ここまで精神病の特徴的な症状が出てこれば無罪は当然だと考える人もいるでしょう。しかし,実際の刑事裁判ではこの程度のことはよくある話で,同程度のことがあっても無罪判決を書きたくない刑事裁判官は心神喪失を認める裁判官はそれほど多くはないと思います(そういう裁判官は判決書に精神病に関する事実認定を記載しない)。特に,前の二つの公訴事実が心神耗弱なら,全部まとめて心神耗弱というテキトーな判断は,量刑がそれほど異ならないことから十分あり得ることだと思います。その意味では事案をよく見た素直な判決と評価できると思います。


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by lawinfo | 2014-08-19 23:47 | 刑事事件

【裁判員裁判】最高裁平成26年7月24日判決

【裁判員裁判における量刑判断】
・最高裁平成26年7月24日第一小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成25年(あ)第689号・傷害致死被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84336&hanreiKbn=02


【主文】
「原判決及び第1審判決を破棄する。
 被告人Aを懲役10年に,被告人Bを懲役8年に処する。
 被告人両名に対し,第1審における未決勾留日数中各400日を,それぞれその刑に算入する。」


【判示事項】
「指摘された社会情勢等の事情を本件の量刑に強く反映させ,これまでの量刑の傾向から踏み出し,公益の代表者である検察官の懲役10年という求刑を大幅に超える懲役15年という量刑をすることについて,具体的,説得的な根拠が示されているとはいい難い。その結果,本件第1審は,甚だしく不当な量刑判断に至ったものというほかない。同時に,法定刑の中において選択の余地のある範囲内に収まっているというのみで合理的な理由なく第1審判決の量刑を是認した原判決は,甚だしく不当であって,これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。」


【白木勇判事補足意見】
「量刑の先例やその集積である量刑の傾向は,それ自体としては拘束力を持つものではないし,社会情勢や国民意識の変化などに伴って徐々に変わり得るものである。しかし,処罰の公平性は裁判員裁判を含む刑事裁判全般における基本的な要請であり,同種事犯の量刑の傾向を考慮に入れて量刑を判断することの重要性は,裁判員裁判においても何ら異なるものではない。そうでなければ,量刑評議は合理的な指針もないまま直感による意見の交換となってしまうであろう。
 こうして,量刑判断の客観的な合理性を確保するため,裁判官としては,評議において,当該事案の法定刑をベースにした上,参考となるおおまかな量刑の傾向を紹介し,裁判体全員の共通の認識とした上で評議を進めるべきであり,併せて,裁判員に対し,同種事案においてどのような要素を考慮して量刑判断が行われてきたか,あるいは,そうした量刑の傾向がなぜ,どのような意味で出発点となるべきなのかといった事情を適切に説明する必要がある。このようにして,量刑の傾向の意義や内容を十分理解してもらって初めて裁判員と裁判官との実質的な意見交換を実現することが可能になると考えられる。」


【雑感】
・裁判員裁判の量刑についての判断。
・裁判員の市民感覚を取り入れ,求刑の1.5倍の刑を言い渡した第1審判決を高裁が維持し,最高裁が破棄した事案です。

・最高裁は,自分たちが推し進めている裁判員裁判について,裁判員の感覚がおかしいということはできないため,破棄の理由を「説明不足」にしています。
 しかし,これは詭弁で,最高裁がいいたいことは,裁判所にとって最も信頼できる検察官の求刑を大きく離れた裁判員の量刑感覚はおかしいといっているにほかなりません。
・結局,この判決により従来どおりの価値判断以上の量刑判断はないことになるので,裁判員が判断しようが,職業裁判官が判断しようがほとんど変わらないことになり,結局,裁判員裁判を続ける意味はないと思います。
・今後裁判員に選任されると,職業裁判官から「最高裁が従来の量刑傾向から離れたものは認められないといっているので,量刑は従来どおりにするしかない」と説得され,裁判員は結局その判断を追認するだけの機関となってしまうことが危惧されます。忙しい裁判員が時間を割いているのに,結局裁判員の意向が反映されないとなれば,一層裁判員のなり手がなくなってしまうことでしょう。

・本判決の大阪高裁判決の要旨欄を読む限り,大阪高裁の判決理由はおそまつにすぎます。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2014-07-25 00:12 | 刑事事件