とある弁護士のひとりごと

とある弁護士のブログ。時事ネタや法律・判例情報・過払い訴訟の論点解説など
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カテゴリ:刑事事件( 65 )


【無罪判決】札幌地裁平成26年5月15日判決

【 業務上過失傷害被告事件無罪判決】
・札幌地裁平成26年5月15日刑事第1部判決・田㞍克已裁判長
(事件番号:札幌地方裁判所平成24年(わ)第670号・ 業務上過失傷害被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84295&hanreiKbn=04


【公訴事実】
「被告人は,ガイドダイバーとして,ダイビング客の引率業務に従事していたものであるが,平成21年4月20日午前10時8分頃,沖縄県島尻郡座間味村aのbから真方位c度dメートル付近海中において,甲(当時48歳)外2名をスクーバダイビングに引率するに当たり,そもそもスクーバダイビングは圧縮空気内の限られた空気をもとに水中高圧下で行う活動であり,些細なトラブルから溺死等の重大な事故につながり兼ねない危険性を内包している上,前記甲は潜水経験が少なく,長期間海中でのダイビングを行っておらず,かつ,潜水技術が未熟であり,被告人の引率により船舶から入水した際も,これに失敗して自ら対処することができず,パニックに陥ったことがあり,水中での不安感等から再びパニック状態に陥ったり,技量不足により,自ら適切な措置を講ずることができないまま溺水するおそれが高かったのであるから,引率者である被告人としては,前記甲に異常な徴候がないかに配慮し,同人に不測の事態が発生した場合には直ちに適切な救助措置ができるよう,絶えず同人の側にいて,その動静を注視しつつ引率して,同人の安全に配慮すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,同人と自らバディを組むことなく,同人から約3.7メートル先を先行し,魚の観察等に傾注して同人の動静注視不十分のまま漫然進行した過失により,同日午前10時14分頃,前記付近海中において,同人が異常を訴えたことに直ちに気付くことができず,同人をして自ら適切な措置を講ずることができないまま,その異常を発見した同人の夫である乙と共に海面に急浮上するのを余儀なくさせ,前記甲らが約6メートル海面方向に浮上した時点に至って初めて発見し,同人の救助措置を採ろうとしたが間に合わず,その頃,パニック状態に陥った同人を溺水させ,よって,同人に入院加療44日間を要し,両上肢及び体幹の機能障害等の後遺障害を伴う低酸素脳症,急性肺水腫等の傷害を負わせた」


【争点】
①被告人が,甲が口の中に水が入っても誤飲しないで空気を吸うことをできずに溺水するおそれのあることを予見できたかどうか
②被告人が,甲と互いに組になって行動するバディを組んで同人を1メートル以内に置き,5ないし10秒に1回,同人の目の状態及び水中サインに対する反応速度等を確認すべき注意義務があったかどうか
③被告人が上記の注意義務を尽くしていれば,公訴事実記載の傷害の結果が生じることを回避できたかどうか


【求刑】
・罰金30万円


【主文】
・被告人は無罪。


【判示事項】
「被告人が甲とバディを組んで同人を1メートル以内に置いて,同人の目の状態及び水中サインに対する反応速度等を確認していたとしても,甲の異状に気付けていたはずであるとは認められないし,何らかの異状が生じた時点において,即座に被告人が対処していたとしても,甲が溺水に至っていた可能性も残るから,仮に被告人が検察官主張の注意義務を果たしていたとしても,甲に生じた本件傷害の結果が回避できていた可能性は必ずしも高くはなく,ましてや高度の蓋然性があるとはいえない。」


【雑感】
・判決は最後に「検察官の立証は,予見可能性,注意義務,結果回避可能性ないし因果関係のいずれの面においても,不十分であるというほかない」と検察を痛烈に批判しています。
・ここまで裁判所にボロクソに言われると,公判検事の立証活動があまりにひどかったのではないかとの疑念も生じます。


※上記の意見・情報などの正確性等を保証するものではなく,お使いになる方の判断と責任で情報の取捨選択をお願いします。
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by lawinfo | 2014-06-30 23:29 | 刑事事件

【正当防衛肯定】鹿児島地裁平成26年5月16日判決

【傷害致死被告事件正当防衛肯定】
・鹿児島地裁平成26年5月16日判決・安永武央裁判長
(事件番号:鹿児島地方裁判所平成25年(わ)第206号・傷害致死被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84263&hanreiKbn=04


【公訴事実】
「被告人が,本件日時・場所において,Aに対し,その顔等を左右の拳で複数回殴り,その胸付近を両手で強く押し,Aをその場に転倒させてその後頭部を壁に打ち付けさせるなどの暴行を加え,よって,Aに左右硬膜下血腫,左右大脳クモ膜下出血等の傷害を負わせ,翌日,本件場所において,Aを前記傷害に基づく脳障害により死亡させた」


【争点】
・弁護人:第1暴行及び第2暴行とも正当防衛が成立
・検察官:第1暴行については,①Aの暴行により緊急状態が生じたことは認めつつも,被告人に自分の身を守ろうとする気持ちはなく,もっぱらAを攻撃するために暴力をふるっていることから正当防衛が成立せず,②仮に,自分の身を守ろうとする気持ちがあったとしても,その態様が妥当で許される範囲を超えているため,過剰防衛に当たると主張し,また,第2暴行については,Aの暴行により生じていた緊急状態は,被告人による模造刀振り回しにより終了していたところ,第2暴行はそもそも喧嘩であって,Aの暴行により緊急状態が生じていないから正当防衛は成立しない。


【検察官の求刑】
・懲役3年


【主文】
「被告人を罰金10万円に処する。
 未決勾留日数のうち,その1日を金5000円に換算してその罰金額に満つるまでの分を,その刑に算入する。」


【判示事項】
「被告人の第1暴行の大部分は,Aの顔や胸を拳で殴打するというものであるが,右ほほへの殴打以外は,あざが残る程度の強さであった。第1暴行のいずれかの段階で放った右ほほへの殴打は,客観的には,脳障害を発生させる危険な暴行であったといえるが,それは力の強さに加え,力の方向が脳に大きな衝撃を与える方向になったためである。しかし,右ほほへの殴打とそれ以外の殴打との強さがどれくらい違うのかは判然とせず,第1暴行の状況を前提とすると,被告人がことさら他の殴打よりも強い力で,また,危険な方向になるよう狙って右ほほを殴打したとは考えられない。このことからすると,Aの死亡は,Aからの強く執拗な暴力から逃れるため,偶々放った1発の力の強い暴行が,偶々危険な方向に加えられたため生じた結果といえるから,右ほほへの殴打を重視して第1暴行全体の危険性を理解することはできない。
 そして,Aの暴行により生じた緊急状態から逃れるためには,例えば,顔以外を強い力で殴ったり,蹴ったりすることが考えられるが,そのような強い攻撃の危険性は,被告人がした第1暴行の危険性とほとんど変わらない。
 したがって,第1暴行が,Aの暴行に対する反撃として妥当で許される範囲を超えているということはできない
 以上によれば,第1暴行は,Aの暴行により生じた緊急状態において,自分の身を守ろうとする気持ちで行われたものであり,反撃として妥当で許される範囲を超えているということはできないから,正当防衛が成立する。」


【雑感】
・傷害致死が正当防衛一部成立で罰金10万円。
・第1暴行と第2暴行で違いを吟味し,乱暴に傷害致死と認定しないきちんとした判決だと思います。
司法試験及び2回試験の絶好の素材といえるでしょう。


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by lawinfo | 2014-06-17 23:30 | 刑事事件

【無罪判決】大阪地裁平成26年4月25日判決

【風営法違反無罪判決】
・大阪地裁平成26年4月25日第5刑事部判決・齋藤正人裁判長
(事件番号:大阪地方裁判所平成24年(わ)第1923号・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84219&hanreiKbn=04


【公訴事実】
「被告人は,大阪市北区a丁目b番c号において,設備を設けて客にダンスをさせ,かつ,客に飲食をさせるクラブ『A』を経営する者であるが,B,Cらと共謀の上,大阪府公安委員会から風俗営業(第3号営業)の許可を受けないで,平成24年4月4日午後9時43分頃,同店内において,ダンスフロア等の設備を設け,不特定の来店客であるDらにダンスをさせ,かつ,酒類等を提供して飲食させ,もって許可を受けないで風俗営業を営んだ」



【風営法2条1項3号】
「第二条  この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
三 ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(第一号に該当する営業を除く。) 」


【求刑】
・懲役6月及び罰金100万円


【主文】
・被告人は無罪。


【判示事項】
「本件イベントにおいて客がしていたダンスは,流れていた音楽のリズムに合わせてステップを踏んだり,それに合わせて手や首を動かすというものが大半であり,比較的動きの激しいものでもボックスステップを踏んだり腰をひねったりするという程度で,客同士で体を触れ合わせて踊っていたこともない。したがって,客のしていたダンスそれ自体が性風俗秩序の乱れにつながるような態様のものであったとはいえない。また,DJブースやモニターがあったフロアでは,DJが英国のロック音楽を大音量で流すとともにこれに合わせてモニターに映像が流され,客を盛り上げるような演出を行っていたこと,その結果,フロアにいた客はDJブースの側により多く集まり,近いところでは客同士が30cm程度の距離にあったことが認められるが,客同士が接触するような状態には至っておらず,フロアでもその時々によって椅子に座って音楽を聞いている客もいたというのであるから,単に音楽や映像によって盛り上がりを見せていたという域を超えていたとは認めることができない。そのほか,本件イベントにおいて,来店する客に露出度の高い服装の着用を促すなど,殊更にわいせつな行為をあおるような演出がされていたなどの事実は認められない
 以上の事実を総合すると,酒類が提供されており,フロアが相当程度暗い状況にあったことを踏まえても,本件当日,本件店舗において,歓楽的,享楽的な雰囲気を過度に醸成し,わいせつな行為の発生を招くなど,性風俗秩序の乱れにつながるおそれが実質的に認められる営業が行われていたとは,証拠上認めることができない
 そうすると,被告人が,本件公訴事実記載の日時場所において,本件各規定の構成要件に該当する行為,すなわち3号営業を無許可で営んだということはできないというべきである。」


【雑感】
・時代に合わなくなってきている法律について,形式的に有罪だという判断をすることなく,事実をよく見て淡々と判断しており,よくできた判決だと思います。
・そして,またまた元司法研修所刑裁教官の無罪判決。刑裁教官はきちんと構成要件の当てはめをしている事例が多く,他の刑事裁判官も決め付けで判決を下すことなく,事案をよく見てほしいものです。


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by lawinfo | 2014-06-06 23:42 | 刑事事件

【無罪判決】鹿児島地裁平成26年3月27日判決

【準強姦被告事件無罪判決】
・鹿児島地裁平成26年3月27日判決・安永武央裁判長
(事件番号:鹿児島地方裁判所平成24年(わ)第290号)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84117&hanreiKbn=04


【判示事項】
「被害者は,捜査段階で,被告人との性交を拒否しなかった理由として,上記精神的混乱のほかに,被告人との関係悪化や後日の不利益を気にしたり,気の弱い性格から自分が我慢すればいいと思ってしまったことなどを述べている。また,被告人と被害者の関係が前記のように,ゴルフ指導を通じたものであり,被害者も被告人に盲従することなく,自ら被告人の指導を選択していたことも先に述べたとおりである。
 以上のことからすると,これまでの被告人との人間関係を壊さないようにすることを考えるなどして,自分から主体的な行動を起こさなかった可能性,すなわち,被告人との性交を拒否することが著しく困難な精神状態には陥っていなかったが,そのまま流れに任せるに留まった可能性を排斥することはできない。」
「仮に,被害者が抗拒不能状態にあったとしても,被告人がそのことを認識していたのかについては,合理的な疑いが残る。
 すなわち,被害者がした客観的に認識し得る抵抗はキスの際に口をつぐむという程度であり,そのことから,被害者が抗拒不能であることを被告人が認識することは極めて困難であるといわざるを得ない。さらに,被告人と被害者の人間関係は濃いものではあっても,それは虐待とかドメスティック・バイオレンスというものとはほど遠いものであるから,被害者が被告人からのおよそ理不尽な要求に逆らえないほどの人間関係上の問題があったと被告人が認識することも困難である。
 以上の点から,仮に,被害者が抗拒不能状態であったとしても,被告人がそのことを認識したという証明はできておらず,被告人の故意を認めることはできないから,この点からも,被告人には無罪の言渡しをすることになる。」


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by lawinfo | 2014-04-16 23:09 | 刑事事件

【刑事事件】最高裁平成26年3月28日判決

【暴力団組員のゴルフ場利用と詐欺罪の成否(二つの最高裁の判断)】
・最高裁平成26年3月28日第二小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成25年(あ)第3号・詐欺被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84091&hanreiKbn=02


【争点】
・暴力団員であることを秘してした施設利用申込み行為自体が,挙動による欺罔行為に当たるか。
・第1審判決は,暴力団員であることを秘してした施設利用申込み行為自体が,挙動による欺罔行為として,申込者が暴力団関係者でないとの積極的な意思表示を伴うものと評価でき,各ゴルフ場の利便提供の許否判断の基礎となる重要な事項を偽るものであって,詐欺罪にいう人を欺く行為に当たるとし,第2審判決も第1審判決を是認した。被告人側が上告。


【平成25年(あ)第3号・主文】
「原判決及び第1審判決を破棄する。
 被告人は無罪。」


【平成25年(あ)第3号・判示事項】
「暴力団関係者であるビジター利用客が,暴力団関係者であることを申告せずに,一般の利用客と同様に,氏名を含む所定事項を偽りなく記入した「ビジター受付表」等をフロント係の従業員に提出して施設利用を申し込む行為自体は,申込者が当該ゴルフ場の施設を通常の方法で利用し,利用後に所定の料金を支払う旨の意思を表すものではあるが,それ以上に申込者が当然に暴力団関係者でないことまで表しているとは認められない。そうすると,本件における被告人及びDによる本件各ゴルフ場の各施設利用申込み行為は,詐欺罪にいう人を欺く行為には当たらないというべきである。」





【暴力団関係者を同伴しない旨誓約した事案】
・最高裁平成26年3月28日第二所小廷決定
(事件番号:最高裁判所平成25年(あ)第725号・詐欺被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84098&hanreiKbn=02


【平成25年(あ)第725号・主文】
「本件上告を棄却する。」


【平成25年(あ)第725号・判示事項】
入会の際に暴力団関係者の同伴,紹介をしない旨誓約していた本件ゴルフ倶楽部の会員であるAが同伴者の施設利用を申し込むこと自体,その同伴者が暴力団関係者でないことを保証する旨の意思を表している上,利用客が暴力団関係者かどうかは,本件ゴルフ倶楽部の従業員において施設利用の許否の判断の基礎となる重要な事項であるから,同伴者が暴力団関係者であるのにこれを申告せずに施設利用を申し込む行為は,その同伴者が暴力団関係者でないことを従業員に誤信させようとするものであり,詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず,これによって施設利用契約を成立させ,Aと意を通じた被告人において施設利用をした行為が刑法246条2項の詐欺罪を構成することは明らかである。 被告人に詐欺罪の共謀共同正犯が成立するとした原判断は,結論において正当である」



【雑感】
・同日に言い渡された2つの事件で,最高裁の結論が大きく異なった事例。司法試験受験生はよく勉強しておくべき事案でしょう。
・元検事の小貫芳信判事が無罪とした平成25年(あ)第3号の事件で反対意見を書いているので,これもじっくり検討すべきでしょう。


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by lawinfo | 2014-03-28 23:11 | 刑事事件

【裁判員裁判】最高裁平成26年3月10日決定

【裁判員裁判の審理のあり方】
・最高裁平成26年3月10日決定
(事件番号:最高裁判所平成24年(あ)第744号・覚せい剤取締法違反,関税法違反被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84038&hanreiKbn=02


【雑感】
・この件で読む価値のある判示事項はありません。
・横田尤孝判事の補足意見を読んでください。これはひどいです。
・裁判員を直接批判できないので,1審段階の法曹三者を批判しています。
・全体を読んでみると,最高裁が裁判員裁判の導入を自ら主導したにもかかわらず,もう裁判員裁判の不合理な裁判なんてやめた方がいいんじゃないかという最近の最高裁の意思を強く感じます。
・また,補足意見は最高裁判事がその判断に至った理由を自分なりに解説する場ですが,横田尤孝判事の補足意見はもはやただの意見表明・愚痴にすぎず,補足意見とはいえないでしょう。
・私は横田尤孝判事が次に国民審査を受けることがあるとすれば,次は明確に「×」にします。


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by lawinfo | 2014-03-13 23:52 | 刑事事件

【傷害罪無罪判決】横浜地裁平成25年10月31日第6刑事部判決

【傷害罪正当防衛無罪判決】
・横浜地裁平成25年10月31日第6刑事部判決・田村眞裁判長
(事件番号:横浜地方裁判所平成24年(わ)第1049号・傷害被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83819&hanreiKbn=04


【公訴事実】
「被告人は,平成24年4月8日午前7時30分頃,横浜市a区b町先路上において,A(当時30歳)に対し,その顔面をげんこつで多数回殴るなどし,よって,同人に全治約1か月間を要する右前頭骨骨折,右眼窩骨折の傷害を負わせたものである。」


【争点】
・検察官は,本件暴行の直前に,Aが被告人に殴り掛かろうとしたことはなく,仮にそうであったとしても,被告人がその前にCを殴ったことや,Aが全く反撃していないのに殴り続けるなどしたことに照らせば,本件は単なる喧嘩にすぎないから,急迫不正の侵害がないか,正当防衛が成立し得る状況にはなかったと主張。
・弁護人は,本件暴行の直前,Aが被告人に殴り掛かろうとしていたのであるから,急迫不正の侵害があり,また,被告人がCを殴ったのは,Cから殴られそうになったためであって,その後,Bに首を絞められて倒れ,立ち上がった際にAが殴ろうとしてきたことなどに照らせば,本件暴行は自招侵害や喧嘩闘争によるものではないと主張。


【主文】
・被告人は無罪。


【判示事項】
「(2)正当防衛状況の有無について
 被告人は,客同士のトラブルを避けるため,Aらを退店させようとしたところ,店内でCから暴行を受け,さらに路上でもCから殴られそうになったため,Cの顔面を殴り,その後にBに押し倒されて起き上がったところ,Aから暴行を受けそうになったため,本件暴行に及んだものである。
 確かに被告人は,本件暴行の前に,Cを殴打し,Bとももみ合うなどしており,さらに,その前にCの脅し文句に言い返すなどしている。しかし,本件は,酔ったAらの店内での言動が他の客とのトラブルを招きそうになったことが発端となっており,被告人は店長として,これを避けるためAらを退店させようとしたのであるから,被告人の行動に非があったといえないことは明らかである。被告人がCとの喧嘩に応じるような言葉を発したのも,Cらに退店してもらうためであったと解する余地がある。
 したがって,本件暴行は,自招侵害によるものとも,単なる喧嘩闘争中のものともいえず,正当防衛が成立し得る状況にはなかったとは認められない。
(3)防衛行為の相当性について
 Aは,本件暴行により顔面,頭部に全治約1か月間を要する骨折の傷害を負っている。しかし,本件暴行は,素手による数発の顔面への殴打であって,連続した短時間内のものであることに鑑みると,Aが特に抵抗していなかったことや傷害結果がいささか重いことを考慮しても,防衛行為の相当性を逸脱した過剰なものとまではいえない。」


【雑感】
・無罪判決にしてはずいぶんあっさりした判決ですね。
・これは無罪があまりにも明白であったにもかかわらず,検察が無茶な起訴をしたということでしょうか。


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by lawinfo | 2013-12-19 23:38 | 刑事事件

【再審請求者との面会】最高裁平成25年12月10日判決

【再審請求者との秘密面会】
・最高裁平成25年12月10日第三小法廷判決
(事件番号:最高裁判所平成24年(受)第1311号・損害賠償請求事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83798&hanreiKbn=02


【判示事項】
「死刑確定者又は再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に,これを許さない刑事施設の長の措置は,秘密面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ,又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなど特段の事情がない限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の秘密面会をする利益を侵害するだけではなく,再審請求弁護人の固有の秘密面会をする利益も侵害するものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となると解するのが相当である。」


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by lawinfo | 2013-12-10 23:51 | 刑事事件

【無罪判決】千葉地裁平成25年10月8日判決

【 睡眠時無呼吸症候群と自動車事故】
・千葉地裁平成25年10月8日刑事第3部判決・出口博章裁判長
(事件番号:千葉地方裁判所平成23年(わ)第1722号・ 自動車運転過失傷害被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83728&hanreiKbn=04


【争点】
・被害者受傷状況一覧表記載のとおり,Gほか5名に対し,同表記載の各傷害をそれぞれ負わせたことは,当事者間に争いはない。
・被告人は,本件事故当時,睡眠時無呼吸症候群に罹患していたところ,本件事故直前,上記疾患により予兆なく急激に睡眠状態に陥った。その結果,前方注視ができないまま,車を発進させて交差点内に進入させ,本件事故を起こした。被告人には本件事故当時,予備的公訴事実の注意義務の現実的な履行可能性がなかったから,過失はなく,被告人は無罪であると弁護人は主張した。


【主文】
・被告人は無罪。


【判示事項】
「一般に過失犯において被告人に当該結果発生の回避措置をとるべき注意義務(結果回避義務)が認められるためには,当該注意義務が現実的に被告人において履行可能なものであること(注意義務の現実性)が必要である。
 本件においては,被告人が本件事故当時,睡眠時無呼吸症候群を原因として予兆なく急激に睡眠状態に陥り,対面信号機の信号表示に留意する義務を履行することができない状態に陥っていたとの合理的疑いを払拭することができない。したがって,被告人に前記義務違反の過失を認めることはできない。
 以上によれば,被告人に予備的公訴事実にある対面信号機の信号表示に留意する義務を課すことには合理的疑いの余地が残るといわざるを得ない。したがって,被告人には本件自動車運転過失傷害罪の成立を認めることができない。」


【雑感】
・被害者6名という重大事故を起こしたことと,事故原因が病気という難しい事件。いろいろ考えさせられます。


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by lawinfo | 2013-11-13 23:35 | 刑事事件

【傷害致死無罪判決】札幌地裁平成25年10月11日判決

【裁判員裁判傷害致死無罪判決】
・札幌地裁平成25年10月11日刑事第3部判決・加藤学裁判長
(事件番号:札幌地方裁判所平成24年(わ)第966号・傷害致死被告事件)
URL:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83688&hanreiKbn=04


【訴因変更後の公訴事実】
「被告人は,平成24 年9 月5 日午後8 時10 分頃,北海道北広島市a 町b 丁目c 番地d被告人方居間において,うつ伏せに倒れていたA(当時31 歳)の背部に馬乗りになり,その後頸部を手で押さえる暴行を加えて,同人の胸腹部及び顔面を床面に圧迫させ,よって,その頃,同所において,同人を窒息により死亡させた。」


【検察官森中尚志・鎌田航求刑】
・懲役4年


【主文】
・被告人は無罪


【判示事項】
「被告人がAの背部に馬乗りになり,その後頸部を押さえつける前のA及び被告人の行為は,1で認定したとおりである。その一連の事情,特に,(ア)本件当時,Aは被告人よりも身長と体重が劣っていたが,Aの被告人に対する攻撃が相当の時間継続的に繰り返されたこと,(イ)被告人が体勢を崩してうつ伏せ状態になったAに馬乗りになった時点で,ある程度,被告人が優勢になっていたと認められるが,Aは,それ以降も,被告人を蹴ったり,起き上がろうとして相当程度抵抗していたこと,(ウ)本件の数か月前にもAがパイプ椅子で被告人を攻撃したことからすれば,Aが現実に抵抗を続けていた時点はいうまでもなく,Aが抵抗をやめた時点でも,直ちにAが被告人に対する攻撃を再開する可能性がなくなったとはいえないから,Aの抵抗が止んでからある程度の時間は,Aの被告人に対する急迫不正の侵害は継続していたと認められる。
 そして,前記のとおり,被告人が,Aが抵抗しなくなった後,相当の時間Aを押さえつけていたとは認められないから,急迫不正の侵害が止んでからも,被告人がAの後頸部を押さえ続けたという事実は認められない。
 次に,本件当日,Aは,被告人に対して,2回殴りかかり,肩をつかみ,背負い投げをするといった攻撃をしたのに対し,被告人がした反撃行為は,Aの肩をつかみ,1回殴り,たまたま,背負い投げに失敗して倒れたAの上になったことからAの背部に馬乗りになり,Aが起き上がるのを防ぐために,Aの手を払って後頸部を押さえたというものであり,反撃行為を全体的に見るとAの攻撃に対する防衛行為として相当性を欠くようなものは認められない。Aの背部に馬乗りになり後頸部を押さえつけた行為は,客観的にみると,Aの鼻と口を塞いでAを窒息させる行為であり,危険性が高い行為であるが,それは,Aが起き上がるのを防ぐために防御的になされたものであり,Aの行動から離れて積極的に攻撃をしたというものでもない。また,顔面を下に向けて後頸部を押さえつけたからといって,鼻と口の双方が塞がり呼吸ができなくなるとは限らない上,被告人がことさらにそのようになることを意図していたとの証拠もないから,不注意であったことは否めないにしても,本件当時,偶々Aの鼻と口の双方が塞がったことが,当時の被告人の防衛行為の相当性を失わせるものではない
 被告人に防衛の意思が認められることは明白である。
 したがって,本件当時,被告人がAに対して加えた暴行は,Aの攻撃から被告人の身体を守るためやむを得ずにした行為であると認められるから,被告人には正当防衛が成立する。」


【雑感】
・またまた,元刑裁教官が無罪判決。
・それにしてもこの事件は,①傷害致死事案,②訴因変更した事案,③被告人は統合失調症,④公訴棄却の可否,⑤正当防衛の成否という法律のプロが担当しても極めて大変な事案を裁判員が担当したというのはかなり大変だったと思います。


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by lawinfo | 2013-10-25 23:02 | 刑事事件